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弱小サッカー部で良かったのです!(後編)

中学サッカーには、リーグ戦という、クラブチームと部活動のどちらとも参加できる試合なるものがあります。
息子の中学校サッカー部は3部リーグ。(Jリーグで言うとJ3)。
 
3年生が引退し、彼の年代が上級生となった船出は、試合開始から9人が普通、少ないときは8人でした。
相手チームは、人数を合わせてくれることなどなく、当然11人です。
 
新1年生が入ってくる(半年以上先)まで11人で試合ができることはありません。
あるとき、数的不利について、彼に聞いてみました。
彼は「もう慣れた」の一言。
ただ、顧問の先生から生徒へは、試合だけ他校と合同チームにするか話があったようです。
しかし、生徒たちはこのままやれるという「勇気と希望と自信」!?をもって断りました。
その思いの根拠は謎ですが…。
 
数的不利のチームで、センターフォワードの彼に任されたタスク(役割)は 一人でDF2人、できれば3人を相手にすることでした。
そのためには、ドリブルのテクニック、スペースで受けるスピード、ファウルを取られないかけ引き(競り合いで相手の背中を密かに押すとかw)などを身に付ける必要があります。しかし、いつも1対2か1対3で勝負するのが当然って、上手くなるには最高の環境です。
彼はよく「守備側より攻撃側の方が有利やねん」と言っていました。
飛躍的に上手くなった彼は、そのことばどおりのプレーを見せてくれました。
 
大成したのは彼だけではありません。
同級生のボランチの生徒(以下「10番君」という。)は、サッカーの枠を飛び超えて、学校内のマラソン大会で1位となる偉業を成し遂げます。
10番君のタスクは、ずっとアップ・ダウン、西へ東へ走り続けることでした。なぜなら、試合開始のホイッスルからすでに数的不利の状況。加えて、中学校サッカー部に入る生徒の半分くらいはサッカー初心者です。このため、下級生のカバーリングなどで10番君に休む暇は与えられませんでした。
なので、いたって普通の試合が、10番君にとっては相手チームの倍ほど走るハードトレーニングとなっていました。
 
また、地域のサッカーチームから唯一入部したセンターバックの生徒(「以下「5番君」という。)は、「悪魔の右足」を手にすることになります。
5番君のタスクは、守備の要であることはもちろん、攻守を一発で反転させるセンターフォワードへのロングパス。そして、負けているときは前線へ駆けあがってのミドルシュート。
守備することが圧倒的に多い弱小チームにとって、攻撃に転じる最適の方法は、ゴール前まで攻められた位置から、相手陣内のゴール近くまで一本のパスを成功させることです。これには、遠くまで飛ばすキック力と、相手が途中でカットできないボールスピードが必要となります。
5番君は毎試合、ひた向きに右足を振り続け、遂にはパンチの効いたキック「悪魔の右足」を手にしました。
 
しかし、一番伸びるのは、やっぱり中学校からサッカーを始めた生徒です。試合に出ることが一番の練習になっているのだろうと思います。
サッカーのルールを覚えることが苦手だった生徒のことも
息子(以下「彼」という。)は「あの子の最近の成長はすごいよ!」と喜んでいました。
 
ところで、中学校サッカー部には『トレセン』というものがあります。部活動に埋もれている上手な生徒でチームを作り、レベルの高い練習と試合をすることが目的らしいです。
(※注意:トレセンについて詳しくは分かりません)
3年生になるとき、彼は『トレセン』の選考会に行くと言ってきました。上手くなってきて、自信が付いたのだろうと思います。
 
そして、『トレセン』の選考会の日がきました。
参加している生徒のほとんどが、『トレセン』継続組で“セミクラブチーム”星稜中の生徒でした。
そこでは、2チームに分かれてのボール回しやミニゲームをしました。
私は、彼が十分やっていけるレベルに見えましたし、結果も合格。
 
しかし、彼の感想は意外でした。
彼「外から見たら僕もできてるように見えるやろ。中に入ってみ。あのスピードで、味方の位置、自分のポジショニングを考え続けるのは頭が疲れるねん。あの人らはすごい」
セミクラブチーム(またはクラブチーム)で身に付く能力を実感し、彼はへこんでいました。
また、
彼「星稜中の練習に混ぜてもらう感じで、月5千円払うのは○ったくりやろ…」
(市内の学校から上手い生徒が集まることを楽しみにしていたようです。すみません)
そして、
彼「コーチが練習の最初から怖ぇな…」
(あくまで某中学生の感想です。コーチは素晴らしい方々ばかりです。すみません)
 
楽しくなさそうなので、『トレセン』は結局、辞退することになりました。
(本当にすみません、すみません)
 
また、親である私としては、『トレセン』というフィルターを通して、彼が弱小サッカー部にいたから伸びた能力、もしクラブチームに入っていれば伸びたかもしれない能力を感じられた気がしました。
 
このようになんだかんだありまして、彼も3年生最後の『県大会予選』を迎えます。
この頃には、新1年生も入部しており、晴れて11人で試合開始のホイッスルを聞いていました。
そして、結果は力及びませんでしたが、引退する3年生にやり残したことはない様子でした。
 
また、ここでは割愛しましたが、各生徒の能力が伸びた要因として、3年間(正確には2年と3か月間)面倒をみてくださった顧問の先生の指導によることが大きいのは間違いありません。
3年生引退後の次の年代においても、生徒の持てる力を引き出し、魅力的なチームをつくられるのだろうと思いました。
 
終わりになりますが、息子は中学校サッカー部で楽しそうにサッカーができて、おかげで飛躍的に上手くなれました。
そして、見ている側もなんだか面白くて、私まで楽しませてもらえました。
 
やっぱり、
弱小サッカー部で良かったのです!
(完)

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