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何かを手放す事で得られるもの。

 ある学生さんが先日歌い過ぎで(しかも結構全力で歌うタイプであった)喉を壊してしまい、その後は喉の調子と相談しながら騙し騙し歌うと言うスタイルに移行していた。その子が今日「まだ調子が戻らないので、自分の限界のキーよりだいぶ低い曲を少し抜いた感じで歌います」と言って歌ったテイクが本当に素晴らしかった。ちゃんと声にならない20パーセントの余力を常に残して歌っているので、そのぶんリズムだとか、音程だとか、色々な事に注意を向けられているように思った。そして何よりも余裕で歌っているのがメチャメチャ格好良い印象であった。

 「今まで聴いた君の歌の中で一番良いよ」と僕はコメントしたのだが、本人ももう今では楽曲を聴いた時に耳から聴こえて来るものからして以前とは変わって来ているそうで、もう本人自体が「喉の調子が悪くなって逆に良かった」とさえ言っていた。

 僕はその子の倍ぐらいの年月を生きてきてはいるのだが、僕自身も何か「あっちゃ〜」と言う失敗をしたお陰で人生が進むと言う事はもう今だに頻繁に経験している。損して得取れじゃ無いのだが、何かを手放す事で見えて来るものもあるんじゃ無いかな〜、なんてその学生さんのお陰で思う事が出来た。いや〜、**君、その調子だよ。とても良い方向に向かっていると思うので、僕も先生冥利に着きます。あっ、僕の本「DVDで完全解説! 自宅でできる小声ボイス・トレーニング」を書いた頃には「サビはもう楽曲やアレンジでちゃんと盛り上がるように作ってあるので、歌い手さん自身がそんなにサビだけを盛り上げようとしなくて良い」と言うコンセプトはあまり重要視していなかったので、そこに関しての言及は無い。なのだが、大声を出すんじゃ無くて小声とか、下手すると声すら出さない体操とかでも歌が良くなる方法は沢山あるよ、と言うのを沢山紹介しているので、気になったかたは是非チェックしてみてくれると嬉しい。

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