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高校で『10万個の子宮』を1年かけて読むゼミ

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2018年5月20日、茨城県水戸で行われた子宮頸がんワクチンに関する市民公開講座について、地元茨城新聞の成田記者がポイントをぎゅっとまとめたいい記事を書いてくれたのでまずはご紹介します。

実は、ジョン・マドックス賞受賞からの1年ほどの期間、いくつものテレビ局が私の密着取材をしていましたが、ひとつも放送に至ったものはありませんでした。新聞も取材には来ますが、いつも記事になるのは地方紙だけで、全国紙はまだ私のコメントや寄稿を掲載することを控えているのは残念なことです。

講演前の短い時間、『10万個の子宮』をゼミの教材にしているという県内の高校の1年生の女子生徒と話をすることができました。子宮頸がんワクチンを定期接種として無料で接種できる、最後の学年の子どもたちです。

この高校は文科省からSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受けている進学校で、ゼミの指導に当たるのは理科の先生、子どもたちも全員理系志望です。毎週1コマ50分。1年かけて子宮頸がんワクチン問題について書いた私の著書『10万個の子宮』を読み、ワクチンやがんのことだけでなく、科学情報の受け止め方や物の見方を勉強していきます。

「本は難しくなかった?」と聞くと、名古屋スタディや遺伝子、マウス実験などの部分は少し難しかったけれど理解できたという返事が返ってきました。名古屋スタディとは、名古屋に住んでいる若い女性7万人を対象にした日本唯一の人口当たりの症状の発症率の分かる貴重な調査で、結果は「ワクチンとけいれんや慢性痛などの症状と子宮頸がんワクチンとの間に因果関係はない」というものでいた。遺伝子やマウス実験というのは、厚労省が指定した研究者が薬害をほのめかすような誤った発表を行って社会に衝撃を与えたが、科学的に検証すれば遺伝子レベルでもマウス実験でも子宮頸がんワクチンの危険性などまったく示せていないと言えるという内容のものです。

詳しくは本を読んでいただければと思いますが、つまり『10万個の子宮』は、中学校を卒業した、筋道を立てて物事を考えることのできる子どもたちには十分に理解できる内容であるということです。

子どもたちにこの本のメッセージが届いているというのは、本当に嬉しい話です。

印象深かったのは、生徒全員が「子宮頸がんワクチンの安全性に問題がないということはよく分かりましたが、じゃあ打ちたいか聞かれるとまだ迷います」と答えたことです。

「打ちたい」と答えた子どもは1人もいませんでした。

生徒さんの中には、子宮頸がんワクチンを打っていないのに、子宮頸がんワクチンを打った子に起きるという症状の1つが出るという子もいました。実はお父様が医者で接種を勧めてはいるが、もしもワクチンを打って別の症状が出てきたら、やっぱりワクチンのせいだと思ってしまいそうなので接種をためらっているという話でした。

講演の後、ゼミの先生から「生徒はとても緊張していたようですが、いい表情をしていました」とご連絡をいただきました。

私の方こそ、幼さを残しながらも聡明で繊細な子どもたちを前に緊張しましたが、『10万個の子宮』を教材に、1年かけて子どもたちがどのように成長していくのか楽しみです。

ネットだけでなく、テレビにも新聞にも、ただのニュースに見えていたずらに不安を煽るメッセージを含む科学や医療の情報があふれています。

講演では、不安の大きさと実際のリスクは比例しないことや、自分の肌感覚というものがいかに当てにならないかということにも触れました。

子どもたちには信頼できる情報やメッセージをしっかりとかぎ分け、自分の頭を使って判断できる大人になって欲しいと切に願います。

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