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ニューアルバム"PLACES"

最近スピリチュアリムに敏感になってきた。ただし、現実主義のスピリチュアリズム。全てに因果応報があり、一番のヒーラー(癒し)は自分自身を大切にすること。食べ物は身体をつくり、運動が筋肉をつくり、睡眠がエネルギーを蓄え、発する言葉は精神と習慣をつくり、周りの環境や人々に影響を与える。自然な波紋の効果であり、同様にライフスタイルは音楽スタイルと深く繋がっている。当たり前でも忘れがちなことで、曲作りを始めて以来、最近初めてこれらのことを強く意識している。

この3年で、エレクトロなど様々な音源にチャレンジしてきた。イギリスの流行を意識して、才能あるプロデューサーたちとコラボし、2枚のEPとシングルをリリースし、貴重な体験になった。でも自分のライフスタイルはエレクトロではないと気付いたのだ。美しい田舎町に住み、澄み切った空気を吸う。空気、これも食事や睡眠と同じぐらい大事なもの。東京で生まれ育ち、ロンドンの大学に通ってきたので、雨の後や春の訪れの時期に、微妙に空気の匂いが変わることも、生まれて初めて知ったのだ。週末クラブに行ったり化学的な物を摂取することもしない。このアルバムは、そんなオーガニックな今の生活そのものを象徴した作品になった。 外国人の視点で、何気ないイギリスの日常生活を切り取る。開放感と閉塞感、繋がりと孤独、平凡さと奇抜さ...鏡に映し出された2つの世界のように、イギリスの文化や暮らしを描く。ビジネスのことはいっさい考えず、完全に音楽性優先で作った。本来そうあるべきなのに、長年忘れていたものを取り戻したのだ。

曲ごとのセルフライナーノーツ

Ripples - 『愛の波紋より広く』この曲は、因果応報、言動は、予想以上に大きく周りに広がっていくことを表現している。その波紋の中心は、何よりも、大きな愛であるべき。

Iceland - シンガポールに住んでいる時に作った曲。シンプルな曲をアレンジしすぎるのは簡単なもので、実は何度もアレンジし直した。最終的にピッタリなアレンジになり、また多言語のセリフが入っている。大学院で翻訳を学んでいた時、クラスメイトに『私の声』をそれぞれの国の言葉で言ってもらい、それを録音した。10ヶ国語が含まれており、私はグーグル翻訳の力を借りて、アイスランド語に挑戦した。

On Track - 『どのジャンルにも当てはめられない』。イギリスに来てから何度このセリフを言われたことか。その反撃として、『自分のトラック(線路・曲)を敷いていく』という歌詞を書いた。トラックはダブルミーニングになっていて、郊外からロンドンに電車通学していた時に作った歌でもある。

Soldiers - 反撃といえば、この歌もファイト・ソング。でも派手に戦うのではなく、冷静な兵士がしなやかに力強く立ち向かっていくイメージの歌。プロコフィエフの『ロミオとジュリエット』をモチーフにしたパートもある。

Seasons - 鳥の鳴き声は、朝4時に起きて録音した。4時が鳴き声ピークの時間帯なのだ。雨や枝、葉の音も録音し、それぞれスネアやハイハット代わりにプログラミングした。悲しみと喜び、静けさとダイナミックさ、季節の巡りを表現している。

Mirror - 外国人の視点から見た、対照的な要素がこの曲に込められている。『タンポポの綿毛が緑の背景に漂う』など、これも自然をモチーフにしている。サビのダイナミックさはとても気に入っていて、アルバム全体のハイライトでもある。ロンドン在住のAkioさんに作っていただいたミュージックビデオは、大切な人がこの世界から旅立ってしまった経験を持つ、全ての人が共感しうる映像作品。この世界で目に見えるもの全てに、大切な人の魂が反映されていて、鏡のようにうつしだしている。この映像の素晴らしさは、悲しいテーマでありながらも、前向きに生きる力強さが描写されているところ。

Again - M25という、東京でいう環八みたいなイギリスの高速道路を、通勤中渋滞に苛立ちながら運転している、という歌。旦那さんの実体験を元に、リアルなイギリス生活を反映させた。皮肉で少しダークなイギリス精神が凝縮されている歌。

The City - 都会と田舎とのコントラストを描いた歌。都会の刺激と、自然の静寂さ。アルバム全体を通して、この2つのバランスを保つことに意識が注がれている。

Pulse - この曲のきっかけは食器洗い機。フライパンやお皿が良い位置にあると、中の水が特定のリズムを作り、響き渡る。新しいジャンル、食器洗い機トランス。

Places - 長年の夢は、リアルワールド・スタジオで録音することだった。この曲のおかげでその夢が叶い、タイトル通り色んな場所に連れて行ってくれた。アジアやヨーロッパ、そしてリアルワールド。ここではピーター・ガブリエルがツアーで使っていたというベーゼンドルファーを弾くことができた。その前まで何度も別のスタジオで録り直したが、なかなか良いテイクがなく、こんなに何度も録音したのは初めて。長くかかったが、決して無駄ではない道のりだった。

ニューアルバム PLACES (プレイセス)はこちらから配信されています→


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