ファイターズって何だ? その2    ー女たちはファイターズを愛するープロ野球のイメージ革命ー


昨夜、高田さんのことを思い出していたら、今朝はDeNA GM辞任のニュースが入ってきた。お疲れ様でした。

高田さんは、85~88年日本ハムの監督に就任、時を経て北海道日本ハムファイターズのGMになった。

2006年、ファイターズが日本一になり、俄然注目しはじめたわたしは、高田さんがいるのかあと喜んだけれど、果たしてGMとは、いかなるものなのか全然わからなかった。今でもよくわかりませんが、GM−ゼネラルマネージャーとは、現場のチーム編成全般に渡って強い権限を持つ役職で、経営を担うオーナーや球団社長とは一線を画す立場のようだった。

想像だけれど、北海道というプロ野球未開の地で地元のスポンサーを開拓していくには、全国区の有名な<顔>が必要だったのだろう。北海道の人は、高田さんが日ハムの監督だったことは知らなくても、巨人のV9ナインだったことは知っている。

所詮わたしらは北の田舎者である。テレビで見ていたあの有名な高田繁が!と注目もするだろうし、特に会社の社長さん、重役さんなどをされている層には、ヒットしたはずだ。バリバリの「巨人大鵬たまご焼き」世代だもんなあ…(なんのことだかわからない若い人は、ググってください。ぐぐーーっと)

でも、そんなことは、わたしが人並み以上に北海道日本ハムファイターズの情報を仕入れてきた結果の今だから想像できることであって、当時はただ「高田さん、今でもお素敵ですね❤️」としか思ってなかった。

でもまたしかし、それこそがプロ野球不毛の大地、北海道に「ファイターズ」が受け入れられるに、より根本的に重大だったと思う。

大向こうに看板として押し出される高田繁のなんか知らないけど都会的でスマートな感じ。

さらに追い討ちをかける。

「これからはパ・リーグです!」

と真っ白い歯を輝かせ、茶髪をなびかせて、決して大阪でもなく甲子園でもなく、海の向こうの国、🇺🇸アメリカからやってきたスーパースター。

新庄剛志。

そして、言うまでもない。監督は、トレイ・ヒルマン。

本物の🇺🇸 アメリカ人監督。テキサスからやってきたジェントルマン。

これらは皆、はっきりと異文化の導入だった。

でっかいどーほっかいどー。牛の数が人口より多いとか。空港に降りたらクマがいる、とか。(わたしが子どもの頃は、そういう図が描かれているマンガが実際にありました。)そんなんじゃねーよと文句を言いながら。

でも外からみたらそうなのかなって。2000年を迎えたって、北海道は日本の田舎でしかなかった。わたしたちはそう感じていたはずだ。

そんな場所に、なんか都会的な、さらには国際的ですらある、斬新なる何事かがやってきた。

「北海道日本ハムファイターズ」とは、実のところ、そのようなイメージでもって、旧来のおっさん的イメージ、茶の間でブラウン管を独占する晩酌お父さんが見るものがプロ野球だという、既成概念をぶっ壊すことに成功したのではないだろうか。図ってたのか図らずもかは、知らんけど。

だからこそ2006年。わたしが初めて意識して見つめたテレビの中の札幌ドームには、それまで見知っていたプロ野球のスタンドの様子はなかった。本当に驚いた。心底驚いた。

そこには、多くの女性ファンがいた。それも中高年の女たちが。

2007年、初めて札幌ドームにファイターズの試合を見に出かけた。地下鉄を降り、続々と詰めかけるたくさんのお客さんの流れのままに歩いていたとき、前を歩くおっちゃん(推定67歳くらい)が吐き捨てるように呟いた。

「ちっ 女ばっかりだ」

本当にそうだった。前をゆくファンは女ばっかり・・。

わたしは、少なからずおっちゃんに同情した。

そうだよね。プロ野球って、これまではおっちゃんたちのものだったんだもんね。特に日ハムなんてさ・・女のファンなんていなかったよね・・。

おばさんは、男の目なんか気にしないしな・・。しかし男は、女の目を気にするもんね・・・。自由に羽伸ばしてビール呑んだくれながら、野次飛ばして見たりとか・・やりずらいよね・・・。


北海道のファンは優しい。

ことあるごとに、ファイターズの選手の皆さん、監督も、スタッフもフロントの方々も述べてきた。そうもあろう。本当はヤジり倒したいおっちゃんも傍若無人の男たちもたくさんいたはずだ。

しかし、それらを凌駕するのが、常に観客数の50%を超え、札幌ドームを埋め尽くしてきた、紛れもない「女性ファン」の声だったのである。

戦前から連なるプロ野球。延々と「男の世界」であり続けた、それの歴史もルールー慣習ーも知らない。ひょっとすれば巨人て何?それ美味しいの?とすらいうかもしれないような。

でも目の前にやってきた「素敵な何か」を心から受け入れ、目一杯楽しもうとする。まったく新しいプロ野球ファンが、そこに誕生していた。

そして、彼女らーわたしたちを存分に楽しませてくれる。

興奮を与え、感動を与え、愛する喜びを与え、新しい物語を次々と紡ぎ出す。最高のエンタテインメント。

それが、北海道にやってきたプロ野球チーム。

北海道日本ハムファイターズだったのだ。









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