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初夏の捕獲大作戦

 天気の良い5月の日曜日で気温も夏のように高かった。家の1階じゅうの窓を網戸にして換気をしていた。暑さをそうめんをすすりやり過ごしていたときのことだ。猫がいないことに気づいた。もう老猫で、外に出してヨソの猫と争わないよう注意していたのだが。そして和室のほうに続く引き戸が30cmほど開いているのにも気づいた。やはりか。和室の窓から、セルフ開閉して脱出した形跡。

 つっかけを急いで履いて、家の周りのめぼしいところを探した。いない。いない。納屋もいない。あきらめかけて玄関に向けて歩いたとき、母が車の下に彼女を見つけた。

「いたァ!」

久しぶりの自由な世界に出たのは良いが、老猫に5月の日差しはきつかったようだ。雑草に腹をあててクールダウンして、香箱になっているところだった。

 母が交渉道具を持って来た。チャオチュール・まぐろ。私が車の横で腹這いになり、猫の口元に口を切ったチャオをちらつかせた。鼻をすんすんさせて身を乗り出し、タイヤの方に近づいて来てくれた。

「いける..いける」と思ったのも束の間、

警戒して元の位置に戻った。悔しい。

 しばらくしてまだ3分の2ほどは残っていたチャオをふんだんに出して、2度目を試みた。今度は私と猫の一対一で挑んだ。それとなく渋ってはいたがチャオの美味しさには何かあるようでじりじりと再び、タイヤの方へおびき寄せた。彼女の身体の半分ほどが、車の車体の下からでてきた。タイミングがうまくつかめなかった。が「今しかない」と直感が働いて、両腕を広げて猫に飛びかかった。びっくりして地面に横に倒れた猫。また容赦なく腹から背中から押さえつけ抱き上げられた。

 努めてやさしくいつも通りの抱き方をして、家の中へ離した。緊張が解けたから、その後しばらく笑いが止まらなかった。

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