いぢわるな魔女の漢方治療日記 26

八月の診察

先生「どう?」と言いながらじろりじろり。「あら?あんまりよくないか」
私 「相変わらずの腰痛です。あんまりに痛いので整形外科いっちゃいました。骨が変かもとレントゲン撮りました。特に異常はみられないって」
先生「(笑)そうでしょうねぇ」
私 「整形外科の先生って、写真に異常がみられないとなると途端に患者に興味なくすんですかね。あれやめて欲しいですよ。先生から気持ちが遠のくのが分かると患者は凹みますから」
先生「だってしょうがないよ、外科だから(笑)」
私 「結局、老化による腰痛症だから運動はしないようにコルセットしてって言われました(怒)。でも、言い方を変えると腰以外は調子悪くないってことですね」
先生「うん、そーだね。ちょっと横になってお腹みせて」
へそより右側腹部数カ所押される。ゆっくりと押す。ゆっくりなんだけど、激痛っ!痛いっ!(怒)痛いっつーの!
先生「ちょっと置き鍼しとくからね」

処方
煎じ薬
血府逐オ湯(ケップチクオトウ)
効能:お血の改善

エキス剤
通導散(ツウドウサン)
効能:便秘、下腹部が張って痛む、頭痛、肩こり、めまいなどに用いられ、炎症をとり血行を良くする。

八味丸(ハチミガン)
効能:血行を良くし腎臓のはたらきを改善する。体の弱った機能を補い元気をつける。

ちょっと置かれた鍼が功を奏したのか、腰痛は劇的にいい感じ。
お腹に置いた鍼が腰に効く。自分もツボに関わる視点で仕事しているのに、妙に感心。

九月の診察
先生「どう?」
私 「絶不調です。絶不調すぎて気持ちもやさぐれてます(じーっ)」
先生「そーか。それじゃ、やさぐれちゃうね。台風が来たタイミング辺りで調子悪くなったんじゃない?」
私 「そーですね。雨が四日ほど続いて、家中カビが発生し出してマズいなーと思ってたら、みるみる痛みだしました。全身がコムラ返しのあとの痛みの残像のような痛みです(どんな痛みだよ!)」
先生「夜、足熱くなる?」
私 「火照ります。何もやる気が出ないし、集中出来ないです(じーっ)」
先生「水にやられたね。この間の雨はひどかったもんね。僕もやられたよ。いつも気力で仕事してたけど、出来なかった(笑)」
私 「このカビじゃ、また先生に引っ越してって言われちゃうなーと思ってました」
先生「あ、それは今もだよ。乾燥した、日の当たる部屋に引越したら、もっと早くよくなるよ。でも、引っ越さなくても、ここまでからだがもってくれてるから、すごいのよ」
私のからだ、がんばってくれてるんだなー(しみじみ)
先生「ちょっとお腹みせて」
胃の辺りを押されたら、うっと声が出るほど痛く気持ち悪い。
先生「(へその下を押しながら)あ~スカスカじゃん。気がない。これじゃ〜力入らないよ」
また、気がなくなっちゃったか。
先生「鍼灸受けたらいいんだけど、今日時間ある?」
私 「はい、楽になれるなら行きます。でも、この間の気がない状態とはまた違う感じがするけど」
先生「うん、違うね」
その場で近所の鍼灸院に電話。「水害でやられちゃってる」と説明してる。しかし、今日は予約がいっぱいで改めての予約に。
先生「今日処方する漢方飲んで一週間ぐらいで行ってみて。さて、あとはどーするか。ちょっと背中みせて」
先生に背中を向けると、指先で背中一面を何か散らすような手技でマッサージみたいなことをされた。
先生「どう?」
私 「なんか気持ちいい」
先生「降り始めの雪が浅く積もった感じの痛みに感じたから、散らした。今僕がイメージしながらやってみた(笑)」
人体実験発動。しかも痛みの表現がポエム。斬新。
私 「前回、腰の痛みだけになってて、先生にお腹押されて、そこからなんとなく痛みがやわらいでいく感じで、このままいけば寛解ぐらいにはいけるかと思ったのに、がっかりです」
先生「そーだね。前回は血を動かしたんだよね。それで楽になったんだけど、また水にやられちゃったね」
私 「線維筋痛症の患者さんはけっこういますか?」
先生「いるね」
私 「先生は線維筋痛症という病気は漢方医学的にはなくて、みんなそれぞれ抱えているからだの問題の原因を改善すれば治るって言ってましたよね」
先生「そーだね」
私 「私、この病気に罹患して3年ぐらいで、この1年は先生に診てもらうようになって、最初に比べると見違えるほどよくなってて、同病の他の人たちの話をきくと、私はすごく早く治って来てて。でも、良くなったりまた痛みが戻ったりをずっと繰り返していくしかないのかな」
先生「う~ん、どーかな。rikaさんの場合は、根っこの原因の一つが改善されれば、あっという間によくなると思うよ」
私 「引越し」
先生「そう(笑)」

私の線維筋痛症の特効薬は「引越」なのだ。
でも、それを聞いて容易に実践は出来ない。
南青山奥地の昭和の古民家で行う仕事。未病の人たちと出会う場にはデザインが必要だから。病院というデザインは、病気の人が集う場。そこが違う。自分のからだが楽になるならば、古民家を捨てて移動する選択肢は当然あるけど、やりがいがなくなると別の原因が生じそうでもあると感じる。今の仕事のやり方が楽しいから。
引越を特効薬だという先生の話が突飛でおもしろ過ぎるんだな。飛躍した話のようで本質を語る。

私 「先生はブログとかやらないんですか?」
先生「ブログやるには忙しくてね」
私 「本とか出す予定とかは?」
先生「勉強会のテキストを本にする話とかはあるんだけどさ、僕の考えや治療法がどんどん変わっちゃうの。一年前やってたことや言ってた事が変化してっいっちゃうんだよね。だから中々難しい(笑)」
私 「先生の春の講義は、患者としてだけでなくアロマセラピストとして聞いてて、すごくおもしろかったです。漢方も精油も植物由来だし共通点もたくさんあって、漢方医学的な考え方もアロマセラピーに応用出来るな〜って。一番刺激的だったのは『気剤を使ってのリラクゼーションは、気持ちを緩めて気を行き渡らせる』という話でした」
先生「アロマや鍼灸もそうだけど、瀉(しゃ)は得意だけど、補うことはあまり得意じゃないからね。そこは漢方の得意分野なんだよ。それもそれぞれの特性でうまく使っていけばいいと思うよ」
私 「先生の講義で習ったことを自分の施術に置き換えていま色々実践してます。これが、今すごくおもしろいんですよね」

瀉という言葉。鍼灸を中心に東洋的思想にある言葉。寫という漢字が今は写になっている。瀉も冩も写も意味としては、除くとかうつすという意味。補と瀉はふたつでセット。からだに補う、からだから除く。シュハリのからだメンテナンスでは瀉の行為は「流す」という言葉に置き換えて使ってる。
(難しい言葉は白川静先生のご本を参考にしていまーす)

この日は、絶不調で気持ちもやさぐれていると訴えたからか、先生の目にそう映ったからかなんなのか、私がこの日の最後の患者でもあったので、私のたわい無い話に30分程つきあってくれた。「薬局が閉まっちゃうから先に処方出してもらっておいで。診察室に戻って来て話を続けよう」って。毒抜き的な感じか。今でいうデトックスか。
これは紛れもないカウンセリング。
シュハリのからだメンテナンス要素のひとつのダイアローグと一緒だ。
話して、からだも気持ちもスッキリしたもんね。

処方

煎じ薬
茯苓四逆湯(ブクリョウシギャクトウ)
構成生薬
茯料(ブクリョウ)
甘草(カンゾウ)
乾姜(カンキョウ)
人参(ニンジン)
ホウ附子(ホウフシ)
※四逆湯(シギャクトウ)という漢方薬に茯苓と人参を加えたもの。
効能:全身を温め、手足の冷え、水毒の症状を改善。

エキス剤
四苓湯(シレイトウ)
効能:暑気あたり、急性胃腸炎、むくみを改善。

桂皮(ケイヒ)
効能:停滞しているものを動かし、発散させる。

通導散(ツウドウサン)
効能:便秘、下腹部が張って痛む、頭痛、肩こり、めまいなどに用いられ、炎症をとり血行を良くする。


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