正露丸のなぞ。アニサキスの治療薬?発がん性?【大幸薬品に取材しています】

最近、【アニサキスに正露丸】というニュースが出てネットで話題になった。

タイトルは目を引くが、「主要成分活用の特許」とはいったい何を意味するのか分からないし、特許が取得されたというのも2014年のことなのに、なぜ今これがニュースなのかも分からない。「アニサキス」という、この時期毎年盛り上がるキーワードに絡めての宣伝記事なのかなと邪推してしまう。

かくいう私も正露丸の宣伝記事を書いたことがある。

子どものサッカークラブ向け媒体「サカイク」の企画で、子どもの腹痛に絡めて書いて欲しいとのオーダーだったので、いろいろ考えてこんな記事になった。

ポイントはこの部分。

病院にも行かずに、子どもに市販薬を使っても大丈夫なのでしょうか?

「市販薬には、腸の動きを『止める』ものと腸の動きを『調節する』ものの2種類があります。熱や嘔吐がある場合、原因は感染と考えてほぼ間違いないと思いますが、注意したいのは、下痢止めにも吐き気止めにも病原体を殺したり、毒素をなくしたりする効果はないということ。感染症の場合、原因となっている病原体や毒素は外に出て行ってもらう必要がありますが、腸の動きを止めてしまう薬は、病原体や毒素を体に留めるので感染症にはNGです。一方、腸の動きを『調節する』タイプの薬は原因が何であっても安心して使えます」

「子どもにも使える、腸の働きを調整するタイプ」の市販薬の代表が正露丸だという流れだ。

ここでもう一度、冒頭の【アニサキスに正露丸】の記事をクリックして見て欲しい。

タイトルから受ける印象とは異なり、アニサキスによる「痛み」に正露丸が効いたという内容で、正露丸でアニサキスが治療できるという話ではない。アニサキスという異物が消化管に入ってくるとそれを排除しようと消化管が動くが、その動きを正露丸が整えるので「一時的」に痛みが和らぐという話ではないのだろうか。

本当に正露丸がアニサキスの動きを止めたから痛みが止まるのだというのであれば、まずはアニサキスに正露丸をふりかけて死ぬかどうか実験してみればよい。たった2例の症例報告だけで取得できてしまう「主要成分活用の特許」とはどんなものなのかも知りたい。

私が記事中で「正露丸」の名に触れたのは、実はこれが初めてではない。週刊プレイボーイ掲載の市販薬についての記事が最初だ。

この記事はよく読まれたが、正露丸以外にも具体的な市販薬の名前を挙げ、一般読者にも役立つ記事だと思うので、大事な部分をここに抜粋しておこうと思う。

市販薬は飲まないほうが安全なの?

一概には言えませんが、市販薬にもいろいろなものがあるので自己判断で使用するには注意が必要です。腸のぜん動運動を「止める」成分が入っている市販薬には「ストッパ」「エクトール赤玉」「トメダインコーワ」などがあり、これは過敏性腸症候群には使用できますが、感染症が否定できない時に使用してはいけません。例えば、「トメダインコーワ」に入っているロぺラミドという成分は、病院での処方薬にも入っている成分で下痢を止めるのに即効性があります。ただし、処方薬と市販薬では有効成分の量が違います。

一方、「正露丸」は、過剰になっている腸のぜん動運動を「止める」のではなく「調整する」作用や、腸内の水分量を調節する作用などがあるのでノロを始めとした感染症を含むすべての下痢に安心して使用できます。「ワカ末止瀉薬(ししゃく)錠」も腸の運動を調整する成分しか入っていないので同様です。

また、処方薬としても出されることもある「ビオフェルミン」で注意したいのは「ビオフェルミン下痢止め」と「新ビオフェルミンS」との違い。前者はロートエキスという腸のぜん動運動を「止める」働きをする成分が入っているので、感染症を疑う時には飲むべきでありません。

一方、「新ビオフェルミンS」のほうは、ビフィズス菌などの腸内細菌を補うことで腸内環境を整えるものですので、どんな下痢の時に飲んでも構いません。

この記事を書いたとき、正露丸を製造する大幸薬品に詳細な取材をした。

医者で病気や薬の話を書く人は山ほどいるが、大幸薬品に正露丸の取材をしたことのある医者は私くらいだろう。

この時の取材がとても興味深く勉強にもなったので、今日は「正露丸に本発がん性はないのか?」という古典的な問いへの解を含め、正露丸や市販薬について、今まで書かなかったことを書きたいと思う。

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正露丸のなぞ。アニサキスの治療薬?発がん性?【大幸薬品に取材しています】

村中璃子 Riko Muranaka

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