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きんつぎ

ムスメが雪崩れ込んできて、なにやらワーワー言う。「どうした。落ち着け」と話を聞いてみたら、こういう話だった。

『今日、友だちと一緒に自転車で帰ってて、その友だちの荷物が多くてカゴに入らないからって、「入れといてくれない?」って頼まれて、わたしの自転車のカゴに茶碗を3枚入れていたんだけど。
ちょっと目を逸らしたとき、前を走ってた友だちの前に車が出てきて、急ブレーキで止まった。自分はブレーキが間に合わず、友だちの自転車にぶつかって、自転車はダーンと倒れて、わたしは歩道にゴロゴロって転がった。で、茶碗3枚のうち、2枚が割れた』

なんで茶碗を3枚も持っていたのかというと、今日は学校の「文化部発表会」だったそうで、友だちは陶芸部が作った茶碗を買ったのだそうだ。

ムスメは「金継ぎで直せばいいかも」とかなんとか言ってしまったらしい。

先日、金継ぎキットを買ったので、わたしは発売元に訪ねて行った。そしていろいろと話を聞いたのだ。アトリエの人は「これはあくまでも簡易版で、初心者の方に金継ぎはこんな感じですよとお試ししてもらうためのキットなんです。本当に使えるようなものにするためには、プロに頼むか、自分で金継ぎ教室に通うことをお勧めします」と言っていた。

金継ぎ教室は、月額15,000円くらいする。材料費は別だ。しかも、半年以上通わないと、すべての工程を習得できないし、それを一通り習ったところで、プロのように技術を磨けるわけではない。

そのへんの陶器用の接着剤でくっつけたほうが早いし、むしろ新しいものを買って弁償したほうが簡単である。しかし、弁償しようにも、部活で作った茶碗だから、同じものはもう手に入らない。

友だちがラインで「その金継ぎとかいうやつで直してよ」と言ってきたらしい。「時間とお金がかかるから無理だ」と返事をしたら「じゃあ割り逃げじゃん」という返事が来て凹んでいた。その子は我が家にしてみれば親戚枠なので、まあ、きょうだい喧嘩みたいなもんだと思うのだが。

謝ったの?と聞いたら、「最初に謝った」という。「でも謝ってもどうにもならないことってあるよね」とムスメが言うと、そこへ間髪入れず、「謝って済むなら警察はいらんしな」とオットが口を挟む。おい。

さーて。どうするのか。金継ぎキットを与えてみるか…。


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