見出し画像

音楽があれば(18)ウクレレのある家

 ウクレレの音色が好きになったのはいつごろだったか…。手にした楽器の最初はピアノのお稽古ごとから始まり、アコースティック・ギター、エレキ・ギター、バンジョー、フラット・マンドリン、ブルーズ・ハープなどあれやこれやと楽器の演奏に親しんだ十代を過ごしたものの、何故だかウクレレは手にし難い楽器のまま、社会人となり仕事に没頭する日々を送ることになりました。忙しくしていることが常識だった日々、ハワイからも遠ざかっていましたが、ドライブで流すCDをあれこれ探しているうちに、何枚かハワイのミュージシャンのCDを手にしていました。カウアイ・ボーイズやジェイク・シマブクロ…やがてイズラエル・カマカヴィヴォオレの"Over the rainbow"に魅せられ、ウクレレがようやく私の身近な楽器になったように思います。
 それから何年も経過した2016年。ワイキキからノースショアへとドライブする途中、ハレイワの町へと向かう分岐点近くのウクレレ店The Ukulele Siteに立ち寄りました。ずっと気になっていたウクレレでしたが、それまでは、あくまで聴いて楽しむもので、弾いてみたいとはまだ思い切れない私がいました。聴く側と演奏する側の一線を超えるのは、やはり難しいものです。
 このThe Ukulele Siteには時間潰し的に立ち寄ったのですが、店員の方とあれこれウクレレの話をしながら、簡単なコードの押さえ方を教えてもらい試奏しているうちに、聴く側にいた私は、演奏する側の楽しみを少しだけ知ることになりました。
 その日の夕方、ワイキキ近くのアラワイ運河沿いにある定宿のコンドミニアムに「私のウクレレ」とともに帰りました。CとFとGの簡単なコード進行で"Over the rainbow"を演奏すると、イズラエル・カマカヴィヴォオレとは比べものにならないぐらい下手な演奏でしたが、ウクレレが手元に馴染んでくるのが分かりました。肩肘張らずにポロんと爪弾き、鼻歌のように歌う気軽さといえば良いのかもしれません。
 そして、日本に帰国し、我が家は「ウクレレのある家」の仲間入りをしました。そこには、時間が緩く過ぎ行き、太陽の光や風や鳥などの自然が包み込んでくれる柔らかな空気が流れています。中嶋雷太

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?