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ふたりぶん 〜暮らしのこと〜

 初めて彼に手料理を作った日。美味しい美味しいと喜んでもらえた思い出よりも、「たぶん8人分あるね」という一言の方が脳裏に強く焼き付いている。

 独身時代は366日外食で基本自炊はせず。実家でもキッチンは母の聖域で洗い物以外に手を出さず、大人になった。とは言え筋金入りの食道楽で、パーティガールでもあったので、大人数を迎えて(60人前とか)たびたび料理することはあったのだが。

 ふたりぶん。作ったことがなかった。

 そこで私が最初にやったこと。お盆とお皿を揃えることにした。

 枠を決めて素材で埋めていくやり方は性にあっていたようだ。秤も計量カップも使わない目分量料理家の私でも器が目安になって、意外とすぐにふたりぶん手料理の具合がつかめてきた。

 そして続けてみて気づくこと。ふたりぶんの手料理には連続する日常がある。レタスを千切っても、2~3枚で済む。納豆のパックは2人で半分こでちょうどいい。残りはどうするの、明日食べればいいのよ。晩酌で楽しんだお刺身を、お腹いっぱいだから残りは漬けにして朝ごはんにしようと彼に言うとき、明日の朝も彼と一緒に食事をすることを疑わない自分がいる。そう、明日もここでごはんを食べるのよ。

 残ったお刺身を酔った勢いで、もう一切二切ぺろりとつまんでしまいたい欲求をグッと堪えて、そのままベッドへ突っ伏したい眠気とたたかいながら、サッと漬けておく。翌朝の勝利感たるや!  美味しい! よくやった自分! よくぞ食べ残した自分! 頑張って漬けてくれてありがとう自分! 昨夜の私の英断が、翌朝の私を救ってくれる。

 毎日がぶつ切れで、その日その日をめいいっぱい生きてる感じも大好きだったけど。冷蔵庫に残った食材でアレコレごはんをつくったり、明日も明後日もおなじひととごはんを食べたり。連続する日常も愛おしい。

 なんだか不良少女が家族愛に目覚めたような長文になってしまったけど、いつか料理なんかしたくな~い気持ちになったときのため、お守り替わりの覚書です。


※写真はおうちでつくっている糖質制限ごはんの記録(2016年夏~)のためのinstagram『riko_Liwcabtable』から。インスタではレシピを書いてないから、noteでまとめてみようか検討中。

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