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#3 やれるからってやっていいわけじゃないよね?と葛藤した時に起きた運命的な出会い

(これはいよいよ私が決断する時か...?)

というタイミングがやってきたのは、8月に関西に旅行に出ている時でした。
Rigelにこれまで関わってきた人たちが検討を重ねていたのですが、誰も経営を引き受けるのは難しい、という結論が知らされたのです。

薄々予想はしていました。
そもそも会社勤めをしながらだったり子育てまっさかりだったりという人でもマイペースに活動し、自己実現ができるようにしたい、というのがRigelの理念。それなのに経済的にも精神的にも過度な負担を強いることはできません。

(となると...)

この時点で「私はあくまで部外者ですから」という態度を貫くこともできたのですが、前回書いたように、ここまで首を突っ込んでおいて「そうですか、では閉店ですね」とはもはや言えません。私自身もRigelが閉店するのは絶対にイヤでした。

(ということは...?)

他の皆さんと違って私はひとり身、仕事もフリーランスで、幸か不幸かさほど仕事も無いのである程度時間の余裕があります。経営の経験はありませんが、小売業そのものには興味はありましたし、Rigelくらいの規模ならなんとか手に負えそうな気もします。ジュエリーの知識もありませんが、私が仕入れをするわけではないし、ブランディングやマーケティングの領域なら、多少は作家の皆さんをリードすることができるかもしれません。

(やれなくはないのか…??)

なにより、私は3年前に山梨に転勤してきたいわゆる移住者。しかも会社を辞めたあともなんとなく引っ越さずに居着いているという状況。オフィスも持たず、家族も持たず、県外の仕事も多いので、見ようによってはナニモノ?と怪しまれてもおかしくない人間です。Rigelというある種の"名刺"をもつことができたら、身分を明らかにするという点では悪くないのかもしれません。定休日や営業後にRigelを使って仕事や勉強会を開いたりも可能です。もしオフィスを借りたりすれば間違いなく月数万円は経費がかかるですから、それを考えたらたとえRigelが収入にならずともメリットはあります。

(え?やるの?やるってこと…??)

それでも、この時点ではまだ踏ん切りをつけることができなかったのは、「やらざるを得ない」「やれなくは無い」というモチベーションで引き受けてしまっていいのか、という葛藤があったから。

世の中にお店や商売を自らはじめる人はたくさんいますが、多くが「こんなことがやりたい!」という強烈でボジティブな想いに突き動かれています。私のような、ネガティブとまでは言わないまでも”成り行き”のような動機でいいのか、という思いがモヤモヤとありました。

それを払拭できたのは、とある出会いがあったからです。

上述したように、この決断を迫られた時、私は関西に旅行中で、その4日目に滋賀県の大津に来ていました。不動産の賃貸契約などの都合もあり、閉めるにしても続けるにしても結論は1〜2日以内には出さないといけないのですが、とはいえせっかくの旅行。まずは大津の街を散策しようと、ガイドブックで見つけた『神保真珠店』に向かうことにしました。真珠のお店といっても、特にRigelと結びつけていたわけではなく、琵琶湖真珠という存在を知らなかったことと、写真で見て店構えが素敵だったので、見てみたいな、という程度だったのですが。

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行ってみると、店のオーナーと思われる女性が接客をしてくださり、琵琶湖真珠について丁寧な説明をしてくださいました。いろいろ話をしているうちに、山梨から来たこと、ジュエリー業界に携わる知人がいること...などをお伝えし、どうやら共通の友人がいることなどもわかりました。

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そのうち、ふと、この方にだったら相談してみようかな、と思い、初対面の客がぶつける話題としてはヘビーすぎる話をしてしまったのです。

すると、オーナーさんは真剣に話を聞いてくれて、「全然いいと思います!」と言ってくださいました。

聞けば、この店も計画を温めてはじめたわけではなく、いろいろな事情を経てある時勢いではじめたこと。以前はジュエリーとはまったく関係ないお仕事をしていて、会社勤めからフリーランスになっていたこと。その人生の決断にご友人の死が関係していること。小売業の経験も知識もなく、試行錯誤しながらやってきたことなどなど、私の現状と似た部分がとても多かったのです。

その上で「できますよ!」と言っていただいたのは、とても勇気がでるものでした。その運命的な出来事にほんのり涙が出そうなほどに。

考えてみれば、そもそも私は自分の人生において、強いモチベーションに動かされて、長年計画を積み上げてなにかを実現するようなタイプではありません。転職も異動もほとんどが成り行き。それでも、”誰かの役に立っている”と感じることがなによりもやり甲斐になっていたし、何事もそれなりに真摯に取り組んできたと思います。なにも自分の熱量に突き動かされて実現するばかりが尊いのではなく、”成り行き”だろうと”やむを得ず”だろうと、まじめにやって結果を出すことができたら、恩恵を受ける人にとっては同じことです。

(そっかやっていいのか...)

そうと決まったからには、ということで、店を出ると同時に不動産屋に連絡をし、両親に承諾をもらい(賃貸契約の連帯保証人になってもらう必要があったのです。あっさりOKだったことに感謝!)、具体的な引き継ぎ作業にとりかかったのです。

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