見出し画像

【音楽遍歴】2002年に行ったライブ②


はじめに

2002年は結婚したこともあって、3年ぶりにフル参加したFuji Rock Festivalを含めて7本と少なめでした。おまけに、単独公演の内、2本はFuji Rock Festivalでも見る羽目になるという「先に言ってよ~」な状況でした。それでも、初めて単独ライブを見ることになったSpiritualizedThe Flaming Lipsは心斎橋クラブクアトロという小さいハコを全く気にしない本気のパフォーマンスを見せてくれ、中々の衝撃を受けました。

今回はそんな中から、1999年以来3年ぶりに3日間フル参加したFuji Rock Festivalに関する出来事について書いていきたいと思います。

ライブ情報

  1. Spiritualized(2002年1月11日@心斎橋クラブクアトロ)

  2. The Chemical Brothers(2002年2月26日@Zepp Osaka)

  3. Fuji Rock Festival '02(2002年7月26日-28日@苗場スキー場)

  4. The Flaming Lips(2002年8月16日@心斎橋クラブクアトロ)

  5. Oasis(2002年10月3日@大阪城ホール)

  6. Underworld(2002年10月27日@Zepp Osaka)

  7. Primal Scream(2002年11月13日@Zepp Osaka)

出来事もろもろ

0日目(移動&前夜祭)

昨年までは、神戸から名神~東名~中央道~長野道~上信越道~関越道のルートを通っていましたが、今回は名神~北陸道~関越道ルートにしてみたら運転が楽。途中で「事故のため通行止め」の電光表示に遭遇しましたが、下道で迂回しようと現場の直前のICに向かっていたら、出口の30秒ほど前に通行可になり、結局高速を降りることなく行くことができました。

15時頃に苗場プリンスホテルにチェックイン。100人居たら100人が「この室料でこの部屋かよ」と言いたくなる部屋でしたが、会場まで近いのは何物にも代えがたいのも確かで、念仏のように自分に言い聞かせます。18時頃に前夜祭に向かって、まずは腹ごしらえ。このとき、岩盤だったかMILKだったかの屋台でビールを買おうとして外人さんの後ろに並んでみると、何とその人がJoe Strummer!彼はビールを買った後も気さくに来場者と話をしていて、僕も写真を撮ってもらったのですが、デジカメのデータを失ってしまうという人生でトップ10レベルの失態。何年か後に別のレジェンドにも遭遇したのですが、その話はまたの機会に。

レッドマーキーではDJ MamezukaThe Chemical BrothersRed Hot Chili Peppersの曲を回していて気分を盛り上げていたら、しばらくしてスペシャルゲストのモンゴル800が登場。出し惜しみしない若さが潔くて気持ち良く、遠足の前日的ワクワク感が湧き上がってきました。ホテルに戻ると泥のように熟睡。

1日目

初日の午前中はゆっくりして、東京スカパラダイスオーケストラからスタート。結構な人数が集まったグリーンステージにはスーツでキメたメンバーが登場。一音一音のブラスの音のエッジが立っていて、快晴の夏空にピッタリ。ある時は軽やかに空間を飛び回り、ある時はドッシリと地面に根ざした変幻自在のアンサンブルは最高。途中からは早くもレジャーシートで寝転んでビールを飲みながら音楽を聴く至福の時間。当然、チバユウスケ奥田民夫も出て来なかったけれど、スピード感に溢れた最高のオープニングでした。

その後、Kula ShakerChrispian MillsのバンドThe Jeevasをチラ見して、忌野清志郎泉谷しげるを観るためにフィールドオブヘブンに移動。忌野清志郎の人気なのか、泉谷しげるという恐い物見たさなのか、人がビッシリ。定刻を少し過ぎた頃、「おらぁ~、暑いんだよぉ、ごらぁ~」とキャラ通りに泉谷しげるが登場。予想外に真っ当なボーカルで、忌野清志郎をはじめとしたバックがシッカリと支えていることもあって、ちゃんとロックしていました。「あの」泉谷しげるが子供みたいな嬉しそうな顔をしてるのも印象に残っています。「あの曲演らないのかなあ」という想いが溢れそうなタイミングでやってくれた「雨上がりの夜空に」は大合唱。老い(?)も若き(?)も笑顔に溢れたハッピーな時空間でした。

夕方からは初日の個人的ヘッドライナーMuse。相変わらず、一つ一つの音の許容量を超越したエモーションを叩き込んで放たれる演奏に心が鷲づかみにされるような感覚。突然チャネリングしたかのように表情が一変したり、Matthew Bellamyのギターとボーカルワークが2年前のSummer Sonicと比べるとよりダイナミックになっていて、大きく成長したことが見て取れました。スリーピースで叩き出せる限界のグルーヴ感や高揚感はセカンドアルバムで見せたジャンプアップをしっかり感じさせてくれました。ギュインギュインとギターを鳴らしたロックの後に"Can't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)"のカバーを挟んだり、変化球も巧みに交えながら、期待を裏切らないパフォーマンスを披露。野外やフェスならではのプラスαがもう少しあればという気もしましたが、それは多くを求め過ぎかな。

ヘッドライナーはProdigy。1998年のフジロックのヘッドライナーの時は食わず嫌いで見ずに帰りましたが、この日は2曲ほど聴いて、4文字言葉連続のMCと絶叫系ボーカルに頭痛がしてきたので、疲れた脚を引きずってホテルに戻り、テレビを観ながら、2002年のフジロックフェスティバルの初日は終わりました。

2日目

2日目は少し早めにホテルを出て、渋さ知らズオーケストラからスタート。インターネットで知った通りステージ上には人だらけ。「50人近いってのは大袈裟じゃなかったんだなあと」驚き。そして、演奏が進むにつれて、人数以外の音楽的な面での驚きの連続。もちろん人数が多いこともあるけれど、音の分厚さと迫力が半端なく、重ね合わされたブラスの音に身体は突き動かされ、リズムを取り、飛び跳ね、声を張り上げてました。色々な楽器が束になって作り上げたグルーヴィな音に合わせて、ステージ上のダンサーはパフォーマンスを続け、グリーンステージの芝生の上を龍の張りぼてが飛び回る、そんな泥臭いステージはサウンド面とエンターテイメント面の両方が高レベルで結実し、最高の形で表現されていました。今回のフジロックのベストアクト。

午後はThe Musicを見ようかと思ったけど、音楽メディアがこぞって推していた影響か、レッドマーキーは入場規制がかかって見られず。ただ、高音ボーカルが生理的に合わないこともあり、「見られれば見ようかな」程度の思いだったのでダメージは小。ホワイトステージ手前の川で涼を取った後、グリーンステージに戻って忌野清志郎矢野顕子のパフォーマンスを寝そべりながら見ていました。ユルユルと進むライブに、身体の中もクールダウンできました。

そして、ある意味で今回のフジロックで一番楽しみにしていた井上陽水。彼の音楽を好きで聴いていた訳ではないけど、「アジアの純真」「コーヒールンバ」「飾りじゃないのよ涙は」「リバーサイドホテル」といった有名な曲を挟みながら、オーディエンスの温度を引き上げて行くのに唸らされました。中盤に演奏された「少年時代」は自然に囲まれた苗場の環境と夕暮れが迫り来る時間帯に嵌まりまくりで、甘酸っぱい気持ちが最高潮まで引き上げられました。圧巻はラストの「最後のニュース」。語りかけるような字余り調のメロディと歌詞、山際に溶け込んでいくうような澄んだ伸びのある美しい声。呆然と立ちつくして聴いている内に、胸が熱くなってくるのが分かりました。動と静を自然体で対比させたパフォーマンスは至極。普段は全体見ないだろうパフォーマンスを見れるフェスならではの出逢いの好例。

基本的には80年代命なので、Pet Shop Boysのときには今回初めて前方のモッシュピットへ突入。開演時刻の10分までなのに前方はガラガラで、「フジロックにPet Shop Boysはキツかったか」という考えが過りましたが、徐々に人が増えてきて、結局モッシュピットはほぼ満員に。ライブは新作からのシングル"Home and Dry"でキックオフ。イントロが始まった瞬間に、ライブ開始前の不安を完全に払拭するような盛り上がりになって驚き。この日のセットリストは過去のシングルを網羅していて、即効性の強いダンサンブルな楽曲という彼らの武器を最大限に活かした内容。"New York City Boy"や "Always on My Mind"といったアップテンポの曲で大人数のオーディエンスを巻き込んで行く様はポップミュージックの底力を見せつけてくれました。「あの(皮肉屋)」のNeil Tennantが本当に楽しそうにしていたのも何だか嬉しくて、ポップミュージックの破壊力がフジロックでも充分に通用することを示してくれた幸せな時間でした。

元々、2日目のトリはBjorkが予定されていたのですが、キャンセルになってしまい、困ったときのThe Chemical Brothersに変更。基本的には1月に来日したときと同じ展開で、「普段より大きな音で派手な演出で回しております」って感じ。「さすがに手を抜きすぎじゃないの?」と思いながら"The Private Pshychedelic Reel"を聴きながらオアシスエリアに移動し、レッドマーキーのThe Chinematic OrchestraをBGMにして軽く夜食を食べてホテルに退散。

3日目

最終日はゆらゆら帝国四人囃子をチラ見しながら、フィールドオブヘブンの元ちとせから本格スタート。彼女のことは「歌がうまい」程度の知識しかなく、興味半分、冷やかし半分というのが本音。ところが、彼女が1曲目を歌い出した瞬間に鳥肌。ちょっとでも彼女の声を邪魔する音を出すのは犯罪かもと思えるような歌声。透き通っていて繊細なのに、力強くて存在感の強烈な歌声。そして、その歌声だけを際立たせるために存在する必要最小限の演奏。呆然と立ちつくす人が多数で、華奢で小さい彼女の作り出す世界の中に、あの場にいた全ての人が引き込まれていったような感じがありました。「すごく気持ちの良いステージなんで、もう少し歌っても良いですか?」という控えめな問いかけにも当然「OK」。衣装や髪型などメディア戦略的な香りが強かったので、「芸能人」として見ていた部分がありましたが、とんでもない認識違いでした。

それからウロウロして、夕方からはレッドマーキーでDoves。メンバーが登場するや否や、とんでもない熱狂状態になり、それを見たメンバーは「日本でこんなに人気があるのか」というような満面の笑み。CDでは繊細さとダイナミズムが共存する楽曲が中心でしたが、ライブでは1曲目が始まったと同時にオーディエンスは踊りまくり&ジャンプしまくりで、それに併せるようにメンバーも繊細さよりも力強さを強調したパフォーマンスを展開。歌と演奏に関しては可もなく不可もなくでしたが、楽曲のクオリティがそれをカバーしていて、シングアロングさせる楽曲を持つバンドのライブでの強さを実感。ドラムスがボーカルを掻き消していたのが残念ですが、ラストのSub Sub時代の楽曲"Space Face"に懐の深さ(原点?)が見えたし、バンドとオーディエンスが一つになって突っ走った時間はあっという間に過ぎていきました。デビューアルバムから追いかけてたことを誇りに思います。

次はホワイトステージへ移動してCornelius。ステージ前方には白い幕が張られていて、後ろ側は何も見えず。「Gorillazみたいにアニメで演奏でもするのかな」などボケたことを考えていると、突然幕に小山田圭吾のシルエットが浮かび上がりり、シルエットの掌から次々に文字が飛び出して行き、メッセージが幕に浮かび上がるという演出。これはカッコ良くて、興奮しました。サウンドは予想外にバンドオリエンティッドで、サンプリングが中心ながらも、ギターをかき鳴らして、人肌を感じさせるものでした。ステージ上のスクリーンに映し出される抽象度の高い映像も曲にマッチしていて、これまた抽象的な言葉と音と一体化して映像的な世界を作り出していました。一つ一つの記号的パーツの魅力と、それぞれが全体を支えている曲の魅力をアピールできている、システマティックで自由度の高いステージでした。今年のフジロックの日本人アーティスト最終兵器としての完璧なライブ。

この年のフジロック最後のライブはホワイトステージでSpiritualized。「裏がRed Hot Chilli Peppersとはいえ、ちょっと客が少なすぎるよなあ」と思っていると、グリーンステージの方から地鳴りのような歓声があがりました。ちょっぴり羨ましい気もしましたが、その思いを隠してひたすらライブが始まるのを待ちました。ほぼ定刻に鬼のようにスモークが焚かれ、メンバーが登場。前回の来日時にはクアトロというのにボーカル、ギター×3、ベース、ドラムス、パーカッション、キーボード、ブラス×6の合計14人という驚きのラインアップだっただけに、今回はコーラス隊やオーケストラでも連れてくるのかと期待していたんですが、逆にブラス隊が抜けてしまっていました。うーん、残念。ただ、そんなことはお構いなしに、1曲目からSpiritualized流サイケワールドが展開。幾重にも重ね合わされたギターのフレーズによって、カオティックで美しい世界が表現され、それに次第にシンクロしていく感情。音楽を聴くって感覚じゃなくて、彼らの世界を体験するって感覚。Red Hot Chilli Peppersを見終わってホワイトステージへやってきたらしい兄ちゃんが「なんじゃ、こりゃ。すげぇ…」って絶句した後、目をつぶりながら最後まで身体でリズムを取っていたのが嬉しかったです。単独公演時よりも時間が少なかったのは残念でしたが、ホワイトステージの3日目トリという退廃的で刹那的な状況ともマッチしていて、鼻垂れたサイケデリアの総量は膨大。それまでは斜めを向いてギターを弾いていたJason Pierceが最後の最後にオーディエンスに向かって拍手していた光景が印象的でした。

この日は駐車場で寝る予定だったのですが、真横がRookie-A-Go-GOだったので寝るのが難しいと判断し、下山を決めました。ところが、これが間違いの元で、帰りの歩行者と駐車場から出る車が狭い道路に殺到して、1時間以上ほとんど動けず。1時間半が経とうとしたときにようやく車が動き始め、26時前頃に何とか山の中腹まで降りることができ、休憩スペースで朝まで眠りにつきました。

おわりに

今回は2002年に行ったライブの内、フジロックフェスティバル'02についての出来事を書きました。この年は、泉谷しげる井上陽水、元ちとせ、Corneliusなど日本人アーティストの活躍が(個人的に)印象に残った年でしたそして、この年の12月に心臓発作で急逝したレジェンドでもあるJoe Strummerとビールを片手に写真を撮ってもらったのも忘れ難い想い出です。

次回は2002年後半に見に行った単独ライブについて書いてみたいと思います。OasisUnderworldPrimal Screamなどのお馴染みのアーティストに加えて、初めて単独公演で見たThe Flaming Lipsについて書く予定です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?