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私の「美」(16) 「マスクマン」

 この話を書き終えるや、アントニオ猪木さんが死去したという報に接しました。ご冥福をお祈りするとともに、この話が追悼の代わりとなれば深甚です。
 覆面レスラーといえばアニメ『タイガーマスク』(1969年〜)でした。小学生だった私は、授業の合間に、ノートの端のスペースに、勝手に夢想したタイガーマスクの対戦相手の絵を描いて喜んでいました。さらに、テレビのプロレス中継で千の顔を持つ男、ミル・マスカラスに魅了され、私の覆面への憧憬は深まるばかりでした。
 中学に進学すると、部活動やその他諸々馬鹿げたことに興味が移り、少年だけが抱く憧憬は、過去のものとして、心の奥深くに押し込まれてしまいました。
 プロレスの世界では、1981年に初代タイガーマスク(佐山聡)が、1989年に獣神サンダー・ライガーがデビューしたりし、マスクマン(覆面レスラー)の血脈は受け継がれていました。
 「そうだった。マスクマンが、そしてマスク自体が本当に好きだった」と思い出したのは、2018年の春でした。少年だったころの強くてちっぽけな憧憬の塊が、突然跳ね上がってきたわけです。
 マスクマン自体大好きですが、やはりマスク自体に心惹かれる私がいます。2018年の春ごろ、メキシコのマスク図鑑を購入したり、マスクマンを主人公とした物語を書いたり(改訂新版 オン・ザ・リング | 中嶋雷太 | 小説・文芸 | Kindleストア | Amazon)し、マスク熱が高まってゆきました。
 そして、とうとう、自分の為のマスクを手にすることになりました。マスクと言っても、ハロウィン用みたいなちゃっちいマスクですが、金色一色のマスクを探し求め、ようやく手にした大切なマスクです。
 根がアホなのもあり、ジムでは長年格闘技系のプログラムで身体を作っては太るを繰り返している私ですが、心のなかだけは、いつの日か、マスクマンとしてリングの上に立ってみたいという熱を帯び続けています。文字どおり心のなかだけです。
 時々、マスク図鑑を手に、メキシコの職人手作りのマスクの写真を眺めては、「良いなぁ」とつぶやいています。なかなか、マスクの造形美について、書き始められぬ私ですので、次週はパート2として、続きを書かせていただきます。中嶋雷太

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