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「撮影中は"穏やかな時間"を大切にしている」フォトグラファー、北圃莉奈子さんへインタビュー。

『オズ』の愛称で親しまれている北圃莉奈子さん。
大学時代に仲の良い先輩が偶然観た『オズの魔法使い』から、その愛称になったそうです。

彼女の撮るポートレイトは、「オズちゃんの写真だ」と感じられるほど、人のあたたかさが表現されているようで。
出会った頃からの交流は数えられるほどではあるのですが、彼女のやわらかな人柄と写す写真のファンなのかもしれない。

今回は、「改めてオズちゃんのことを知りたいな」というリクエストに応えていただけました。
ふわふわと癒される声と、楽しそうに愉快なお話をする。そんな彼女のカメラとの出会いから今に至るまでや、思いを聴かせていただきました。


▼莉奈子さんプロフィール

北圃 莉奈子(きたはたけ りなこ)
・2015年より数々の個展・グループ展を開催
・宣材写真、映画・ドラマの宣伝用スチール撮影など

ー愛機は「LEICA M10」
ー1人1人の目的や意図を汲んだ写真撮影を得意とする。

ー肩書きについて、どう考える?

カメラマン、フォトグラファー、写真家・・。「何か一つに絞った方がいいのかな」って考えた時期があった。
マルチすぎて「何をやってる人なの?」ってなるのもイヤだったからね。

大学生の頃、志や夢をテーマにインタビューを受けて、肩書きについて聞かれたんだよね。
自分と向き合うのって、そのための時間を作らないとなかなかやらないからすごくいい経験になった。
聞かれたことに対して自問自答しながら話すし、「自分ってこう考えてたんだ」って整理ができる。

今は、肩書きをいくつか持つことに対してポジティブに捉えられているかな。
いろいろな場所で自分に合った活躍の仕方があるなら、すごいフレキシブルだしバランスを取って充実できてるってことだもんね。

私の場合は、肩書きに囚われないで「好きな人たちと仕事していきたい」って気持ちを継続しているかも。

ー原点はファッション誌の編集者?

そう。編集者になるために学部も留学も決めた。
フランス語を身につけて、出版社へ行くつもりだった。

ーフランスで編集者を目指していた?

ううん、日本に語学力を持ち帰るつもりだったんだよね。

出版社へ受かるために服飾の勉強をしようと思っていたんだけど、最終選考で出せる強みを考えたとき、語学力だって思ったの。
英語とフランス語を身につければ、服飾の専門知識を持った子たちに勝てるかもしれないって。

国際系の学科を選んだ理由も、英語やフランス語の授業も受けられるし、留学が必須だったから。
留学先の成績がそのまま日本の成績に反映されるから、休学扱いにもならなかった。
海外で活躍されているアーティストが教授をやっていたり、キャンパスの雰囲気もすごく良くて、「もうここしかない!」って即決だった。

結局その選択が、今の仕事に進む通過点だったのかも。

ー写真に目覚めたフランス留学。なぜカメラを持って行ったの?

仲の良い先輩がいつもカメラを持っていて、少し憧れがあった。
せっかくなら「カメラで留学の思い出を残したい」と思って、留学寸前に一眼レフを買ったんだよ。

説明書も読まずにマニュアルモードで撮り始めて、帰国してからシャッタースピードや絞りについてもちゃんと知ったの。
機器類の操作はいつも直感型で・・・本当初心者だったんだよね。(笑)

ーパリでのストリートスナップを始めたきっかけは?

「編集者を目指して歩んできてフランスまで来たけれど、何もできていない」って気づいたの。
だから雑誌を作ろうって動いて、形にするのは帰国後にできるから、パリのストリートスナップを撮り溜めようとしたんだよね。

毎週スナップを続けていたら、「写真って楽しい」って感じるようになってきたのかな。

ー海外でスナップを撮らせてもらうのは、むずかしそう。

緊張はしたかな〜。
けど、自分のフランス語が現地の人にどれだけ通用するかを試せたんだよね。
会話の実践はホームステイ先と学校内がほとんどだし、自ら動かないとネイティブのフランス人と会話する機会が少なかった。

パリでストリートスナップを撮り始めて、フランス語で意思の疎通ができることがとてもモチベーションになったよ。
始めた頃は、写真よりコミュニケーションをとることが目的だったかもしれない。

ー編集者じゃないと思ったきっかけは?

3年次研究の作品としてパリでのスナップ誌を提出したんだよね。
実際に自分の手で雑誌を完成させたことによって、出版社に所属しなくてもいいんじゃないかって思えたんだ。
だからいつか、自分で思うようなファッション誌を作ろうってなったの。

そこからはすぐに原宿でストリートスナップを撮り始めた。

ー写真にスイッチしてからどう変化した?

Twitterが流行していたから、作品を見てくれる人も増えたなぁ。
「ポートレイトを撮っていただけませんか?」というDMも入るようになった。
私に写真を撮ってもらいたい人がいるって知ったり、いろいろな発見と出会いが重なったのかな。

「カメラを続けられるのであれば、続けていきたい」と思ったんだよね。

ー仕事として考えたのは?

写真を始めて間もない頃、TwitterのDMでファッションショーの撮影依頼が入ったの。
それを見て、「好きなことが仕事になるんだ!」って感動もあった。

そういう体験をして、このまま仕事になればとても幸せだし、今はこれが楽しいからこれがいいんだって思えた。

ーもともと写真関係の人脈があったの?

人脈じゃないけど、写真を撮るなら被写体側のポージングも知りたいと思っていた頃、ピンときた事務所に入った。

その事務所で受けていたレッスンの講師に、元モデルのメイクアップアーティストさんがいて、今でもとてもお世話になってる。
カメラマンとして仕事をする機会も増えたし、今思えばいろいろなご縁が広がるきっかけだったなぁ。

ー普段とお仕事、キャラって変わる?

場所によるかなぁ・・・。
すでに仲良い人とのスナップ、チームを組んでの作品撮り、ドラマや映画の現場とでは、いい意味でコントロールしてるかな。

自分の中では変わっていないつもりだけど、アシスタントから見たら「全然違う」って。(笑)
しっかり度も違えば、穏やかさも違うんだって。

やっぱりクライアントさんには仕事相手として安心してほしいし、テキパキ動いて、ハキハキ話すように見せ方は変えているのかな。
撮影するときは、穏やかな空間を作るように心がけているよ。

ーポートレイトをメインにしている理由は?

人が好きだから。
ファッションショーとかの、動きのある撮影も楽しいよ。
でも、ショーのカメラマンをするとしたら、バックヤードのカメラマンとしてモデルさんとコミュニケーションをとりながら撮りたいなぁ。

ー被写体のどんな瞬間が好き?

不意にこぼれちゃった笑顔。
本当に楽しそうにしていて、うっかり出ちゃったような顔。

人間らしさが好きなのかもしれない。

パーソナルワークとして、俳優さん本人のご自宅で撮影をしたことがある。
俳優さんやモデルさんって、完成された写真は世に出回っているけれど、自然体でいるときの瞬間ってなかなか見られないよね。
お名前を検索してインターネット上に載っていない、「オンじゃないときのその人をあばこう!」っていうテーマで撮りたいと思ったの。

本当に自然体な瞬間って、距離感があると撮れないから、本人のパーソナルスペースまでぐっと踏み込んだりもしたかな。

そうして上がった写真がすごく好評で。私だけじゃなく、他の人も魅力的だと思う表情なんだって実感できた。

ーオズちゃんらしい写真ってどこから出ている?

2〜3年前にブックを見てくれた人から「被写体との距離感が気持ちいいですね」って言われたことがあって。
当時、けっこう気にしていたことなんだよね。
私情的なものを写真には出したくないし、見る人が心地よく見られる写真がいいなと思っているから、ベースでそれが出ているのかも。

ー物撮りでこだわっている点は?

一番自分が高揚した瞬間を撮ってる。風景も物も。

特に外だと、ファインダーの中で「この光の周り方で入ってきているから、こう写るはず!」って感じた瞬間を撮る。
逆に高揚しなかったときは、1枚も撮らないなんてこともあるよ。

あと、父が陶芸家で、料理を陶器に盛り付けて撮るというシリーズを試したことがある。それで物を撮るのも好きになったのかな。

ー海外で写真活動をする予定は?

写真の仕事をしたいというよりは、シンプルに、またフランスへ行きたい。
それに、海外の景色をたくさん見たい。旅行じゃなくて長期で生活がしたいんだよね。

仕事もできたら素敵だけど、暮らしの中に写真があれば幸せかな。

ーまた編集者の道に戻る可能性は?

それはないかな。
写真以外の仕事を選ぶとしたら、空間を作っていきたい。
みんなのサードスペースを作っていけたらいいなと思ってる。

ー5年、10年後のビジョンはある?

仕事ができて充実してそうな、きれいなお姉さんを目指したい。(笑)
好きな仕事をバリバリしてて、なおかつ自分の時間を確保しているような方っているじゃん。

それに、今よりもっと生活を安定させることができたら、週末限定で自分のお店がしたい。より、毎日の幸せが増えそう。
「ちょっとおしゃべりしたいからオズのところへ寄ろう」って感覚でみんなが集まるようなお店がいいな。

ーオズちゃん、ありがとうございました!


写真のことや、大切にしていることを愛おしく話す姿がとても印象的でした。
2022年9月1日(木)〜20日(火)まで個展" RINAKO KITAHATAKE EXHIBITION "を開催しています。
クライアントワークとは違った、彼女の世界観をぜひ感じてみてくださいね。


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