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食って塗る

動画配信アプリの『SHOWROOM』の話を以前書いた。何年も前に開設されているのでご存知の方も多いと思うが『SHOWROOM』は、エンターテイメントの表舞台に出たい人たちがひしめくサイトだ。プロやセミプロ、アマチュアが混在し、多いときは700人くらいがライブ配信をしている。カタログのようにずらりと並んだアイコンをタップして、ROOMと呼ばれる配信チャンネルを見る。

配信者は、10代から30代くらいが中心だと思う。おしゃべりだけでなく、歌ったり踊ったり絵を描いたり、『自分』をアピールしているのだが、かなりの確率で男女関係なく見かけるのが「もぐもぐ配信」と「メイク配信」だ。つまり、何かを食べながら、メイクをしながら、というもの。正直、わたしはこれが苦手だ。俳優やタレント志望だから、今後は食レポの機会もあるだろうし、演技で美味しそう(あるいは不味そうに)に食べる必要もあるだろう。でも、彼・彼女たちの多くが、「油断している」ことが気持ち悪いのだ。もちろん、それを要求したり、楽しめる人が多いから、それを良しとしてやっているのだろうけれど。

わたし個人の価値観だから、押し付けるつもりはないのだが、ずいぶん不用心だなと感じる。多くの人は残念ながら、食べることも、メイクすることも、エンタメ化していない。ただの私生活の断片を見せているだけである。電車の中で食べたり、メイクしたりする人を見るのと同じ気分だ。「食べて塗って」は、「歌って踊って」とは次元が違う。若くてキレイだからって、舞台裏を見せすぎなんじゃないかと、ハラハラしてしまうのだ。

余談だが、アイコンに使われている写真は、ほとんどが宣材として撮られ、加工されたものだと思うのだが、わたしにはほとんど顔の見分けがつかない。美の概念が均一化、もしくは平均化していると感じる。しかし、ROOMに入って見ると、写真とは似ても似つかぬ人が配信していることも多い。個性豊かな、血の通った人がそこにいる。それが芸能界の奥深さ、ファン心理の複雑さを感じて、興味深いところでもある。




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