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黄砂

福岡は黄砂被害が甚大である。(↑写真は、サハラ砂漠だそうです)

福岡以外に住んだことがないので、他の地域がどうかはよくわからない。福岡は、とにかく春先から夏の終わりくらいまで、「空が真っ白」になる日が多い。以前、秋に東京へ行ったのだが、その時に一番印象深かったことは「空が青い」だった。福岡では真っ青な空を、もう何年も見ていない気がする。

屋根なしの駐車場だと、一晩で車体にうっすらと黄色い砂が積もる。きな粉餅のように、もさっとした感じでコーティングされるのだ。雨が降ると、それがまだらのシミになる。さらにそれが乾くとドロドロの模様ができる。洗車しても洗車しても、翌日にはドロドロだ。同じことが衣類に起こると考えると、怖くて洗濯物は外には干せない。

どこからやってくるのかは、だいたい察しがつく。いや、察しがつくと言ったのは言葉のあやで、揺るぎない事実だ。

大陸では今日も砂嵐がびゅうびゅうと吹き荒れているのだろうか。ちょっと想像してみる。あちらの国の人たちは、身にまとった衣服がすぐに砂だらけでザラザラになる。ザラザラした顔は、濡らしたタオルで拭う。マスクや布でぐるぐると顔を覆い、知った人とすれ違う時も、やあと片手を上げるか、会釈をするだけで、会話はしない。口を開くと砂がザクザクと舞い込んでくるからだ。

家に帰ると窓はぴっちりと閉じられて、外気が入らないようになっている。玄関ではかぶった砂を落とすためのブラシが常備してある。まずはブラシで砂を落とし、靴を脱ぐのがエチケットだ。帽子は玄関のフックにかけておく。帽子を忘れると、髪の中まで細かい粒子の砂が舞い込んでしまう。シャワーはめったに浴びない。水がないから砂漠なのだ。たっぷりの水が使えるわけがない。

本当のところはどうなんだろうか。わたしたちの住む町よりも、ずっと砂っぽいのかもしれないが、もっとクリーンに暮らす方法や道具を駆使しているのかもしれない。

ベランダの手すりも、窓ガラスも、どこもかしこも粉っぽい。障子の桟を指でなぞる姑のように、人差し指であちこちをなぞってみる。指先に、何千キロも離れた砂漠が乗っている。ふっと息を吹きかけると、砂漠がキラキラと光の中に舞い上がる。

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