いぢわるな魔女の漢方治療日記30

「春まで様子みるけど、変わりなければ完治かな」
その後も変わらず毎月一回診察に通った。

身体にちょっとでも痛みがでると「また筋痛症の痛みの気がする。やっぱり完治なんて無理なんじゃないか」と、痛みにおののきながら思った。
からだの各所に痛みを感じると先生に「これはまた線維筋痛症の痛みではないのか」と、毎回しつこいくらいに問うていた。
その度に「違うよ」という返答を期待している自分。春はとほい。

1月
先生「どう?」
私 「なんかちょこちょこ具合悪いです」
先生「そんなに悪そうにみえないよ。ちょっと冷えたかな。うん、でも悪くない。お腹みせて」
私 「どこ押されても痛いです」
先生「うんうん、よくなってきてる」
(え、痛いんですけどね)
先生「今ある痛みはね、線維筋痛症とは違う種類の痛みだね。からだの状態全然ちがうもんね」

2月
先生「どう?」
私 「なんか肩、鎖骨周りが嫌な感じになってます。また筋痛症がぶり返しちゃうのか不安です」
(じーっとみられて)
先生「そーね。何か詰まったんでしょ」
私 「筋痛症ではないですか?」
先生「うん、rikaさんの体自体は何でもない」
この時期の先生との会話はこんな感じだった。

〜3月のとある日のメモ〜
夕方から気圧急降下、雨。
2日ぐらい前から、からだがあやしい。
繊維筋痛症的な痛みがきそうな気配。
薬湯でもらっていた血府逐オ湯を煎じて飲む。
最初の処方で1年ほどこの漢方で治療してたから。
完治の言葉がちらついていたのに、また再発はいやだ。
からだ全体が日焼けをした時のようにじーんと熱く、筋肉痛のようにじわじわ痛みの始まりのように感じる。
全身の疲労感。気持ちはあせって、いやだ、いやだと繰り返す。
気圧のせいであってほしい。気のせいだということにしたい。
先生は私の体の問題じゃないと言い切った。その言葉にすがりたい。
次の診察日が待ち遠しい。
と書いている。

テレビに「押すなよ!押すなよ!絶対押すなよ!」と言いながら、押されて熱湯風呂に落とされる場面がある。
押されることを期待しながら、反対の事を口にする。
もしかして、私もそんなことになっていやしないか。
治りたい治りたいと言いながら、本当は「線維筋痛症」でいたいのではないか。
ふと、そんなことが頭に浮かんだ。
なんか、よくわからなくなってきていた。
でも、そんな不安をよそに、痛みは確実に徐々に身体から遠ざかっていた。

                   ○

「関根さん、診察室へどーぞ」
「完治」の言葉を聞いて一年後の春。
練馬総合病院 漢方内科の待合いに、漢方内科中田先生の声がマイクを通して響く。

診察室に入ると、席に座るまで先生にじーっと見られる(望診)。
「どうですか?」と尋ねられ、この一ヶ月の自分の体調のあれやこれやを話す(問診)。
「舌みせて」先生に舌をベーと出して見せ(舌診)
「手首」先生に手首を差し出し脈を確認(脈診)。
場合によって診察台に横になり、お腹をだしてギューギュー押される(腹診)。
椅子に戻り、先生に今のからだの様子を説明され、その時の処方が決まる。
練馬総合病院漢方内科診察室で3年、これを続けて来た。

線維筋痛症完治後も一ヶ月に一回、中田先生の診察を受けている。
からだのメンテナンス。線維筋痛症の治療ではない。
いや、初めから線維筋痛症のための治療はされてなかったんだと思う。
病気を診るのではなく、人を診る治療。
それが漢方治療。

西洋の医学は、専門性が高く、それぞれが突出して専門という部分を眺める診断。その方法が役に立つ病や治療法もあるけど、専門性が高まると周囲の情報には疎くなり、様々な関連を配慮することが薄くなる。痛みの病の場合、痛みを抱えた患者から「痛みを取り除く」という視点に立つ。専門という狭い範囲での考察では、原因の究明は不可能に近いから。
「線維筋痛症」と誰かが名前をつけたけど、その原因を探り突き止める医科学は一患者とは、別の世界の出来事。専門性の高い視点では点のような原因というものに捕われがちだけど、実際は人の中の様々な要因が複合的に作用した結果でしかないのかも。だから、人を診る治療なら、痛みの患者の不具合を調整出来るのだと思う。結果、痛みがなくなる。

おかげさまで私の「線維筋痛症」は、鳴りを潜めました。
これが完治なのかどうかはわかりません。「寛解」なのかもと今でも少し思います。
時々、先生に「からだの痛み、どう?」と聞かれますが「今のところ無事です」
もはや、最近の診察では「痛み」の話題さえ出なくなりました。
先日の診察で「あれ?先生、私が罹ってた、ホラ、あの病気。。」と病名がでてこなくて苦笑いでした。

いや、ホント人ってそんなものなんですね。
喉元過ぎれば痛さ忘れる。

漢方治療日記 完

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