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当日(すでに昨日)

昨日、間に合わなかった日記。

全国吹奏楽コンクール中学の部が、名古屋国際会議場で行われた。結果から書くと、ムスメたちの学校は金賞だった。昨日の大会は、出場校30校のうち、金賞は8校。予選参加校は6700超。狭き門をくぐり抜けてきた。

コンクールには決まりごとがいくつかあって、その一つに「演奏が終わるまで、物音を立ててはいけない」というのがある。演奏が終わって、指揮者が台から降りると、一斉に拍手が起こる。でも、指揮者が指揮棒を降ろす前に拍手が起きることもある。会場から「ブラボー」の声がかかる。そうなると、「特に良かったんだな」と思う。

ムスメの学校では、演奏直後に拍手が起こらなかった。すごくいい演奏だったと思ったのに、誰も拍手をしない。不安になる。指揮をした先生が指揮棒をおろし、壇上から降り、会場に向き直って、初めて拍手が起きた。それも、拍手していいかな?という感じの遠慮気味なまばらな拍手から始まり、やがて大きな波のように拍手が広がっていった。それでやっと思い出したように「ブラボー」の声がかかった。両手をグーにして息を詰めて見ていたわたしは、そこでようやく息ができた。

結果発表では、全ての学校に「金・銀・銅」いずれかの賞が与えられる。演奏順に各校の代表が並び、学校名の次に賞の発表がある。1校目、2校目は銅だった。あの演奏で銅だとしたら、うちの学校は厳しいかもしれない。そんなことをオットと話しながら、順番を待った。
「ゴールド!金賞!」と言われた時、「キャーッ!」と歓声が響いた。わたしは両手をできるだけ速く打ちまくった。

ムスメたちはここにたどり着くまで、地区でも市でも県大会でも、歓声をあげなかった。ブロック大会で「全国大会出場推薦」をもらって初めて笑顔が見られた。先生や親から言われた目標ではない。自分たちで掲げた目標に押しつぶされそうになっていた。どうしてこんなプレッシャーを感じながら、演奏活動をするのか。音楽はもっと楽しいものじゃないのか。中学生に全国大会は必要なのか。応援しながらも、わたしには疑問だった。

京都アニメーションの「響け!ユーフォニアム」という映画がある。弱小吹奏楽部が新しく赴任してきた顧問の指導で、全国大会に出場するまでの話。「うまくなりたい。うまくなりたい。うまくなりたい!」そう叫びながら、主人公が涙を流す。その作品を見て、わたしにも少しわかってきた。

結果はプロセスがなければ生まれない。当たり前のことだが、その道を通らなければ、目的地にたどり着けないのだ。近道はたぶん、ないのだ。そして、ようやっと1年かけてたどり着いた場所だが、もう来年への道のりは始まっている。目的地を設定しないやり方もあるが、ムスメたちは目的地を定めたのだ。目的地にたどり着けるか、というチャレンジを始めてしまったら、その味を忘れることができないのだ。山に登るように、また一歩ずつ、少しずつ、高みを目指していく。

でも、それは部としての話であって、うちのムスメがそうかといえば、どうなのかまだわからない。

ひとまず今日は寝る。父も母も、心理的に限界まで張り詰めて、疲労困憊である。



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