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「本物の感情とラケット感情」~奥深い感情との出会い~を受講して2020/10/3・4 鈴木佳子先生

2020年10月3日、4日の二日間zoomによる鈴木佳子先生の特別セミナー「本物の感情とラケット感情」が開催されました。今年に入ってからのCOVID-19の感染拡大が収束しないため、やむなくリモート講座となりました。以前2回ほど鈴木佳子先生の特別セミナー「人格適応論」を受講させて頂いて、先生のお人柄と分かりやすい講座スタイルに魅了されておりました。

今回のセミナーは「交流分析における『ラケット感情(Racket feeling)』と『本物の感情(Authentic Feeling)』」についてです。先生からの事前のメッセージの中で、誕生から成長とともに多彩かつ深みを増して感じる奥深い感情について交流分析の理論を学び、ワークを通して実感しましょうとありました。私も最近、その時その時に感じた感情が自分の人生脚本の成り立ちに大きな影響を与えていると考えていたときでしたので、自分自身を見つめ直す良いきっかけと思い受講しました。この二日間の講義の中でEXERCISEを通して私自身が気づいたことを報告させていただきます。

 先生からは、このセミナーの目的として以下のことがレジメの冒頭に挙げられていました。

交流分析における「ラケット感情(Racket feeling)」について、理論的に理解し、自分を含めた人の理解を深める。ワークの体験をとおして、各自の可能な範囲で、自分の「ラケット感情」「本物の感情」に気づく。仕事や個人的な人間関係に、そして、自分の人生に、この知識や体験を生かせるようになる。

EXERCISE1-今の感情― 自分の内側に入って自分の感情を味わってください。中秋の名月も若い頃と今では違う感じ方という先生の言葉に誘発され私が思い浮かべたのは、子供の頃に窓を全開にして月の光を浴びながら眠りについた時の何とも言えない心地よさと安らぎの感覚でした。一人で感情を味わった後はブレイクアウトクルームで自己紹介・セミナーに来た目的・期待するところ・今どんな感じがしていたかをシェアしました。先生の講義では、成長とともに変化する感情ということで、おギャーと誕生した時の感情は快・不快の2極、そこから分化、発達して育ち、深まってゆく、そして変化していく。先生の私案ですとケーキになぞらえて説明された感情については分かりやすい表現だなと思いました。マドレーヌ:どこを切っても断面は均一。感情もこのように均一で恋愛の時のように「好き」という感情以外の何物でもない。大事なものを失った時の「悲しい」という感情以外の何物でもない。マーブルケーキ:バニラ、チョコが入り乱れているように違う感情が混在している。例えば長く辛い闘病生活をした人が亡くなった時に悲しいという感情と、その辛さを知っているだけに終止符を打てたというほっとした感情。バームクーヘン:木の幹のように何層にもなっている。これがラケット感情と本物の感情。本物の感情(Authentic feeling)怒り・悲しみ・おびえ・喜び・子供が感じる身体的感覚(空腹、眠いetc.ラケット感情にまみれる前の乳児の感覚、うまく言葉にならないけれどその時の感情)を内側の円で表しそれを取り巻く外円がラケット感情。ラケット感情は、その人が子ども時代を生き延びるために抑圧した感情の代わりに感じる感情で交流分析独特のもので臨床に使える。さらに先生の試案として「奥深い感情」を説明されました。その図は、4重の卵型の楕円で表されていて中心が「究極の感情」、侘び寂びの奥、空とか無、プラスマイナス、快不快を超越した感じ、感情が全部集まって光の三原則のように無色透明。次が「高次の感情」で快・不快に分けられないマイナスの感じを含みつつプラスの感情、奥深い高みの感情で侘び寂び、しみじみ、無常など。そしてそれを取り巻く「本物の感情」、最後の外円が「ラケット感情」でその人が生き延びるために工夫して作った感情。このように感情はバームクーヘンのように何層にもなっている。この奥深い感情の「究極の感情」には受講者の方からもいろいろな意見が出されていました。

EXERCISE2―家族の中の自分― 子供の頃の家族メンバーを白紙に色、形、大きさで表わす。書かれた形を切り抜き、別の白紙に置いてみる。位置関係がしっくり来たら糊で貼り付ける。私が表した自分は、茶色のとげとげした金平糖のような形。大好きな父はピンクの大きなハート、子供心にリスペクトしてはいたがぎすぎすした関係の母は紫のあちこち歪んだ小さめのハート、それに二人の兄、愛犬を配置すると何故だかすっきり。腑に落ちる、収まりがつくとはこういう感じかなと思いました。

EXERCISE3―あるストレス場面での感情― ストレス場面の事例を聞き、ブレイクアウトルームでどんな感情を抱いたかなどを話し、その後グループシェアを行う。

EXERCISE4―最近のストレス場面での感情― ちょっとしたストレス場面で感じたことについてグループ討議。自分の場合たびたび感じるラケット感情は何かに気づく。自分にとって痛いところ(思い出したくないところ)に蓋をして、問題解決を先延ばしにするラケット感情に気づくことは、それまで閉じていた蓋を開けて問題解決をすること。つまり、脚本から抜け出し自律性を確立するということにつながる。こうすることで一歩踏み出すことができるのであって、踏み出さなければならないということではない。

EXERCISE5―子供時代のエピソードの中での感情― 子供の頃のちょっとした嫌な体験を利き手と反対の手で色を使って絵を描く(絵ではなく色で塗りつぶすだけでも何でも良い)。それを眺めて別の白紙に利き手と反対の手で思ったこと、感じたことを書く。利き手と反対の手で書く意味は、不自由で自分の思うようにはならない子供の頃を思い出すのにはよいのではないかということでした。最後に、その時にどのようにして欲しかったか理想の親を利き手で書く。この理想の親は今の自分に使えるのではないかということです。グループシェアは、どのような体験だったか、どんな対応をして欲しかったかで話し合いました。

EXERCISE6―私のラケット感情と本物の感情―先生のレジメの中にある6項目を各自で考えてみる。1.ストレス場面で感じやすい感情は? 2.その感情は問題解決に役立つか? 3.問題解決に役立つ感情は? 4.他の人だったら、どう感じるか? 5.家族に好まれた、奨励された感情か? 6.家族に好まれなかった、禁止された感情は? この6項目を考えて行くと同じラケット感情でも強弱の感じ方がずいぶんと変化してきていることに気が付きました。齢を重ねて来たこともありますが、やはり私は交流分析を学んで来たからこそと思える節が多々あります。

EXERCISE7―これから私は― この2日間かけてやって来たことを今後どう活かすか。先生はこの項ではご自身のOK感について話されました。ご自身のOK感を強めることで地に足が着いた、そしてあなたはOKと心から伝えられるようになった。養育者から認められるということは子どもにとっては生死にかかわるほどの大事なこと。子どもにとってのストロークは空気と同じようなもの。学生相談では、あなたはOKだ!をひたすら伝え続けて来たということです。レジメのカウンセリングにおける感情は別紙資料の相談事例を用いて説明されました。ラケット感情を感じることは、その人を人生脚本に留まらせ、人生脚本を維持することにつながる。禁止された感情は親が育った環境で禁止されていて脈々と受け継がれている。交流分析では脚本に縛られずに手放すことが最終目標の自律性の獲得とされているが、きれいに脚本を手放すことは難しい。生きている私たちは完璧な人間はいないのでよりよい脚本をバージョンアップするのが現実かなということでした。
 今回のセミナーを受講し、改めて自分のラケット感情と向き合い、奥にある本物の感情を探ることができたように思います。
(交流分析士インストラクター 大野ユミ子)

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