反ワクチンの歴史を読み解くベストセラー『反ワクチン運動の真実』

エビデンスなき薬害説、ワクチンも薬も否定する医師、訴訟、けいれん、偏向報道。知らなかった……いまの日本と同じ過去あなたの不安をやさしく包むフェイクニュースに一生モノの「免疫」をつける1冊!

世界の反ワクチン運動の歴史を綴る”Deadly Choices —How the Anti-Vaccine Movement Threatens Us All”待望の翻訳、『反ワクチン運動の真実——死に至る選択』が完成しました。帯を書いています。

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『反ワクチン運動の真実』というやや過激なメインタイトルは、キーワード検索でヒットすることを狙ったものでしょう。訳書のサブタイトル「死に至る選択」が、原著のタイトルに添ったもの。原書のサブタイトルは「反ワクチン運動は私たちをどうやって脅すのか」で、この本の核心となる部分です。科学的・合理的な根拠のない反ワクチン運動がどのように組織され、人々を感化していくのかが詳しく書かれています。

表紙に用いられたこれまた過激な写真は、私の勝手な予測ではアイルランドの反ワクチン団体R.E.G.R.E.Tを意識したもの。アイルランドでは、この団体に対して政府が国を挙げた対策を取っています。

筆者のポール・オフィットは、米CDCの小児科医で「ワクチン教の教祖」と揶揄されることもあるワクチン啓蒙家。ロタワクチンの開発者の1人としても知られています。2011年に書かれたこの本や2008年に書かれた『自閉症の偽預言者たち(Autism's False Prophets: Bad Science, Risky Medicine, and the Search for a Cure)』により、一躍ベストセラー作家となりました。一方で、激しい反ワクチン運動と陰謀論者たちの攻撃対象ともなっており、かのアンドリュー・ウェイクフィールド(後述)からも薬害をねつ造したと表現したことに対し訴訟を起こされ、少額で和解しています。

本書を読んで驚くのは、どのワクチンに対する反対運動も、どの国で起きた反ワクチン運動も、現在の日本で起きている反子宮頸がんワクチン運動とそっくりなこと。

拙著『10万個の子宮』の第3章【子宮頸がん ワクチン問題の 社会学】「ウェイクフィールド事件」と反知性主義」でも触れていますが、効果と安全性が確認され、広く使用されているどのワクチンにも、神経障害、学習障害、不妊や自閉症などを起こすとして濡れ衣をかぶせられた過去がありました。

「Vaccine(ワクチン)」という言葉の語源は「牛の」という意味です。病気の牛から作った人類初のワクチン種痘に関するデマは「接種すると牛になる」だったと聞けば、「昔の人は非科学的だ」と笑う人もいるでしょう。

しかし、1970年代に始まるジフテリア・破傷風・百日咳を防ぐDTPワクチンは、ワクチンを打ったが最後、治ることのない脳損傷を起こし、痙攣や精神遅延を引き起こすと言われ、激しい反ワクチン運動の標的となっていました。

「顔は蒼白で唇は青ざめていました。名前を呼ぶとまぶたがぴくぴくとして、白目をむいて、頭が肩のほうに落ちました。(中略)それから、日を追って、週を追って症状は悪化していきました。アルファベットも数もわからなくなり、暗記していたカードも思い出せなくなりました」

これは子宮頸がんワクチンを接種してから痙攣するようになり、英単語が覚えられず、計算が遅くなったという女の子の話ではありません。『反ワクチン運動の真実』に登場する、DTPワクチンをわが子に打たせたという親が1982年に語った言葉です。

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反ワクチンの歴史を読み解くベストセラー『反ワクチン運動の真実』

村中璃子 Riko Muranaka

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