東京中日新聞が示した「子宮頸がんワクチン問題」の新しい両論併記の形

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子宮頸がんワクチン問題についての報道は両論併記されがちである。

しかし、子宮頸がんワクチン問題の科学的な決着はついている。ついていないのは、社会的な決着だけである。

今日の東京中日新聞は、子宮頸がんワクチン問題について、新しい両論併記の形を提示した。

ぱっと見は、いつもの両論併記。科学っぽさを漂わせる科学的根拠のない主張をする人も取り上げられている。初めてこの問題に触れる人の中には、誰の意見を信頼したらいいのか戸惑う人もいるだろう。専門家の肩書だけ見ると、まるで小児科医と産婦人科医が対立しているかのようにも読める。

しかし、「当事者」は、いつものワクチンのせいで具合が悪くなったという女性ではなく、がんになって苦しんでいる女性だ。

ワクチンが使われないことに心を痛める人が2名、ワクチンに反対する人が1名の構成にもなっている。

とはいえ、この問題をよく知らない人が読めばやはりまだよく分からないということになるだろう。よって今日は、記事に沿った簡単な解説だけはしておこうと思う。

「諸症状の原因がワクチンの副反応かというと、科学的な因果関係の証明はありません」(日本産婦人科医会 木下勝之会長)←国内外の専門家の常識です。WHOも同じ評価を下し、その安全性声明の中で日本の状況を3度にわたって名指し批判しています。

「厚労省の専門部会は因果関係を否定し、ストレスや不安が引き金となる「機能性身体症状」(心身の反応)と結論づけましたが、原因が分からないからといって「心の問題」と片付けるのは乱暴」(元日本小児科学会会長 横田俊平)←心の問題と片付けるのは乱暴だとする科学的な根拠はありません。また機能性身体症状(身体表現性障害)は、心の問題ではなく、心がきっかけとなった身体の病気です。

「(子宮頸がんワクチンを接種後に症状を訴えている人たちの)医療費は高額ですが、一時的な効果があり、免疫異常を示唆しています。ただし多くは数カ月で再発し、治療の困難さを感じています」(元日本小児科学会会長 横田俊平)←ワクチンとの因果関係の証明もない症状に対し、治療につながるというエビデンスもないのに高額な治療を用いているということです。点滴や手術などの「やってもらった感」の強い治療で一時的によくなることも、機能性身体症状の特徴です。

横田俊平(元日本小児科学会会長)が日本小児科学会の中でどうような位置づけにあるかについては、2016年に札幌で開催された日本小児科学会の総会に関する以下の記事を読んで欲しい。少し古い記事だが、横田氏の主張も、日本の小児科医界における横田氏の位置づけも当時から変わっていない。

「若い女性が信頼性の乏しい情報の影響で接種を控えている現状は悲劇的です。ワクチンで守れるはずの命と健康を守り、子宮を失うことなく赤ちゃんを産んでほしい。それが産婦人科の医師たちの願いです」(日本産婦人科医会 木下勝之会長)

この願いが産婦人科医だけでなく、小児科医の願いでもあることは私から補足するまでもないだろう。

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村中璃子 Riko Muranaka

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