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キャリア形成における、最短距離と回り道

4月になり、新元号も発表され、新社会人の人たちがそれぞれの場所で、ビジネスマンとしてのファーストステップを歩みだしていると思う。僕のSNSのタイムラインでも、ベンチャー各社の経営陣から、自社を選び抜いて入ってきた新メンバーへの、感謝と期待のメッセージで彩られている。

そんなわけで、僕たちスタメンもそうであるように、各社の新社会人の方たちは、今まさに新人研修真っ只中だろう。そして、その研修期間を越えた先に待っているのが、「配属」という一大イベントだ。

僕自身、新卒で入社した広告会社の「配属」でものすごく大きな人生の転機があった。ある意味で、「就活」と同じくらい「初期配属」というものがもたらす影響というものは大きいと思う。(もちろん、企業によるが)

配属の現実

研修期間の長さにもよるが、学生を卒業し、実際にビジネスマンとして働き始める中で、研修などを通して「なんとなくこの部署に行きたいな」とか、「こういう仕事がやりたいな」「こういう業務が自分には向いてそう」といった配属希望が生まれてくる人が多いんじゃないだろうか。

もちろん、就活を経て内定受諾をする際に、すでに希望の配属先を固めて、入念に自身のキャリア設計を計画している人もいるだろう。

ただ、大体の会社において、みんながみんな「希望の配属先」にいけることはありえない。各部署の予算などに応じて、人員計画があるのが組織の常なので、こればっかりは仕方ない。

そんなわけで、初期配属で希望の業務に携わることができる人もいれば、本当に思いもよらない配属先に赴任することになり、自身のキャリアが想定外の方向に転がっていく人も出てくることになる。

幸いにも、初期配属から希望の部署にこぎ着けた人は、ぜひその場所を希望していた別の誰かの分まで、全身全霊で仕事にあたって、大きな成果を上げていってもらえたらと思う。希望が叶ったことを、仕事への覚悟につなげられると良いスタートダッシュが切れるはずだ。

一方で、希望ではない配属となった人には、元々ある程度は予想していた配属のように、ある種、想定されうる「別プラン」的な赴任となる人もいれば、先ほど書いたような、「青天の霹靂」的な赴任となる人など、一口には括れないそれぞれの納得度合いがある。

僕自身のケース

僕の場合は、広告会社に入社して「クリエイティブ局」という制作セクションを希望していたにもかかわらず、実際の赴任先は「名古屋支社」の「営業局」という具合だった。

広告業界というのは、都心部に業務が集中しているので、いかに全国赴任の総合職とはいえ、地方勤務になることは極めて稀だったため、事前に心のどこかで営業セクションにいく可能性は想定していたが、まさか営業は営業でも、縁もゆかりもない「名古屋」という支社に配属になるとは、まさしく「思いも寄らない」展開だった。びっくりしすぎて、一瞬アタマが真っ白くなったのを、なんとなしに今でも覚えている。

正直にいって、発表から2〜3日くらいは「なんでこんなことに・・・」という不安な気持ちでいたけれど、それから12年が経った今、いろんな出会いやご縁があって、元々は縁もゆかりもなかった名古屋という場所で、こうしてまた働くことになり、名古屋発のITスタートアップ企業を経営する身となっている。

新人当時の自分には、どう考えても回り道にしか見えなかったものが、「あの配属があったから、今があるんだ」と時間をかけて様変わりするようになった。

スキル面を切り取ってみても、初回配属で希望の制作セクションにいくことはできなかったけれど、今では、デザインもプログラミングもマーケティングも、すべて自分で手を動かして制作物をアウトプットできるようになっている。

加えて、事業作り、ビジネスディベロップメントも含めて、ベンチャーの仕事はめちゃめちゃクリエイティブなので、結果的に、時間はかかったかもしれないが、やりたかった仕事ができている。

人生は1度きりなので、「たら・れば」に意味はないが、もし初期配属で制作セクションに赴任して、最短距離でクリエイティブを仕事にしていたら、デザインもプログラミングも、実際に手を動かせるようにはなっていなかったと思うし、ましてや、ベトナムで会社立ち上げをしたり、ベンチャー企業をゼロから創業したり、ということもなかったと思う。

回り道をしたからこそ、こうして今、スタメンの仲間たちと出会えて、やりがいのある仕事に携われている。

大事なのは、その後、その続き

まぁ、こんな人の昔話をされても、実際に「人生の岐路」に向かいつつある本人たちにとっては、不安を拭う足しにはならないかもしれないけど、要は、「希望の配属」となろうがならなかろうが、大事なのは、そこからの頑張りってことだ。

その配属自体を、自分の人生にとっての「正解」にできるかどうかは、そこからの自分の頑張り次第で決まってくる。学校のテストと違って、仕事や人生は、回答時点ですぐに「正解・不正解」が決まるものではないから、「配属」のような分岐点は、赴任時点はどちらにも転がりうる、と知っておくといい。それだけでも、ずいぶん心が軽くなる気もしないかな?

すべての旅程が事前に固まっているツアーパッケージ旅行は、効率的に動けて、移動距離も短く、安心、快適で、それはそれでもちろん楽しいと思うけど、せっかく旅行に来たんだからと、時には回り道をして、思いも寄らなかった場所に行ってみることで、たまたまとてつもない絶景に出くわしたり、人生を変えるような運命の人との出会いがあるなんてこともある。

そんな風に、人生にも、「思い通りことが進む心地良さ」も「思いも寄らないことが起きる楽しさ」も両方ある。

なので、あまり先のことを考えすぎてナーバスになるよりも、むしろ、その瞬間瞬間を、苦しみながら楽しんで、「配属」というイベント自体を満喫してもらえると良いんじゃないかな。

配属発表にドキドキしながら過ごせるのも、ある意味、新人ならではの特権な気がするよ。今となっては。

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