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音楽活動とは、ドミノ倒し

(English follows)
イギリスでは先日からサマータイムの時期になった。
日照時間が長くなる季節に時計の針が一時間早送りされることで、遅い時間でもより明るくなる。三寒四温ながらも、町中では春の予兆が見られて来た。
ここ最近はすっかり田舎暮らしに馴染んで来ている。去年の今頃は早くロンドンに引っ越したくてうずうずしていたが、今ではロンドンに出ることはあっても、電車でこの町に戻ってくると、澄んだ空気が身に染みるようになった。
何よりも、四季の変化が五感を通して味わえるのが田舎暮らしの最大の魅力だ。
雨上がりの若葉や刈ったばかりの草の香り、深まっていく鮮やかな緑色、そして春を知らせる鳥の可憐な合唱。暗く長い冬が明けていくように、周りの環境にもやっと光が見えて来た。

イギリスでの音楽活動の模索は、一歩進んで二歩下がるという具合で進んで来た。日本の常識に慣れてしまうと、連絡の滞り、スケジュールのドタキャン、そのくせに請求だけは一人前、などというイギリス人の自己中心的な特徴を掴むだけでもかなりの時間と経験が必要だった。それでもサポートしてくれる方に恵まれ、そのおかげで具体的なリリースもできた。『歯が痛くなった』という理由で音楽ライターとの取材を何ヶ月も先延ばしにされたり、しまいにはリリースの予定が伸びに伸びまくって一年も経ってしまったりと、かなり忍耐力を試されてきた。

これはどんな『音楽活動』でも言えることだが、リスナーとしてはアーティストが表に出ていない期間、「〇〇何やってんだろー最近見ないねー」程度の見解だと思う。しかし、実際はこの表に出ていない準備期間が一番大事なのだ。リリースには制作やレコーディング、ツアーにはリハーサルと企画の期間があってこそ成り立つように、この期間の地味で綿密な作業こそが活動の醍醐味なのだ。
そのわかりやすい例えが、「ドミノ倒し」。
ドミノの駒を並べる作業って、すっごく地味。慎重に、一つ一つ並べていく。音楽活動に例えると、この一つ一つの駒は、曲作りだったり、プリプロダクション、レコーディングまでの過程、アーティスト写真やミュージックビデオの企画、撮影、協力してくれる媒体とのコネクション作り(これには何ヶ月も交渉が必要)などだ。大事なのは、途中で倒してしまわないことだ。今の時代では曲ができれば3日後には世界中でデジタルリリースができる。でもそれをすぐやってしまうのは、ドミノの駒を2、3個並べたところで倒してしまうようなことだ。できることなら、なるべくたくさんの駒を並べきりたい。なるべく長く多くの連鎖反応が起こるように。準備が整ったら、あとははじめの駒を倒すだけだ。「リリース」や「ツアー」などの表向きの活動は、このはじめの駒の一押しのようなものなのだ。
準備期間が長かったことにはこのような理由がある。その中では、「ただ相手の連絡を待つ」という拷問のように怠惰な期間もあったが、いつでもまわりに振り回されずに自分ができることはある。その状況を逆手に取ることだ。だからここ最近で作っている曲の多くは、そんなフラストレーションをテーマにしている。歌詞の皮肉度にさらに磨きがかかる。

Lining up a long row of domino pieces requires patience and time. But once all the pieces are aligned, all you need to do is to press that first piece and the domino effect begins. An artist’s activity, in my opinion, resembles such act. All that’s on the surface of a so-called artist’s activity, such as releasing records and touring, are only that one poke at the first domino piece. Most of the work and effort is in lining up those pieces, which is not glamorous at all. Every record release is built upon songwriting, pre-production and then recording, mixing, mastering, amongst many other additional work, such as artist visuals and music video production. It’s not a straightforward process either. You might accidentally knock down some domino pieces before its finished, and you have to lay them out all over again.
One thing I can say is that none of this process is wasted, because the longer the line is, the stronger the domino effect becomes. And it’s that chain of reaction that we want to create, not just a one-off thing.
I moved to the UK to pursue my music career, and nothing happened (on the surface) for a year. So I wrote songs about it. It’s full of irony and sarcasm, a raw depiction of what I have observed as a Japanese singer songwriter in the UK. And I have to say, that has been the biggest inspiration for my most recent album, which has been the first big push of the dominos I’d been laying out for three years.


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