見出し画像

国籍

バンクーバーに友人が住んでいる。カナダ人と結婚した彼女には永住権があるが、国籍は日本のままだ。昨日、久しぶりに電話で話した。(電話で聞いた話をそのまま書きますので、正確な情報かどうかわからない部分もあります。ご了承ください)

感染症問題で、カナダでも外出禁止令が出ている。学校は休校、会社もオンラインでの仕事、アメリカとの国境は封鎖され、グローサリー以外のお店は全部しまっているそうだ。若者が集まりそうな公園や駅前広場なども全部封鎖されている。乗り物は50%の乗客で満席とし、それ以上は載せない。多くの人が家から一歩も出ず、友人知人親戚とは電話やネットで連絡を取り合っているという。

「買い占めがすごいんだよ〜。棚には何にもない。トイレットペーパーも、マスクも、消毒液もないし、食べ物もほとんどない」どこも同じだねと思ったら、「最初にアジア系の人たちが買い占めを始めたみたいでさ、集団心理で不安になった人たちがどんどん買っていくのよ」と。そう聞いて、なんかすいません、と思った。アメリカとの国境が封鎖されたら、紙類の輸入が止まって、足りなくなる、という噂が広まったそうだ。でも実際は違う。物流は止まらないし、国内の製紙工場は稼働しているし、在庫も十分ある。国は「マスクには予防効果はありません」とハッキリ言っていて、医療従事者など本当に必要な人が困らないようにしている。(むしろマスクをしている人は、感染者として避けられるそうだ)お酒の工場は「今はわたしたちが売るべきものは酒ではない」と言って、消毒用のアルコールを生産し、車などの鉄鋼関連の工場では政府から医療機器やそれに準ずるものの製造を受注しているらしい。

首相が毎日テレビで発表をして、そのあと各州知事が州からの発表をする。経過報告、政策の展開、今後の予想と希望、課題の提示をするそうだ。そして、「国民のために最善を尽くし、必ず守る」と言うのだそうだ。『国民』には国籍のある人と、永住権のある人を含むらしく、ホッとする反面、彼女には一抹の不安がある。最悪の事態になった時「国籍のない人を排除する」決断がなされたら、自分を守ってくれる『法』がなくなることだ。だから時々、ふと「カナダ国籍を得ようか」と思うそうだ。そうなると日本の国籍を手放さなければならないので即断とはいかないが、毎朝、日本からの報道を見ていて、徐々にそう思うようになったらしい。

「日本は大丈夫?」と聞かれた。なにが?と返すしかない。大丈夫か?要素が多すぎて、どの部分から話していいのかわからないからだ。「本当に、あの人数しか罹患してないのかな?だとしたら日本すごいと思うけどね。棚に食材とかちゃんとあるところは日本のマナーはいいと思う。でも、安心できないでしょ。なんで聖火を見に、5万人もの人が集まるの?それが理解できない」と言われて、「わたしも理解できないよ」と答えた。桜の名所にワイワイ集まっているとも聞いた。自分一人だけなら、うちの家族くらいなら、行ってもいいんじゃないかと思っている人が何万人もいるということになるねえ。「でもそれ、ちゃんと広報が機能していないか、国民が政府の言うことを聞いてないかのどっちかだよね。みんなで一緒に、っていう気持ちがないってことだよね」はぁ…それもそうですな。どんなことも「自己責任」と言われ続けるとこうなるんですよ。

ふうん。小さくため息が聞こえた。「毎日、感染症のニュースばっかりだから、今日はネットでコメディ映画でも見ることにするよ。元気でね」と言って電話は切れた。




サポートいただけたら、次の記事のネタ探しに使わせていただきます。