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『バービー』股間のない人形と、『哀れなるものたち』大人の体に赤ん坊の脳をくっつけられた女の子、ベラの冒険旅行。

『バービー』股間のない人形と、『哀れなるものたち』大人の体に赤ん坊の脳をくっつけられた女の子、ベラの冒険旅行。

https://wwws.warnerbros.co.jp/barbie/

https://www.youtube.com/watch?v=HLHUXpx05uE

 
 
 映画『哀れなるものたち』を観たのは、今週のことである。
観終わって、すぐに思い出したのは、昨年の夏に見た『バービー』だった。二つの映画は、とても良く似ているなと思ったが、もしかして似て非なるものかもしれないので、考えてみた

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『すみれ荘ファミリア』凪良ゆう     61歳風邪と腰痛で寝込んだ日に読んだ。「愛」の小説。

『すみれ荘ファミリア』凪良ゆう     61歳風邪と腰痛で寝込んだ日に読んだ。「愛」の小説。

『すみれ荘ファミリア』凪良ゆう 
職場の同僚に貸してもらって読みました。自分は全然無知だったが、娘たちは良く知っていた。BL小説出身で有名なんですね。

『すみれ荘…』はBLでない一般小説ですが、BL要素満載。
というか、BLは、少女向けのメディア、文化の流れの中から生まれた、いわば究極の少女マンガ&少女小説であり、すなわち、その表現の主題はどこまでも「愛」である。

 あたしは以前、「愛という名

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「主体」とか「私」とか、近代文学的な忘れ去られた主題なのか? 『##NAME##』 児玉雨子を読んで思い浮かんだメモ。

「主体」とか「私」とか、近代文学的な忘れ去られた主題なのか? 『##NAME##』 児玉雨子を読んで思い浮かんだメモ。

『##NAME##』 児玉雨子/河出書房新社
北海道新聞「2023年の三冊」書評で斎藤美奈子さんの紹介で即買い。丁度『n番部屋を燃やし尽くせ』も読んだ後で、性的搾取、虐待児童、少女への視点。しかし、こちらは「被害者」ではなく「主体」として描かれている。斎藤さんも言ってたが、小説としてはもう一歩でも、今書かれ、出版され読まれることに意味がある。

 昨年の芥川賞で『ハンチバック』と競ったようですが、

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戦争と平和ー「お花畑」なんかじゃないー『赤ヘル1975』重松清、『四國五郎』四國光を読む。原子爆弾投下、78年目の夏に。 

戦争と平和ー「お花畑」なんかじゃないー『赤ヘル1975』重松清、『四國五郎』四國光を読む。原子爆弾投下、78年目の夏に。 

 わたしの父親は、典型的な戦後民主主義の申し子、アメリカ占領期に高校時代を過ごし、新しい憲法教育を受け、60年代には全体の進学率で1割ほどだった大学を卒業。インテリといって差し支えはないが、あんまりお金には縁のない地方公務員であった。

母も同学年で、短大を卒業し教員免許を取得、結婚まで教員を勤めていた。50年代の「*勤務評定闘争」に参加していて、すごい熱気だったと話している。二人は北海道に暮らし

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『女の子のいる場所は』やまじえびね(コミックビーム) 何度でも何度でも何度でも、忘れそうになっても、忘れないーわたしの自由を自由をと。

『女の子のいる場所は』やまじえびね(コミックビーム) 何度でも何度でも何度でも、忘れそうになっても、忘れないーわたしの自由を自由をと。

特に意識していたわけでもないけれど、中東の女の子や女性が主人公の映画を見てきた。

『ベッカムに恋して』は、2003年公開のイギリス映画で、インド系の少女がサッカー選手を夢見て、アメリカに渡るまでの物語だ。その後、大スターとなるキーラ・ナイトレイは準主役。監督もインド系の女性。
20年前、彼女たちの世界は、未来に向かって開かれて、輝いていた。

『女はみんな生きている』は2001年公開。タイトルに

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熱狂の『THE FIRST SLAM DUNK』(原作・脚本・監督井上雄彦)を観た。26年間の空白を経て、そこに現れたのは、たった今のスラムダンクだったー

熱狂の『THE FIRST SLAM DUNK』(原作・脚本・監督井上雄彦)を観た。26年間の空白を経て、そこに現れたのは、たった今のスラムダンクだったー

『スラムダンク』は、週刊少年ジャンプで1990年に始まり1996年に終わる高校バスケット部を描いたマンガだ。当時は「バスケット物は売れない」とされていたが、空前の大ヒットとなる。

連載開始時、作者井上雄彦は、未だ無名の新人マンガ家であった。1988年、ジャンプの新人登竜門、手塚賞に入選。1989年に刊行された初の単行本は原作つきで別ペンネーム「成合雄彦」となっている。
絵柄も当時人気のあった江口

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『土を喰らう十二ヶ月』(中江裕司監督作品)ー日々を暮らす作家ツトムの映画は、すなわちジュリーの映画だった。

『土を喰らう十二ヶ月』(中江裕司監督作品)ー日々を暮らす作家ツトムの映画は、すなわちジュリーの映画だった。

どこから話を始めるべきか、迷う。
まず中江裕司監督の映画が、わたしは大好きだ。
『ナビイの恋』1999年
『ホテル・ハイビスカス』2002年
『白百合クラブ東京へ行く』2003年
『盆唄』2019年

実写とアニメを組み合わせたり、ドキュメンタリ手法とドラマとアニメを組み合わせたり、独特の表現と、沖縄と福島とハワイ、子どもと老人、細々とした生活の描写、そこに生きている人々の呼吸、想念を掬い取り、そ

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8月は、砂浜に描いた絵のように消えていった…夏の思ひで、映画編ー『メイド・イン・バングラデシュ』『メタモルフォーゼの縁側』『ぼくの歌が聴こえたら』『スープとイデオロギー』『おばけずかん』『戦争と女の顔』『Plan75』『犬王』

8月は、砂浜に描いた絵のように消えていった…夏の思ひで、映画編ー『メイド・イン・バングラデシュ』『メタモルフォーゼの縁側』『ぼくの歌が聴こえたら』『スープとイデオロギー』『おばけずかん』『戦争と女の顔』『Plan75』『犬王』

前の投稿から1ヶ月…。いやーもうコロナとか色々あってさーあたいは何もないけど、シフトの代打代打で、朝から働いて家に帰ってご飯食べてTwitterみたらもう寝てしまう。しかし夜中に起きてしまう。
その繰り返しで時が滝のようにダーっと流れていってしまった。その間、映画を見たり、本を読んだり、もちろん野球も見ていましたが、疲れてしまって文を考えて書くことができませんでした…

駆け足ですが、観た映画の話

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萩尾マンガがアメリカのコミック殿堂入り。どんな賞なのかもわからないけれど。胸がいっぱいになった日。

萩尾マンガがアメリカのコミック殿堂入り。どんな賞なのかもわからないけれど。胸がいっぱいになった日。

 なんか凄い。我がことのようにというより、10歳から14歳だった自分におめでとうと言ってあげたい気持ち。変な言い方ですが「人生が報われた」感じがするの。わかる人にはきっとわかる

 わたしは、10歳の時に教室で「ポーの一族って面白いんだよ!大好きなんだ」と話したら、周りの友達から「気持ち悪い」「全然面白くない」とやいやいと言われてしまい。それっきり萩尾マンガについて話せなくなってしまった。それまで

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ーどうして戦争で、人は人を殺し殺されるのかー『同志少女よ敵を撃て』『戦争は女の顔をしていない』なぜか同じ日に、二つの本を読み終わった、わたしの答えは出ない。

ーどうして戦争で、人は人を殺し殺されるのかー『同志少女よ敵を撃て』『戦争は女の顔をしていない』なぜか同じ日に、二つの本を読み終わった、わたしの答えは出ない。

『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシェービチ作 三浦みどり訳 岩波現代文庫)を手に取ったのは、2020年一昨年のこと。
特に理由は覚えていない。多分ネットのツイッターやなんかで推薦されているのを見たかしたんだろう。本屋で見かけて購入したまま、積読の時が過ぎていた。

 ロシア、プーチン大統領による隣国ウクライナ侵攻が始まったのは、2022年2月24日。すでに3ヶ月前。現代社会でも

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やっぱり自由の喜び〜何年ぶりかの東北は、青空で迎えてくれた。春爛漫の旅日記 その2 秋田編〜横手増田まんが美術館は、遠かった〜けど、素晴らしい場所だった

やっぱり自由の喜び〜何年ぶりかの東北は、青空で迎えてくれた。春爛漫の旅日記 その2 秋田編〜横手増田まんが美術館は、遠かった〜けど、素晴らしい場所だった

仙台駅から新幹線で秋田県大曲まで150分。普段はもっと早く1時間半くらいで着くらしい「こまち」だったが、先だっての東北地震で安全運転のため盛岡からは、在来線の急行くらいの感じで、ゆったりのんびりの車窓になった。(そのためか切符は各種割引がありました)

この日も快晴で、遠くの山並みまでくっきりと全てが見える。盛岡で一旦切り替え、秋田県に入ると深い山の中を鈍行並みにゆっくり走る。森の中を探索してるみ

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北海道に居ながらにして、世界中の映画を体験するー平和の恵みを、当たり前と思うかたまたま偶然と思うかー

北海道に居ながらにして、世界中の映画を体験するー平和の恵みを、当たり前と思うかたまたま偶然と思うかー

わたしは、札幌に住んでいる。新型コロナ感染症が広がる前は、年に数回は、各地へ旅行していた。主にファイターズのビジター観戦のためだが、函館、仙台、東京、大阪、神戸、名古屋、福岡、広島… 見知らぬ土地、食べたことのない美味しい食べ物、体感する全てが新鮮で楽しかった。

同時に、知らない所にいるのは、不安と緊張が伴う。ドキドキして疲れる。だけど、その刺激が、大抵の場合、単調で退屈なーつまりは平和な人生に

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もしかすれば、もう会えない、あなたのためにー『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介監督作品『春原さんのうた』杉田協士監督作品

もしかすれば、もう会えない、あなたのためにー『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介監督作品『春原さんのうた』杉田協士監督作品

 夜中に目が覚めた。
どこかで誰かと話している場面で。スマホで誰かに連絡してたら、突然ラジオ番組がかかり、相手の言葉が聞こえないが「○○ちゃんが飛び降りて死んだ」と挟まれてくる。

聞いているわたしは、びっくりと驚いて、そして泣き叫び始めた。
「◯◯ちゃんが、死んだって言ってる!」
「◯◯ちゃんが、飛び降りたって言ってる!」

会話していた人たちは、見知らぬ人たちで。「〇〇ちゃん」は、現実の親しい

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