145 不登校の生徒にとっての通知表や卒業証書

学期末になると不登校の生徒の家に通知表を届けに行きました。届けながらいつも考えていました。他の生徒と同じ通知表を渡すことにどんな意味があるのだろうと。きちんと評価されていないのに通知表だけが渡されるからです。

現在は絶対評価ですが、当時は相対評価が行われていました。すなわち評価は他者との比較によって行われ、各評定段階の割合も決まっていました。評定は5段階でつけられていましたが、だれかが上がればだれかが下がることになります。

不登校の生徒の評定はたいてい1がつけられました。評価の資料が何もないからです。本人が自分でどれだけ勉強していても、能力がどれだけあっても、学校にそれを評価する材料がないというだけで最低の評価を与えられてしまいます。何とも不合理です。

さらに、評価していないのに評価結果が通知表で示されます。1が並んだ通知表を本人や保護者はどんな気持ちで受け取るでしょうか。当事者の思いが欠如した行為だと思います。通知表は渡さなくてもよいのではないか、他の方法を考えてもよいのではないかと校長に意見を言ったこともありますが、取り合ってもらえませんでした。
やむを得ず私は通知表を届けながら保護者や本人(会うことができればですが)と話をし、通知表に対する考えも伝えました。

卒業証書にも疑問を感じます。卒業証書には「〇〇学校の課程を修了したことを証する」と書かれています。課程を修了するというのは何を意味するのでしょうか。一定の学業を修めて学びを終えるということでしょうが、多くの不登校生徒にとっては「在籍していた」という意味でしかありません。「卒業証書」ではなく「在籍証書」です。

昨今は不登校生徒への対応が改善されつつあるようですが、通知表や卒業証書はどのようになっているのでしょう。形だけのものでないことを願います。

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