大切だからこそ

君は大切なあの娘を手放した。

「どうして?何故?あんなに二人仲良く過ごしてたじゃないか!何故!何故!手放してしまうんだ!大切な家族だったんじゃないのか?君が大切に育ててきたんじゃないのか?」

君は泣きそうな顔で微笑んで「大切だからこそなんだよ」と一人言った。

君があの娘を手放した理由を知ったのは、

君がこの世から居なくなってからのことだった。

自分の余命を知った君は…あの娘の事を思って…君は悲しみを殺して、あの娘の未来を選んだんだね。

僕は、一人、「僕だって、君を大切に思ってたんだよ。大切だからこそ、僕にくらいは、理由を言って欲しかった。君の気持ちも知らないまま、君が死んでしまうまで、君と逢うことを拒んでしまったじゃないか。」空に向かって呟く。

さーっと風が吹き、その風が通りすぎる間際、君の声が聞こえたような気がした。

〃「君も大切だからこそなんだよ。」〃

僕も君にとって大切な存在だってことかい…。

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