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パスワード

歯医者の待合室にはテレビがある。わが家には地上波を見ることのできるテレビがないから、ついつい見入ってしまう。

今朝は、遺品整理の時に困る「電子遺品」のことが話題になっていた。ユーザーが亡くなった時、遺されたパソコンやスマホのパスワードがわからないから、その中に残されたデータをどうすることもできない。だから遺族は、パスワードを解析する会社に依頼するのだという。その会社では、年間に500件以上の依頼があるらしい。多くの遺族は、その中に残された写真やメールを回収して欲しいのだという。その費用は24万円。その値段を知って諦める遺族がいるのも事実で、実際に半数は諦めているそうだ。

わたしは考えた。夫のパスワードはどうだろう。例えば夫が瀕死の状態になった時に「パスワードだけは教えといて」と言えるだろうか。いや、さすがにそれは無理。だったらどうするのがいいのか。

まずは「話し合う」ことが大事だろうが、このところまともに話をしていないことに気づいた。これでいきなり「死後のパスワード管理」の話でもしようものなら、関係はよろしくない方向へ転びそうだ。

先日までガルパンを繰り返し見ていた夫は、ここ数日は「未来のミライ」を繰り返し見ている。「すきくなーいーのー!」と絶叫するくんちゃんの声がわたしの思考を分断する。話しかけようにも、取り付く島もない。そしてわたしの脳内でも「ちがう。今はまだその時じゃない」と声がする。いっそ、24万円を準備しておいたほうがいいのかもしれない。



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