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イタリア

知らない国のことはなんでもおもしろい。行ったこともないし、興味もなかったイタリア。ピザとパスタとジェラート。それ以外のイメージがなくてすみません。

公民館主催の『イタリア講座』。うちの近所のトラットリア(イタリアンレストラン)の奥さんが講師をやるらしい。3回講座で、3回目はワインとチーズを楽しむそうだ。面白そうなので行ってみることにした。

まず、イタリアの地図をちゃんと見たのは初めてだったことに気づく。首都のローマはもとより、ミラノやベネツィア、フィレンツェなど、聞いたことのある都市も、位置は知らなかった。これじゃあ外国の人が日本がどこにあるのか知らなくても不思議じゃない。ましてや九州が東京からどれくらい離れているのかなんて、知るはずもないなと思う。

トラットリアの奥さんは、ローマに留学していたらしく、チーズの勉強をしたそうだ。その後、日本ではチーズの第一人者、本間るみ子さんの会社「フェルミエ」で働き、「ラ・ロッサ」という桜葉で包んだチーズの開発にも関わった。なんかすごい人が近所に住んでいるのだな。

チーズにも旬があるらしい。動物の乳から作られるので、当然ながら、仔が生まれる春先から初夏が一番おいしいそうだ。ちょっと考えれば当然のようなことも、興味を持たずに生きていたら、一生知ることのない知識だ。

北部イタリアは平地が多く、牛の飼育がしやすいから、牛乳のチーズ。1つが40kgもある大型で、24ヶ月の熟成が基本。中部〜南部は山岳地域が多く、羊やヤギのチーズが多く、小ぶりなサイズで家庭でも作られ、熟成期間も短いそうだ。ヤギのチーズが「くさい」と感じるのは、管理が悪いからだと聞いた。傷みやすく、早く食べ切ることが大事らしい。

ナチュラルチーズは、食べる時にまずキッチンペーパーでチーズを拭いてから切り、食べきれない分は、キッチンペーパーの上に15分程度置いて、水分を逃してからラップで包み冷蔵庫にしまう。次に食べる時はラップ臭や冷蔵庫臭がするから、また表面をナイフでこすったりキッチンペーパーで拭いてから食べる。そして、『余ったチーズは決して捨てない』のが鉄則だそうだ。食べ切るのに時間がかかると思うなら、思い切って酒粕や、みりんで甘めにした味噌などに漬け込むのがよい。イタリアのおばあさん達は「もったいない」と、チーズを絶対に捨てずに保存するらしいが、古漬けのような味がするらしい。

チーズはイタリア人にとって、どういう位置づけなのかと受講のおじさんが聞いた。講師の答えは「お漬物」だった。必ず食卓にあって、ごはんにもお茶うけにも酒の肴にもなる。いつもあるものだから、食卓になかったら物足りないし、寂しい。

そんな風に愛されているチーズも、近年は後継者問題で、事業をたたむ中小の個人生産者が増えているらしく、重労働である手作業部分(乳を凝固させたものを布で濾す作業)は、移民の労働力に頼っているそうだ。

日本のチーズ専門店に並んでいるのは、そうした社会問題を孕んでいるのかと思うと、見る目も変わってくる。イタリア産と書かれたこのチーズを濾したのはアフリカ系の人なのかもしれない。安い賃金で重労働。それでも生きるためには働かなくてはならない。家には妻や子が待っていて…と、妄想が膨らむ。

チーズの他にも、「スリ」や「追い剥ぎ」の手口、昼食と昼寝の話、ポンペイの話、北部と南部の人柄の傾向など、知らなかったことをたくさん聞いた。イタリアの赤ちゃんは、乳歯が生え始めたら、歯固めのためにパルミジャーノレッジャーノのような硬いチーズをおしゃぶり代わりに与えられているそうだ。

おもしろーーーい。

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