相性

私は二度と東京には住まないだろう。


様々な心境を両手でぎゅっと抱え込み、16:56発 のぞみ36号に乗り込んだ。
母の寂しそうな顔と乗り慣れていない新幹線に少し戸惑いながら東京へ向かったあの日のことはきっと忘れない。


東京での生活は最低だった。
「最低」と言っても家はあるし、地下鉄一本で会社まで行けた。近くに安いスーパーもあって、コンビニは徒歩2分。
職場ではMacBook Pro 2018を支給してもらって、18:00~19:00くらいに自由に食べていいカロリーメイトやクリーム玄米ブランが置いてあったし飲み物も無料で飲み放題。
いい環境だった、いい環境だったはず。
それでも私の心に纏わり付き始める”何か”に気づいてしまった。

私が弱いとか嫌なことから逃げているとか我慢強くないとかわがままとか
東京が冷たいとか汚いとか標準語が馴染まないとか住みにくいとか悪い場所とか星が見えないとか変な人が多いとか電車がよく止まるとか
そういうことじゃなくて、ただ単に私と東京、ふたりの相性が悪かったんだと思う。ふたりの相性が最低だっただけだと思う。

ずっとしたかった新しい仕事
知らない街をぶらぶら歩く、乗ったことない電車に知らない人々の渦
そういったものに憧れていたはずだけど、そういったものに心底疲れて、うんざりしていた。

東京には夢や希望やキラキラしたものやチャンスがあるって、そんな風に思っていたかと思えばそうだし、そうでもないし。何故上京したかなんて今考えても全然分からなくて、貯金と4ヶ月分の心が擦り減っただけだ。

でも私はこの文章を書いている瞬間もこれから先も上京してよかったと思うだろう。学んだことや考えたことは私自身を今も作り上げている。

しかし、私はもう二度と東京には住まないだろう。

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