Instagram：@rikio_no_hankou
Twitter：@rikio_19

　アフリカの若者はとにかくお洒落だ。彼らの関心は街で周りの目を引くこと。

　flex, flexin'とは、見せびらかす、とか、カッコつける、転じてカッコいいのを褒めるときにも使うスラングだ。週末のお出かけのときには、みんなめちゃめちゃにカッコつけて自分を見せびらかす。

　これが、実はコミュニティの特徴を捉えているのではないかと思い、対照的な日本文化と比べてみると、自己表現に関する価値観についてはそれこそフットボールに通じるものがあった。そうやってフットボールを文化論として切り取ってみると、スポーツとコミュニティの関係性が更に深く見えてくるのだ。

　フットボールの夢、はじまります。

ーー

　フレキシン、フレキシン、今日はこの街で一番に目立つよう、出かける前には上から下までカッコつけて最高の自分をキメ込む。

　肌に合う色、アーモンドアイが映える、オーバーサイズで大きく見せる、靴下との組み合わせまでこだわる。今日は俺がキングなんだ、それで白と黒どっちがいい兄弟？

　アフリカの若者は、flexin'。キメている。

　街行きの装いには念入りを怠らない。彼らは単なるお洒落好きではなく、その服にも色の選択にも、そこには彼らの主張がある。

　着ている服、髪型、香水、街を見渡すと様々な装いを目の当たりにすることができ、実に個性に溢れている。おまけに、キメているのはファッションだけではない。クラブで見せるダンス、ストリートでの歩き方、話し方、全てが自分のスタイルでなくてはいけないのだ。

　彼らは自分が何者なのかを知り、それからどうすれば最高の自分を表現できるかを知っている。話はそれからだ。

　自分のスタイルがあり、それをもってしてメイクマネー、そう、これが俺らのやり方だ、兄弟。そして彼らは自分たちで得たものを地元に、すなわち仲間内に還元していく。こうしてコミュニティは成り立っている。

　そもそもこのような自己主張の価値観というのは、コミュニティによるところが大きい。

　南アフリカでは特に、その昔から多くの民族が入り乱れて共存していた。その中で、自分がどこの何者なのかを示すことは必然の成り行きだった。

　私は私でなくてはならず、あなたではないし、あなたとは違うことを表現しなくてはいけない。そして、あなたが人と違うからといって誰も責めたりはしない。

　他の民族のことを理解できないかもしれない。しかし、それでもいい、それが彼らのスタイルなら認めるのだ。

　これが、例えば日本に代表されるような島国の単一民族で集団主義的な風土の中では様子が違う。“みんなと同じ”でいなければいけない環境では、スタイルもシンプル、クリシェ、誰が見ても理解できるが大事である。

　しかし、この場合には“みんな同じ”の中で違いを見せなければいけない。これはこれで余程、自分の中に本物がなければ成し得ない自己表現なのだ。違いが分かる人。

　これは、しばしば起こりうる“競争”の場でもそう言えるかもしれない。まさしく、自分たちの縄張りを守るという自然の理、競争は常にコミュニティに属したものである。だからこそスポーツはコミュニティのものであり、自己表現と他者へのリスペクトで成り立っている。

　スワッグ、今日は女の子もみんな釘付け、あいつはまじでイケてるから負けてもしょうがない。だけど、次は負けないよ。俺は俺のスタイルさ。

　バロンドールを獲り合うメッシとロナウドもお互いにはそんなことを思っているのだろうか。彼らはまさに自分のスタイルを持っていて、そして同じように最高の自分を表現することができる。

　これは競争に勝とうなんて話ではない。

　ただ、アフリカの若者がフレックスに自分を見せびらかして街の真ん中を歩くような気分、そしてそこでのスゲー奴との出会い。

　これこそ、夢見るフットボールではないか。

ーー

　そもそも、見せびらかす、なんて日本には全く合わない言葉だなとは思った。しかし、自分を見せるにはそれだけ本当に自分のことを分かっていなければいけない。

　どのポジションもできます監督、役割もいろいろこなします、なんてフットボーラーもカッコいいけど、これが俺のスタイルだと言って魅せてくれる人もいい。

　1試合でのスプリント距離が重要だと言われている近年のフットボールの流れの中で、メッシが平均を下回っているというのも一つ面白いことなのだ。

　作中のイラストは全て、父によるものです↓

Instagram：@rikio_no_hankou
Twitter：@rikio_19　

#サッカー #FOOTBALL #フットボール #アフリカ #オシャレ #FLEX #フレックス #とは #記事 #コラム #日記 #メディア #エッセイ #月曜日