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サッカー選手は世界に反抗する


 やりたいことならたくさんある

 今なら何でもできる気がする

 なのにやり方がわからない

 

 上記のうち1つでも当てはまっていたら、きみはBBBD(ビッグ・ボーイ・ビッグ・ドリーム)症候群の可能性がある。特にこれは若者に多く見られ、現状に納得せず、社会に対して何かしらの反抗心を持ち合わせる傾向にある。もちろん世間一般に言われる、現実を見ろ、安定を手に入れろ的な提言とは関わらず、時にはこういった人々が本当に世界をひっくり返してしまうほどのビックリ仰天なイノベーションをしでかしてしまうようなことだってある。何も悲観的になることはないのだ。

 そして、安心してほしい。こんな病理など存在しないし、この問題はまだ社会もあまり経験してない学生のほとんどが抱えている世界共通通貨、通過儀礼に過ぎない。

 80年代から90年代にかけて日本社会においても、「不良」「ヤンキー」などと目され、そういった若者の様子が漫画などで多く取り上げられた。彼らは世の中の全ての物に反逆することこそが自分たちの生きる証であるとした。やり方こそ世間一般には認められなかったかもしれないが、彼らなりの道があったりもするわけで、漫画で読んでいる分には筆者である僕も結構好きだったりもするのだ。

 そこまで過激でないにしても、人は日々の中で小さな物事に反抗しているはずだ。朝に時計のアラームが鳴っているのを聞こえていながらズルをして二度寝をすることかもしれないし、玄関先で新聞配達の契約を断っていることだってそのうちの1つと捉えてみてほしい。世界の全てを受け入れられるわけはないだろう。そうであるならば、僕だってこれらのことについて何も言う必要もない。

 

 ここで、1つの興味深い脳科学実験について紹介したい。

 これは「リベットの実験」と呼ばれるもので、いわゆる「人間に自由意志は存在するのか」という論争を巻き起こした。内容は実に単純なもので、被験者はサインを受け取ったらボタンを押すというものだった。一連の動作の間の脳波の動きを測定し、どのような反応を示すかを分析した。

 結果は、「動作」を始める約0.2秒前には「意識的な決定」が為されていることが確認された。しかし、更にそれ以前の約0.35秒前には、無意識的な反応を示す「準備電位」が現れていたのだ。つまり、僕たちが何かを意思決定するよりも早く、脳では既に決断が下されているというのだ。

 この実験は、「自由意志とは幻想である」ことの科学的根拠とされた。

 しかし、生理学者で医師のベンジャミン・リベットは、自由意志は中断の際に存在すると主張した。その後も、この手の実験は繰り返され、脳科学で自由意志を巡る「中断ゲーム」は1つの大きなテーマとなっている。


 次に、サッカー選手の例を見てみよう。

 物心がつく頃からサッカーをしていたA君は、今年でサッカー歴20年目だ。長年の経験と積み重ねてきた鍛錬によって、ボールは彼の足に吸い付くようで何でも意のままだ。試合中、彼はほとんど考えもせずにミスなくプレーをすることができる。

 ペナルティエリアを前にして、今A君はパスを受けて前を向いたところだ。目の前にいるのは、同じく20年目でディフェンダーのB君だ。それだけではない。2人は今までずっと同じチームにいて、学校への行き帰りやご飯を食べる時だっていつでも一緒だった。B君もまた、常に相手のパスコースを防ぎ、どこに立てば相手からボールが奪えるかをわかっていた。とりわけ、A君がこの時何を選択するかなんてことは、考えるほどでもなかった。

 A君には、既に最もゴールに近づけるパスコースが見えていた。あとはただその流れに任して身体を動かすだけでいい。しかし、A君は当初考えていたプレーを選択しない。「やっぱやーめた。」と言って、B君はいとも簡単に股下を抜かれてシュートを決められてしまう。

 おそらく、2人の間には膨大な量のデータの蓄積により最適解が見えていた。同じ最適解が。無意識のうちに。しかし、A君はそんな未来にさよならして、自分自身の身体に反抗する。プレーヤーである僕たちにとって、このような「中断ゲーム」は日常茶飯事のことだ。


 物事を否定的に捉えることはしばしば流れを止め、不具合を生じさせる。悲観的な人はあまり好まれないし、人の悪口ばかり言うやつも好きになれない。

 しかし、実はそんな否定的エネルギーこそ、われわれ人間が人間らしくいられる証だというのだ。僕たちは世界に反抗してまで生きることに意味を見い出す。

 11対11のあのフィールドでは、誰もが相手に予測されまいとして、時には味方、自分までをも騙し裏をかく。なんせゴールは2つに、ボールは1個しかない。そのためには、脳からの信号(それは脈々と受け継がれてきたDNAの羅列でもある)に抗う強い意志が発動されなければならない。

 宇宙の歴史、時の流れの絶対にも反抗し、自分が自分でいることに僕たち人間は生きている実感を味わう。それが何を意味し、一体全体どこへ向かっていくのかもわからず。

 サッカー選手なら言うだろう。

 「たとえ世界がどうなろうとそんなのは関係ない、サッカーを始めようじゃないか。」




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スペイン1部でプロサッカー選手になることを目指してます。 応援してくださいって言うのはダサいので、文章気に入ってくれたらスキか拡散お願いします! それ以外にも、仕事の話でも遊びの話でもお待ちしてます!