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地球に立つ

 疲れていた。でもぐっすりと眠れなかった。イライラしていて、むしょうに甘いものが食べたかった。そんな日々がしばらく続いていた。

 体が帯電しているプラスの電気を地球に流してしまえばいいよ、と教わった。地球はマイナス電極だから、冷蔵庫や洗濯機みたいにアースをすればいいという意味だ。これを「グラウンディング」とか「アーシング」というらしい。

 「裸足にならないと、病気になる」とアメリカの先住民族は言うそうだ。常に大地に触れていれば、体内の電気は放出されるのだが、ゴム底のスニーカーでは大地との繋がりを絶ってしまうから、体内の電気が放出されないのだ。アスファルトも地球と人間の繋がりを絶っている。

 常に不調なわたしは、「やってみれば?」と勧められた。海辺が理想的だが、最寄りの海岸まで車で20分はかかる。そこで「庭に立つ」ことにした。庭といっても、猫の額ほどで、コンクリートやアスファルトに囲まれた住宅街の、半年も手入れをしていないボウボウの草むらだ。果たしてこれが大地に立つということになるのかどうか。

 しかし、その不安を裏切って、効果は絶大だった。裸足で庭に立つと、たちまちスッとしたのだ。草むらのヨモギやタンポポやオオバコ、そして名前も知らない草をどんどん抜いて回った。ベースには、クローバーがびっしり生えているのだが、うじゃうじゃしているので、これも多少抜いた。玄関先にこんもりと緑色の山ができた。
ああ、気持ちいいじゃないの。ふー。靴や靴下を履かない開放感と、草を裸足で踏む懐かしさ。黄砂まみれの空気でうっすら曇っているものの、風が適度に冷えていて気持ち良かった。これが空気のキレイなところだったらどんなに素晴らしいだろうか。

それで心は安らいだ。おかげで、家族に優しくできて、気分良く家事が進み、お風呂上がりのさっぱりしたところで、心地よい疲労を感じた。んー。ちょっとだけ、横になるか。

noteの更新をするために、後で起きようと思った。これまでは、それができるわたしだった。ところが目が覚めたら夜はしらじらと明けていた。しまった!まるで出張に行く飛行機に乗り遅れた気分ではあるものの、次の瞬間「よく眠れたから、まあいいか」と思った。

これからは、noteを更新してから、庭に立つとしよう。

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