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書き置き

スマホを持つようになってから、書き置きをしなくなった。メールかメッセンジャーで用が済むからだ。

まだスマホが主流ではなかったケッコン当初、わたしの仕事は朝番と遅番のシフト制で、オットの仕事とは生活リズムが違っていた。遅番の時は、晩ご飯の用意をして、「冷蔵庫にハンバーグのタネがあるからフライパンでよく焼いて食べてね」とか、「ご飯は15分加熱したのち15分蒸らしたまえ」とか、難易度の高い指示を書き置きしておいた。フツーは「チンして食べてね❣️」とか書くのだろうけど、うちには電子レンジも炊飯器もないのだった。

ムスメが小学校に上がってからは、玄関に貼り紙をした。「ちょっとでかけます。すぐにかえるから、ここでまってて」そう書いてなかったら、ムスメはわたしを探しにどこかへ行ってしまう。それをまた探しに行くのは骨が折れる。それは中2になった今でも同じで、今はわたしを探しに行くのではなく、これ幸いと友達の家に行ってしまう。わたしはムスメの友だちに電話して、お邪魔してないですかと聞く。たいてい、その子のうちにいて、猫と遊んでいる。

そういえば、ムスメは幼稚園の時に「魔女の宅急便」を見て、ユーミンの「ルージュの伝言」を気に入ってよく聴いていた。鏡に口紅で伝言を書くことを不思議がって、「クレヨンのほうが本来の使用目的に適うのだから、書きやすいのでは?」という趣旨の発言をしていた。

書き置きにはドラマを感じるけど、自分が書き置きされた記憶がない。劇的な一言とか、悲しいメッセージとか、ちょっと憧れる。旅に出ますとか、わたしを探さないでとか。でも本当は、そんな書き置きをされたら、きっと立ち上がることもできないくらい落ち込むと思う。

それよりも、気の利いた一言を書き置きできるようになりたい。


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