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みんなが知ってる話の話


Instagram:@rikio_no_hankou
Twitter:@rikio_19



 多様性の時代になってチャンスは溢れていると言われるようになったとはいえ、ついぞ日本にだけいて物事を考えると、いかに自分の視野が凝り固まっていたかと思い当たる。

 それは、お得意の無意識、思考停止の仕業である。人の言うことをよく聞いて、疑いもせず、みんなと同じ、みんなが知ってる話をしていれば間違わないだろうと思ってしまう。

 しかし、実際は何一つ正解などはなく、いつも何かが足りない。

 受験に備え、就職の対策をして、気がつけばローンの返済に追われる。いつも何かに囚われ、今ここを忘れる。

 しかし、今ここにあるものに目を向ければ、何が本物で偽物であるかに気がつくはずだ。それらは、みんな同じようで、実は取り返しのつかないほどに大きな違いなのである。


 フットボールの夢、はじまります。


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 中学の時にみんなして同じバッグを持つのが流行った。選択肢は、アウトドアかワッペかそれくらいしかなかった。誰がどのバッグを持っているかで、おおよそコミュニティが決められていた。

 同じ物を持つことで確かめられる同族意識、協調性、だがそこからはみ出すことは難しい。

 実際、僕たちに確約された選択肢はちょうどこのバッグと同じようにさほど多くはないように思える。6年、3年、3年、そして大学で4年、代わり映えのしない同じ色の教室に規則正しく並べられた椅子に机に座して先生の言うことをよく聞く。

 これによって正しく矯正された子どもたちは、言われたことを忠実に実行し、最適解を取り出すことに優れる。これは、うまく応用できればどの組織でどの役を当てられても平均点以上の実力を発揮できるということにつながる。

 しかし、下手をすればあなたは他のだれでもいい。大量生産された商品は、大量消費、そして廃棄。

 答えを当てた子が一等賞なこの学校教育では、優劣が生まれる。ここで上手くやっていくには簡単なことだ。良い成績を納めればいい。もしくは、そうそうにはみ出してしまうかだ。不良なんて呼ばないでくれ、君たちは悪くは、ない。

 しかし、毎朝同じ道を歩いて向かい、繰り返されるルーティンワークが悪いとも限らない。むしろ、何でも無いようなそういった一日が実は大事であると気づくことの方がよっぽど大事だと言いたい。継続は力になるのだ。

 例えば、同じ景色を毎日見てもいれば、きっとあなたはそのかすかな変化にも気がつくほど感覚が研ぎ澄まされるはずだ。

 その僅かな差は、取り返しもつかないほどに大きな違いなのである。

 日本ではアマチュアからプロへの移行は、1つの大きな変化である。しかし、大学というアマチュアカテゴリーでプレーをしている者と、同世代でプロクラブの中でプレーをしている者との間にどれだけの実力差があるだろうか。

 そして、やはり多くの選手は、自分がプロでプレーしているあいつと比べて何を見劣りするだろうかと、寝る前の布団で天井を見上げているのだ。

 しかし、これは大きな違いなのである。

 もちろん、プロになれれば成功だなどというほど簡単な話ではない。

 みんな同じ、その中で違いを見せることができるのが本物である。

 目を瞑ってもう一度考えて欲しい。何でもない一日に、自分だけがこだわれるデティールを見つけただろうか。それは、具体で、詳細に、実行されるべきことである。

 同じバッグを背負っていた時にも、分かる人には分かる、それくらいのつもりで周りとの差にこだわっていたはずだ。それは、必ず同じ日々を生きている者なら気がつく。

 どうせ同じ、と手を上げてしまえばそれで終わりだ。それならば、思いっきりはみ出してみろ。それが覚悟というものだ。少なくとも、日本における育成環境でそれは覚悟と呼ばれるほどにハードルが高い。

 どちらにせよ、やり方の話だ。はみ出そうと、その中で差を生み出そうと、それには継続されるだけの長い時間と、ただただ周囲を驚かせる圧倒的な実力が必要になる。

 そして、ユースにはおおよそ、それだけの時間が用意されているのだ。

 その時間の流れの中であなたが見たもの、聞いたものは、おそらくあなたが思うよりも強く細胞に刻み込まれることになる。まるで、鼻の上についているホクロのように。目には見えなくても、ふと汗を拭く仕草をするような時などにそれを思い出すのだ。

 その度に、思い出すことになる。

 その時の、感情。そこに誰がいたのか。

 その時に思い出される音楽も、読み漁っていた本の一小節も、せめて本物であってほしいと思う。


ーー

 大人は本物を作らなければいけない。

 手に乗せて重さを感じることのできる実体で、ものづくりをしなければいけない。それを見たり聞いたりする若者が、子供がいるのだ。

 そんな大それたことではなくとも、本物であることも日常にしか落ちていない。

 空の向こうに思いを馳せるより、地べたに落ちてる金を探す、だ。

 

イラストが気に入った方はこちらから。


そして、第2弾!父の2作目が出版されました!今回は様々な殺し屋の話。ストーリーテリングで面白い内容となっております。

 


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