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バネが飛び出たソファにさよならした日

 ソファが壊れた。「これ大丈夫?」ミシミシ鳴くソファに先を案じた妹がそう言い放った1か月後、壊れた。いつものように座ってご飯食べていたらガシャンとバネが飛び出してお尻が沈んだ。コントみたいに。ソファってこんな壊れ方するの?確かにいつも2人掛けソファの左側ばかりに座ってたけどさ。でも安いものではなかったし4年も使ってないよ。でも壊れた。

 2人掛けソファに1人掛けソファを並べてた。そう3人招けるように。一人暮らしワンルームにはちょっと不釣り合い。友達招いて家飲みするタイプでもないことは、この家に移り住む前に気付いていたけど、無意識に3人分用意した自分がいた。妹と「母」を一緒に招けるように、と。

 初めての一人暮らしの家は20平米弱。家賃はちっとも安くないけど、都会の一人暮らしなんてそんなもん。そこから少し広い今の家に引っ越して、どうやら成長ぶりを見せたかったらしい。あなたの娘は、あなたの理想通りに自立しています。何でもできちゃう立派な娘じゃない?

 結局1回来たきりで、それから招こうとも向こうから来ようともしない。もう必要ないよ、この部屋をもっと広く使えばいいよ。壊れたソファはそんなことを言っていたのかもしれない。でもそこが定位置になってしまい、処分する日まで沈んだ座面に座り続けた。自ずと姿勢が悪くなり腰も痛かったんだけど、なぜか右側には座らなかった。

 粗大ごみの申込から約1か月、ようやく回収日がやってきた。東京の連続熱帯夜が途絶えた日の朝、一人で搬出。重かったけど、心は軽かった。さようなら、ありがとう。

 何でも一人でこなしてしまうのは自立しているようで真の自立ではないのかもしれない。そんなことを感じ始めた今日この頃。人に甘えたり、補いあうことは情けないことでもみっともないことでもないような気がしてきた矢先の出来事。

 誰かの期待に無理して応えなくていいや。それが例え母だったとしても。私は私を生きよう。空間だけだけでなく、心にもスペースができた日。

憧れの街への引っ越し資金とさせていただきます^^