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マンガ好き同士なのに話がかみ合わない

 仲人式の結婚相談所でも、お見合い相手を選ぶ時はマッチングアプリと同様のシステムを使います。この中からお見合いを申し込む相手を選べと言われても、(受けてくれるかどうかは別として)選択肢が多すぎるとかえって、どの人を選ぶべきかわからなくなるわけです。

 そんな時は結局、年齢と居住地とかで絞った中から、写真の印象か共通の趣味があるかで選ぶ人が多いのではないでしょうか。

 その結果、いくらかは共通の趣味のある人に申し込んだ、あるいは申し込まれたのだから、お見合いで話が弾むかというと案外そうでは無いのです。

 例えば、一口に「マンガ・アニメが好き」と言っても、我が国においてマンガはあまりにも幅広く、一括りには語れないわけです。


誰もがワンピースを知っているわけではない

 マンガ大国・日本において歴代一位のヒット作だからといって、誰もが「ワンピース」が好きだと思われると少しとまどいます。

「マンガは何が好きですか?」

「やっぱり、ワンピースですね。胸が熱くなります。」

「へえ、そうなんですか…。」

 僕はウソップが離脱したあたりで読むのをやめたのであまりよく覚えていませんし、それほど思い入れもありません。

「エースが死んじゃったところとか、今思い出しても泣けちゃいます。」

「エース…。えっと…、ルフィの兄でしたよね?合ってます?って、へえ、死んだんですか?」

「………。」

 知らない有名人の訃報をニュースで聞いたような感じしかしませんでした。

アニメ化される前のスパイファミリー

「じゃあ、Inaさんのお勧めのマンガは何ですか?」

「僕の今のお気に入りはスパイファミリーですね。」

「へえ、スパイ?難しそうな…。」

「いや、面白いですよ。東西冷戦時代のドイツがモデルで、主人公は西国、資本主義側のスパイで、共産主義側の東国に潜入して…。いや待てよ。東はブラックベル家(ベッキーの一族)のような大資本家が存在するので、共産主義ではなさそうですね。じゃあ、あの作品での東西の対立軸って何なんだろ?」

「何だかよくわからないけど政治のお話なのですね?やっぱり難しそう…。」

「いや、そういうわけじゃないんですけどね…。」

友情・努力・勝利のアンチテーゼ

「でもやっぱり、ジャンプの漫画が一番好きかな。私、兄と弟がいた影響で、少女マンガよりも少年マンガの方がなじみがあって。」

「ああ、そうなんですね。じゃあ、ジャンプ全盛期に連載されていた『とっても!ラッキーマン』って知ってます?」

「え?知りませんけど、面白いんですか?」

「まあ、ある意味では。主人公は怠け者で身勝手だけど、ラッキーだけで戦いに勝ち進んでいくっていう。ジャンプの中にありながら、『友情・努力・勝利』の三原則全てをあざ笑うかのような問題作で。」

「ええっ……。何それ。」

「絵も下手だし、『ウルトラマン』のパロディである『キン肉マン』を、さらにパロディ化したような設定で。だから主人公はウルトラマンの出来損ないみたいな見た目で。」

「………。」

「ぜひ一度読んでみて下さい。」

「ええ、機会があれば、また…。」

 あ、これ、「次の機会」が二度と訪れない時の決まり文句だ。

当時はちょうどあの映画をやってた頃

 実はこの当時、例の「鬼滅の刃」の無限列車の上映が終わった頃で、あの煉獄って人の討ち死にを熱く語る女性には何人もお会いしました。

 僕はあの映画の結末を観た時、「シティハンター」での冴羽リョウの相棒、槇村の最期が重なって泣けました。

地獄はしばらく寂しいだろうが、すぐににぎやかにしてやるさ…!

冴羽リョウの台詞