今回だけ両論併記なぜしない?子宮頸がんワクチン薬害マウス実験論文撤回報道

日本人グループが書いた、子宮頸がんワクチンの毒性をマウス実験で示したというScientific Reportsの論文が撤回された。撤回には17か月がかかった。個人の書き手である私がこのニュースの初報となったが、報道機関にも呼び掛けたところ、毎日新聞、朝日新聞、産経新聞、共同通信が報じた。

日本の記者には英語の論文が読める人がほとんどいない。公共放送だろうが大手新聞だろうが、いちいち翻訳に出してから書くので報道が遅れる。今回は短い文章で私がウェブに翻訳を提供したが、もう少し語学力もつけて欲しいものだと思う。これだけで日本の報道機関は、科学の問題を論じる世界の流れから取り残されている。

実は、2015年12月17 日にWHOが日本を名指し批判して子宮頸がんワクチンの安全声明を発表した際も、私個人がWedge inifinityで記事を発表し、報道を呼びかけた。その時は、WHOの声明から6日後、私の記事から2日後の12月23日に共同通信発電子版の「毎日新聞」と「日本経済新聞」が報じたのが一番早い報道だった。それ以外の報道機関は筆者の知る限り、本紙はみなクリスマスイブの24日朝刊、つまり発表から1週間後の初報だった。

今回の論文撤回を私が速報したのが5月11日。毎日新聞は1日遅れの12日、その他の新聞は13日には報じていることを考えれば、メディアの反応は格段に良くなったと言える。

私がひとりで声を上げ続けるのにも限界がある。メディアがニュースとして報じたことは評価したいし、日本の子宮頸がんワクチン報道も少しずつではあるが変わってきたことを心から喜びたいと思う。

しかし問題もある。両論併記を理由に子宮頸がんワクチンに関する誤った世論を作ってきたの日本メディアの多くが、今回のニュースに関しては両論併記にしていないことだ。

もっとも典型的なのは、朝日新聞だ。

「撤回は一方的。ワクチンの投与量は薬の安全性の試験の基準に基づいている。百日ぜき毒素も血液脳関門を一過性で開くために使っているだけ。残念だ」と話している」と、論文の責任著者である中島利博教授の言い訳にもならないコメントを掲載した。

産経新聞はScientific Reports側のウェブに掲載された評価は拾っているが、「事前の評価を受けて掲載されたのに、一方的に撤回された。不正があるわけでないのに納得できない。これでは科学が成り立たなくなる」という中島氏のコメントを掲載するなど、論文を撤回された当人側だけに取材して記事を執筆している。

撤回された本人たちは「一方的に撤回」と言っているかもしれないが、この報道こそがまさに「一方的」ではないのか。

海外の有名科学誌「サイエンス」誌の記事はどうか。
http://www.sciencemag.org/news/2018/05/journal-retracts-paper-claiming-neurological-damage-hpv-vaccine

Scientific Reportsはもちろんのこと、論文の筆頭著者の中島氏にも、論文の撤回を求めていた北海道大学のシャロン・ハンレー氏やアントワープ大学のAlex Voster氏にも、私にも取材した上で記事を執筆している。私の記事や他社の報道を見ながら書いただけとしか思えない記事と比較すると、格段の差がある。

英語ができないことを言い訳にするのはおかしい。私に取材するのは簡単だし、北大のシャロン・ハンレー氏はLancet誌にも日本の子宮頸がんワクチンの論文を発表した研究者で、日本語もネイティブ並みの完璧さであることはこの問題を取材してきた記者であれば知っているはずだ。

毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180513/k00/00m/040/024000c
朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASL5D7J3ZL5DULBJ00D.html
共同通信
https://this.kiji.is/368360647408518241
産経新聞
https://www.sankei.com/life/news/180513/lif1805130042-n1.html

今回のニュースを日本の報道機関としては最初に報じた毎日新聞はどうか。

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村中璃子 Riko Muranaka

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