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for four years.

東京でバリバリに働いていたが結婚を機に地方へ移住した親友が、約半年ぶりに「今から会える?」と連絡が来たので颯爽東京へ向かった。「どこで」と言わなくても会うのは東京、というのはお互いの不文律だ。

彼女の誘いはいつも唐突でヨーロピアンスタイルなわけだけど、お互いのタイミングが合えば会う、というスタイルは非常に心地が良い。彼女と一ヶ月以上前に約束したことが達成されたことは一度もない。お互いがお互いの時間を生き、その波長が合えばいつでも会いにいく。その緩いようで強固な関係を紡いでもうすぐ4年になる。

彼女が東京にいたころは、それこそ高い頻度で会っていたけれど今では一年に一度会えるか会えないくらいだ。いつもは居酒屋で上司があーだこーだ話したり、人生のなんたるかを話すわけだが、今日は珍しくカフェで待ち合わせだった。それもそう、彼女は妊娠五ヶ月目を迎えている。

今年の初めには全く予想のできなかった今の彼女を見ているとまるで小説を読んでいるような感覚になる。いつだってそう、彼女は僕の想像の斜め上の人生を歩んでいて、その山の天気のような変化についていくことができない。「私もこんな感じで人生を歩むとは思ってなかった、と今年もまた思いながら年末を迎える。」と笑いながら話していた。

彼女から見ても僕自身はきっとそう映っているのかもしれない。僕もいつも同じ場所にはいない。場所というのは物理的な意味以上に考え方とか、コミュニティーとか、そういうメタ的な意味を含んでいる。

お互いに常に絶えず変化を繰り返している二人が、なぜ今も変わらず会話ができるのか、というのに僕は一応の決着をつけている。それは「お互いに変わり続けることが変わらずあり続ける。」からだと思っている。お互いがお互いの小説を読んでその続きを楽しみにしているのだ。(少なくとも僕は、そう思っている。)

今年僕は、彼女と初めて会った歳になった。

彼女は、東京を離れ地方に暮らしている。僕は、まだ東京に残ってる。

個別の二人の物語は時々こうして緩やかに交わり続ける。

彼女が東京を離れてしまった時は少し寂しかったけど、僕はもう少しだけ、この街で頑張ってみるよ。







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