いぢわるな魔女の漢方治療日記29

11月の診察/初冬

先生「微妙だなー」
来た!また、いきなり。
先生「微妙だね、体調」
私 「そうなんです。胃腸炎以来、なんかお腹に力が入らない。胸のあたりもトクトクして、動悸かなと思うことも」
先生「最近、あまり外出してない?顔の腫れも気になるね」
えっとー、鏡を見ても私は全然気づかなかったけど、顔腫れてますか?どの辺りが?
先生「あー冷えが入り込んできたかなー。いやな感じだなー。処方変えよう。ちょっと寝不足かな?」
私 「けっこう遅い時間に寝てます」
先生「くちびるとか腫れぼったくならない?」
いや、だから、私の顔のどの辺をご覧になってまして?
私 「寒くなってきているのに、まだ痛みが出てないです。これから痛んでくるのかドキドキです」
先生「桂枝湯出すから、出掛ける前に飲んでね。一ヶ月後だと不安だから三週間後にまた来て」

処方

煎じ薬
六君子湯(リックンシトウ)
効能:吐き気を止め、胃の余分な水分を除く。食欲不振、疲労、慢性の胃腸症状などを改善する。

大黄(ダイオウ)
効能:瀉下(しゃか)

エキス剤
白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)
効能:熱をさまし、うるおいを与える。のどの渇き、乾燥してかゆみの強い湿疹、皮膚炎などを改善する。

八味丸(ハチミガン)
効能:血行を良くし、腎臓のはたらきを改善する。

桂枝湯(ケイシトウ)
効能:血行をよくし、発汗、解熱することにより、頭痛、身体痛をやわらげる。

言われた通り、桂枝湯を飲んで外出。これを飲むと飲まない時より寒さの感じ方が和らぐ気がする。貼るのじゃなくて飲むカイロ。

十二月の診察。
待合室は混雑。
患者さんが名前が呼ばれ立ち上がる。廊下をまっすぐ歩けない程ふらふらしながら診察室に入った。あらま、大丈夫かいな。
10分後、ふらふらだった彼女が診察室から出て来た。心なしか笑顔となり、背筋がしっかり伸びてシャキシャキ歩いていった。さすがにこういう光景にも、もう驚かなくなった。また一人、エスパー中田に魔法をかけられちゃったね。

先生「調子どう?」
私 「胃腸の調子があまりよくないです」
先生「どんなふうに?」
私 「痛いんですけど、痛みが動く」
先生「お、なるほど。ドキドキもする?」
私 「します。メンタルもあまりよくない」
先生「ああ、この時期はね、気持ち落ちてもおかしくないよ、そういう季節。じーっと溜め込むのね。だからやる気がなくてもしょうがないよ」
私 「落ち込むというか、ちょっとしたことでイラッとする」
先生「どういうことでイラッとする?」
私 「ほんと、ちょっとしたことで。たとえば、床に糸くずが落ちてるだけでとか」
先生「ふむ。では処方を変えよう。抑肝散ね。次、年明けすぐにしとくね」
ふむ?ふむってなんだよ、イラッとする。

処方
煎じ薬
六君子湯(リックンシトウ)
効能:吐き気を止め、胃の余分な水分を除く。食欲不振、疲労、慢性の胃腸症状などを改善する。

大黄(ダイオウ)
効能:瀉下(しゃか)

エキス剤
八味丸(ハチミガン)
効能:血行を良くし、腎臓のはたらきを改善する。

抑肝散(ヨクカンサン)
効能:気分を落ち着かせる。血行を良くし、イライラ、不眠、ひきつけなどの症状を改善する。

この抑肝散は、アルツハイマー型認知症で起こる妄想や徘徊、暴力行為など周辺症状の抑制に効能があることで有名になった漢方。たしかに、飲むと気分が落ち着いてくる感じがする。でも、高齢者には、抑肝散を処方されると「自分は認知症じゃない」と怒る人もいるらしい。余計な情報が世の中に蔓延しちゃってるな。

年明けの診察。
先生「調子悪くなさそうだね」
私 「はい、おかげさまで前回の処方でだいぶいい感じです。でも最近、夕飯食べるとものすごい睡魔に襲われて2~30分寝ちゃいます。いままでそんなことなかったのに」
先生「気が落ちてるからね。でも今出てる六君子湯でカバー出来て来るからいいんじゃないかな。このまま同じ処方でいってみよう」
私 「ここのところ、不調はあるけど、全身の疼痛は出てないじゃないですか。この状態がどれぐらい続くと、たとえば、寛解というふうに言えるんですか?」
先生「そーだねー、この春まで様子みるけど、それまで変化なければ完治といえるかな」
・・・え?先生、今、何て言った?え?その単語、言っていいの?マジか?究極の表現だよ!線維筋痛症を専門とするイタリア院長が聞いたら気絶する、間違いない。聞き間違いか?
私 「先生、そのー完治って、治ったってことですか?」
先生「そう。もう、からだいいもん。お血も消えたし。もうずっと血府逐瘀湯も処方してないでしょ。肌質もぜんぜん変わったしね。いいんじゃない」

完治。あっさり。音も立てず。さらっと。
終わるって、そんなものかもしれない。

先生「今後は、からだのメンテナンスという感じに切り替えていくよ。当初から『引越し』ということを視野にいれてって話してたけど、今のからだだったら、なんとか対応できると思うよ」
わーお!わーお!わーお!
今でも西洋医学では完治困難といわれている線維筋痛症がね、なんと完治ですってよ!
いやいやいや。
ここで、ぬか喜んではいけない。
落ち着け。
春までは様子見。春までは様子見。
どうか痛みがこのまま出ませんように。
祈るような気持ちで、診察室を後にした。

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