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Chapter3 嘘でも笑ってくれ


Instagram:@rikio_no_hankou
Twitter:@rikio_19



 ちょうど今日がエイプリールフールだということで、嘘特集にはぴったりだ。

 しかも、新元号が発表だということで新たな時代の象徴となる指針が示されるわけだが、これが嘘にならないといいなと思った。

 実のところ、僕自身今日からスペインでの挑戦が始まるということもあって、また、世間的にも新たな門出に胸騒ぎがしている日になることだろう。

 変化に翻弄されているばかりでなく、繰り返されるもの、変わらないものにもちゃんと目を向け、しっかりと腰を据えなければいけない。


 フットボールの夢、はじまります。


ーー


 1つ、嘘をつく時の心得を教えておこう。

 もしも、あなたが嘘も本当に、相手をうっかり信じ込ませたいと思うことがあるならば、何度も同じことを繰り返すことだ。

 今日、何気なしに黒塗りのセダンを街中で見かけたとしても、それが3回も続けば、何かあるのかと予感してしまう。

 人は、たとえそれぞれが何も意味をもたない些細なことであったとしても、それが繰り返されることで何か特別なことがあるのではないかと感じてしまう。これが「繰り返しによる効能」である。

 僕の友人は、この手を使って、チャットのやり取りに「スキ」という文句を100数回忍び込ませ、見事女の子を落とした。本人曰く、感覚の麻痺だそうだ。

 

 パターンやクリシェとも言われる「繰り返しによる効能」は、実に多くの現場で多用される。しかも、これはなかなかに高度なテクニックなのである。

 例えば、アリエン・ロッベンのドリブルはペナルティエリアの右端から開始され、左に切れ込んでミドルシュートに向かう。彼を知っている者であれば、テレビ越しに見ていても、そのパターンを予想することができるだろう。ああ、アレが来る。

 この場合、そのドリブルはどっちに転がってもスーパープレーになってしまう。

 予想通り左に切れ込んでそこからシュートを決めれば、やっぱりか!となり、あんなに読まれてるのによく抜けるよなと感心してしまう。一方で、裏を突いて右に切り返せば、やられた!と思うわけだ。

 これはまさに、繰り返しによってロッベンが作り出した芸術作品とも言えるだろう。ロッベンが右サイドでボールを持って相手にドリブルを仕掛けることは、特別に意味をもつことなのだ。

 この、特別な意味というのは、「象徴」という言葉に置き換えることができる。

 映像は、視聴者の頭の中で焼き増しされ、もはやその事象は良いとか悪いの尺度を超えて象徴となる。

 

 また、別の時代には、その時代の象徴となるものがあった。

 1961年に始まった「若大将シリーズ」における加山雄三は、まさしく時代の象徴である。

 銀座のすき焼き屋の息子で大学生の若大将は、男前でスポーツは万能、歌が上手く楽器だって何でもできる。ストーリーは毎度同じで、若大将とすみちゃん(星由里子)の恋模様に、同じ大学の青大将(田中邦衛)が横取りを図らい、あれやこれやとトラブルが続くが、最後は何もかも若大将がうまいことやり遂げてしまう。

 若大将が肩を落として帰ってくれば、おばあちゃんが肉まんを用意して待っている。ストーリー以外にも、シリーズにはこういった「お決まり」があり、そこには繰り返される風景がある。マンネリである。大いなるマンネリ。

 マンネリズムは、退屈だとか変わり映えしないなどと揶揄されるものとなってしまっているが、実はこれには象徴としての重要な役割がある。

 馴染みの風景には、嘘かもしれないが特別な感情、意味が上乗せされ、それが象徴となる。象徴と称すべき日常の風景は、実に美しい。地元に帰っていつもの顔に会えたときのような安心感を与えてくれる。

 また、同じ日々の繰り返しは、同じ日々の繰り返しの中に訪れる些細な変化を気づかせてくれる。繰り返しによって見慣れた風景のおかげで、見落としがちな詳細に目を向けることができるのだ。ロッベンがインサイドで右に切り替えしたぞ。

 変化に富み、時間の流れも速い今の時代には象徴など存在する余地もなくなってしまった。笑っていいともではなくなってしまった(あれも大いなるマンネリ)。

 繰り返されることを執拗に忌み嫌い、新しいことばかりを求める文化の中で、おそらく僕たちは多くのものを見落としていることだろう。

 もう少しだけ繰り返し、ちゃんと今ある時間に目を向けたいと思うのだ。

 飽きが来て退屈してしまったと思っていたものにも、詳細に目を向けられれば新しい発見があるのだ。

 4月1日に新しい元号が発表され、新しい時代の幕開けとなるのだろうか。その象徴は、嘘ではないだろうか。いやはや、嘘でも象徴となるものが日々を明るく照らしてくれるのだ。

 嘘でも笑ってくれ。

 

ーー

 

 嘘特集は今日で終わりです。

 とまあ、来週から何を書こうかはまだ決まっていなくて、自分もスペインに行ってしまうので何が書けるかちょっと分からない状態でもある。

 しかし、そんなことには左右されることもなく、腰を据えて自分のやるべきことやるだけ、嘘でも笑ってやりますよ。  


前回記事。


こんなんも作りました。



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