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ワードローブの森の中から(50)「雨の日は、プチバトーの黄色いヨットパーカ」

 テレビのバラエティ報道番組などを観ていると「梅雨」=「悪」という文法で語るのが定番で、その季節を愛でるよりも「大変だ!」と騒ぐのが流行りのようです。もちろん豪雨災害なども発生するので「大変だ!」と注意喚起し人心を煽るのも必要なことでしょうが、一面だけを語り過ぎてはいないかと思います。気象現象はそもそも良悪でとらえるものではないので、この偏った文法による悪い印象付けは、長年落ち着いて自然のあるがままを受け入れてきた文化目線を混濁させているように思います。
 さて、そろそろ梅雨入りで、梅雨が好きな人はあまりいないと思います。ジトジトと降り続く雨は、心を暗くさせるものですから。
 かく言う私もまた、梅雨入りすると「早く夏にならないかなぁ」と傘を後ろに傾け空を見上げます。
 でも、向き合い方を変えると、小さな楽しさをみつけられるものです。その一つがプチバトーの黄色いヨットパーカです。
 1893年にピエール・バルトンという人物がフランスのシャンパーニュ地方にあるトロワという町に工場を設立したのが始まりで、それ以来、赤ちゃんや子供向けの下着などを作り続けてこられたとのことです。(同社のホームページから)
 さて、黄色いヨットパーカに最初に惹かれたのがいつだったか…記憶は曖昧です。ひとつはヘミングウェイだったかのアメリカの作家の小説を読んでいて、そのなかに黄色いヨットパーカを着る人物の描写がありました。映画でも、イギリスかフランスの映画のなかで黄色いヨットパーカを着る人物のシーンがあったはずです。さらに、「メンズ・クラブ」という男性ファッション誌か、最初期の「POPEYE」だったかで、男性ファッション・モデルの方が着込んでいたのを微かに覚えています。1970年代後半からのアウトドア・ブームの流れにあったベビーデューティー・ファッションで、何かの書籍か広告で目にして心惹かれたのは確実です。小林泰彦さんの「ヘビーデューティーの本」に描かれていたかと思いますが、書棚のどこかに眠っていて見当たらず確認がとれません。
 写真のものは三代目のプチバトーの黄色いヨットパーカで、春先から梅雨の終わり、もしくは晩秋から冬の始まり頃に羽織って楽しむファッション・アイテムになっています。体感温度では最高気温20度以下の日に羽織りたくなりますね。Tシャツの上から羽織っても良いし、Tシャツ+グレーのパーカーの上からでも良し。さらに寒ければ、長袖のシャツを着込んでからでも良し…。防雨と防寒を兼ね揃えているアイテムです。
 特に、梅雨入りをした梅雨寒の日にこれを羽織ると気持ちが明るくなります。「とうとう梅雨がやって来たかぁ」と嘆き、心が挫けそうになり、曇り空を見上げそうになりますが、グレーなら黄色だと、ニヤリと笑みをこぼします。足元をレイン・ブーツかLLビーンのショート・ブーツで固めると、雨天も楽しくなります。さらに、今、気に入って使っているのがトリコロールの色合いの傘なので、雨の日の私はパリの気分に満たされます。呑気な私です。
 明日は一日中雨模様で、梅雨入り間近の気配が漂ってきました。
 「鬱陶しいなぁ…。早く夏にならないかなぁ…」と愚痴をこぼしそうですが、ワードローブから黄色いプチバトーのヨットパーカを取り出すと、気持ちが少し明るくなります。
 気象現象は人間誕生前からある自然そのものなのですが、自然のバランスを崩すような宅地造成や都市化に邁進したこの1世紀のツケが回ってきているのに、自然現象をただただ悪者扱いにするのはそろそろやめた方が良いようです。慌てず叫ばず、そして単純に悪者扱いせずに、それをあるがまま受け入れたいと願っています。
 もちろん、防災という意識は持ちつつも…。中嶋雷太

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