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JAZZを聴くきっかけになった男の話、に戻ります。

ここのところ、高校時代の話が止まらずにおりました。

時間を少し前進させます。

当時の会話は正確には覚えていないけど、たぶんこんな話をしたよなということで進めていきます。


高校時代の吹奏楽部の友人と僕は、我々の高校としてはごく普通の進学先である”予備校”に通っていた。

当時僕が通っていたのは予備校として有名な代々木ゼミナール大船校。なんか有名大学に通っているがごとく普通に浪人生だった。

当時はかつて金ピカ先生で有名だった「サトチュー」がいた。学校の前に大きなアメ車「リンカーンコンチネンタル」が良くとまっていた。

高校時代、見事に学業を拒否していた身としてはごくごく当然の成り行きであった。

時期や諸々その辺りは全く覚えがないのだけれど、ある時、彼と図書館に勉強しに行こうということになり、桜木町駅から紅葉坂を上ったところにある神奈川県立図書館に向かった。

図書館で受験勉強をしていた。。筈なのだが、すぐに飽きてしまい気分転換を試みる。

神奈川県立図書館の隣には神奈川県立音楽堂がある。そちらに向かってみると、たまたまその日、某高等専門学校の定期演奏会をやっていた。

「ちょっと、覗いてみますか?」

ということで演奏を聞くことにした。

前に少しお話ししたが、僕たちの高校の吹奏楽部は全国大会で金賞をとるような部だった。彼はそこの出身なわけで・・・

しばらく演奏を聴いていたものの、、、うーん、モヤモヤする。

音は外れるし、なんだろう、モヤモヤが増殖する感じ。

早々に会場を後にする。

すると、彼から提案があった。

「なんかさ、耳直ししにいかない?このモヤモヤ何とかしたくない?」

「うん、モヤモヤするね、で、耳直しって何?」

「JAZZ聴きに行こうよ。いいJAZZ喫茶があるからさ・・・」

「ええ、JAZZ??わかんないよ。あれさ、よくわからないからもっとモヤモヤしそうだよ」

「いや、大丈夫。三谷だって高校時代音楽やってたじゃん。フュージョンとか好きでしょ?」

「好きだけど、JAZZは本当にわからん!!」

「まぁいいから、行くよ」

といった感じで半ば強引に桜木町にある”down beat”というJAZZ喫茶に連れていかれた。

古いビルの脇の階段を上がって扉を開くと、窓もなく暗い世界がそこに広がっていた。タバコとコーヒーのにおいが充満した空間に、人の姿はあれど誰も話し込むわけでもなく、俯いたり、目を閉じて佇んでいた。

ちょっと怖い。

「ねぇ大丈夫なの?」

「大丈夫だよ!!」

JAZZが大音量で流れている。

仕方なく、2時間我慢しよう2時間聴いてもなんだか分からなかったらJAZZからは身を引こう。そう思って小さなコーヒーカップに入った苦いコーヒーをすすりながらひたすら聞き入った。

それまでに触れていた音楽は一般的なニューミュージック系やフュージョン系だった。何度も聞いているとフレーズを覚え、それをコピーして演奏するということをやっていた。耳で音を覚えて、その通り再現することに注力したいた。教科書通りにできたことがある意味”うまい!”演奏だったのだ。

ライブを見に行ったとき、ミュージシャンがフレーズをアレンジされたりすると”いつも聞いていたものと違う!”という違和感を感じて、「なんかついていけないなぁ」なんてことを味わった人もいるのではないだろうか。自分もそうだ。

そんな感じなのに、JAZZはこの”フレーズ”が良く分からない。確かに同じフレーズが何回か流れる、でもその後って決まっているのか決まっていないのか、演奏がバラバラというか自由というか・・・なんだかよく分からん!という状態がしばらく続いた。苦しい・・・そう、教科書通りという感覚がないというか、しないというか・・・

とにかく2時間聴いた。

すると自分の中に、なんだか「JAZZって、こんな感じ?」というものが沸きあがってきたのだった。


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