ひるひる8

【導入自治体の声】福島県 南相馬市 比留間様

福島県の沿岸部北部に位置し、約5万4千人の人口を抱える南相馬市。
東日本大震災では、地震、津波、原発の被害を受けながらも、現在では復興も進み、新たな人の流れを生み出す取り組みに注力している市です。
3年前に新設された市の被災者支援定住推進課(現・経済部観光交流課)で、移住やまちづくり施策を担当されている比留間さんにお話を伺いました。

導入前の課題感
ー移住をゴールにする施策への違和感ー

 部署新設の初年度に、移住施策の一環として南相馬に移住を考えている方向けに移住体験ツアーを企画しました。せっかくきていただくので、いろんな体験をしてほしいなと思って、職員で企画していたのですが、結果誰に何を見せたいのかわからない企画になってしまって。
 そもそも、移住するには、「仕事」「住まい」「コミュニティ」の3つが大事だと思うのですが、2、3日というツアーの短い期間では、その全てを見せるのは到底不可能なんですよね。

 一方で対象者は、「南相馬に移住を検討している人」と絞ってしまっているので、集客にも苦戦しました。参加者に対しては、「移住するか、しないか」という0か100の選択を迫っているにも関わらず、肝心のツアーでは100も見せることはできない。
 それもあって、南相馬市の施策に限らず、一般的な移住施策というものが、「移住するか、しないか」や「移住した後にどう生きるか」といった移住を最終目的とした施策が多いことに違和感を感じていました。そもそも移住以外にもっと違う関わり方があるんじゃないの?って。
 特に南相馬市の場合、震災があったとこともあり、移住していなくてもボランティア等で南相馬に関わって活動されている方って全国の中でも多いと思うんですね。
 せっかくそういう町なのだから、そういった人たちの輪をもっと広げて、活用していく方向もあるのではないかと考えていました。

Ridilover事業を導入して
ー市民・行政・Ridiloverという立場が異なる三者だからこそ地域の可能性を広げられたー

 事業の導入をしたものの、 「市民と一緒にツアーを作っていく」というたびづくりスクールは、行政としては最初はかなり不安がありました。そもそも企画したいと言ってくれる市民が集まらなかったらどうしようって。実際募集を開始してみると、思った以上にツアーを作ってみたい!という市民の方が来てくれて、「たびづくり」はポテンシャルのあるものだったんだなと思いました。

(地域住民むけ「たびづくりスクール」)

 スクール開始後の企画づくりについても、スクール生から、毎回ツアーに関する質問や相談が来るたびに、「本当にこの進め方でいいのか」「人が呼べるツアーになるだろうか」と悩んでいました。ただ、結果杞憂だったなと。Ridilover側が市民や行政に真摯に向き合ってくれてフォローもしてくれましたし、何よりツアーを企画する市民たちが、「地域のために何かしたい」というマインドで色々と案を考えてくれたので、途中からは楽しんで前に進めていくことができたと思います。地域への理想や目線は同じだけれど役割が異なる、市民、行政、Ridiloverの三者が協力すると、こんなにも可能性が広がるんだな、と。ツアー作りという一つの事業で、地域に様々な影響を出せたことが、個人的にはとても楽しく、地域にとってもよい効果だったのではないかと思います。

(スクール参加者と談笑する比留間さん)

 また、個人的な感想として、今まで接したことのない地域の人たちと関われたのは行政職員として新鮮なことでした。行政側にいると、市民との関わりも仕事上の関係に限定されてしまいがちですが、今回市民の人たちがツアーを作っていく過程でたくさんの地域の人を紹介してくれました。それは、私が役所で携わっている他事業にもいい影響が出たのではないかなと思います。

ー地域外から南相馬市に関わる人が増えたー

 私も市の職員として、「田舎の夜をチャラくする!手作りDJイベント!」ツアー当日に参加しましたが、ツアーの企画者側と参加者側で与える側と与えられる側という関係性がある通常の観光ツアーとは異なり、スピーカー作りやDJパーティなど、お互いが共同作業をしたり場を作っていく機会が多くありました。

(ツアーでのスピーカー作り)

 そのような工夫のおかげか、ツアーの満足度も高かったですし、ツアーが終わった後も、南相馬っていいよね、と言って、再訪したり、南相馬で新しい仕事を始めたりと、引き続き南相馬市に関わりをもってくれる方が多く生まれました。逆に東京のDJイベントにツアー企画者であり、南相馬市民の井上さんが参加したこともありました。
 このような相互の地域を行き来する関係性は一時的なものではなく、ずっと続いていくものでしょう。これは、当初の課題感でもあった「移住以外のゴール」の1つです。あえて移住を意識しないツアーであったことで、参加者の関わりしろが増えたのだと思います。スクールの時点でも地域が一体となった感覚がありましたが、実際にツアーで外の人を呼んで交流したことで、さらにその仲間の輪が広がったと感じました。こういう取り組みをずっと続けていると、地域も変わっていくだろうな、と思います。


ー事業の効果は地域内にもー

 地域内にも大きな変化がありました。まずスクールを受講した企画者は皆、ツアーを企画し準備していく中で「思った以上に南相馬って可能性あるな」と感じているようでした。それは企画者以外の人たちにとっても同様で、企画者のツアー準備を見守ったり、当日のツアーの懇親会で外からきた参加者と話す中で「自分も地域のために何かできるかも」ということに気がついて、違う地域の活動に挑戦しはじめた人もいました。


ーRidiloverが本気だったから、役所側も本気になれたー

 正直、事業開始当初はRidiloverへの期待はそこまで高くありませんでした。「地域のため」といいつつ、お金だけもらってそれ以上の効果はないんだろうな、と。地方に入ってくるコンサルってそういうところが多いので。
 でも、事業が進むにつれて、「この人たち本気なんだ」ということに気がつきました。行政に対しても、企画者である市民に対しても真摯に向き合って議論してくれる。こういう関係性は今後もツアーに限らず活きていく分野はあると思います。Ridiloverの可能性は今後も広がると思いますが、それにはまず自治体側が地域に対して本気で関わっていく必要がある。自分たちの地域なのだから、業者に完全に任せるものでもないし、任せちゃいけない。この事業でその点に気付かされたので、今後もその心意気を持って、地域での事業に取り組んでいきたいと思います。

ー編集後記ー

 Ridilover事業の導入がきっかけで、南相馬市では「移住以外のゴール」を目指した外からの人の流れをつくることができ、地域内の住民が地域の可能性を改めて自覚するきっかけにもなりました。
「住民の挑戦が地域を彩り、その彩りが地域に新たな挑戦を描く」
そんな地域をリディラバと一緒に作っていきませんか。

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