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#36 ADHDの彼とどう向き合ったか 【マッチングアプリで出会ったモラハラ婚約者と別れた話】

カミングアウトされた時の感想


初めてADHDのことをカミングアウトされたのは、会うのが4回目となる日の夜で、その時の私の感想はこうだった。

「うっわ、生きにくそう。毎日お疲れ様です」だった。良いとか悪いとか、受け入れられるかどうかって話じゃなくて、ただただ「そうなのね」「大変だね」という感想。
そして、ちゃんとできない自分を責めてしまいそうだな、とつらい気持ちにもなった。
#22より引用)


「発達障害だったんだぁ…へー…」と引くわけでもなく、「みんなそうじゃない?」と向き合わないわけでもなく、症状を聞いて「今まで大変だったんだね」と慮った。

他の人と同じようにできない自分を責めたり、人になじられて死にたくなった過去もあるんだろうなぁ…。血のにじむような努力をして、今の仕事でのし上がって来たんだろうなぁ…。
と、わんこくんがこれまで味わってきた苦労を一気に感じ取ってしまい、何とも言えない気持ちになったり、彼をリスペクトする気持ちが少し大きくなったりした。

発達障害の動画を観まくった


カミングアウトの翌日から、私は貪るように発達障害に関する動画を観た。Kindleで書籍を数冊読んだ。
・そもそも発達障害って何なのか?
・脳に何が起きているのか?
・当事者はどんなことに困っているのか?
・周りにはどんな影響があるのか?
を知りたかったから。

彼と話が通じるよう最低限の知識を身につけておきたかったというのもあるけれど、発達障害への知識欲が強かったと思う。多い日は、テレワーク中に50本以上の動画を1.5倍速で聞いていたよ。
しばらくしてから、私はわんこくんにこのことを伝えた。

 実は、あれから、結構な量の発達障害の動画を観たんだよね。あと、本も何冊か。勉強したってレベルではなくて、概要に触れた程度だけど…。

わんこ え、そうだったの!? どんな動画を観たの?

 えっと、専門医の解説動画、ADHD本人が悩みを語る動画、ADHD夫と奥さんの日常動画()とかかなぁ。わんこくんがどういうことで困るのか、よく分かったよ。

わんこ そっかぁ…。すごくびっくりしたぁ…。リンちゃんがADHDにそんなに興味を持ってくれてるなんて、知らなかった。うれしい。昔付き合った人たちはまったく興味を持ってくれなかったから…。

 わんこくんとADHDは切り離せない。だから、わんこくん自身を知るのと同じくらい、ADHDのことを知るのは大事なことかなと思ったんだよね。少しでも知識があれば、困った時に心の準備もしやすいし。



わんこくんはかなりうれしかったようで、言葉を詰まらせたり、気持ちをどう表現していいか分からない顔をしたりして、落ち着かなかった。最後に、たまらないといった様子で私を抱きしめた。

※ADHD夫と奥さんの日常動画
それはこちら。とことん明るいお二人。


ADHDなんてどうでもよかった


なので、普段は、彼がADHDだってことはほぼ忘れていた(「今夜もADHDはよく喋るなー!笑」と愛をもっていじることはあったけど)。そして、「この行動は、ADHDだからなのかな」「ADHDだからできないのかな」というように、彼の一挙一動をADHDに紐づけて考えたりもしなかった。

私がADHDのことを思い出すのは、なんでそうなっちゃうの!?なことが起きて、彼が「言い訳にしちゃいけないけど、ADHDのせいでもある…」と申し訳なさそうに言ってきた時だけだ。
すると、私は「あら、そうなのか。じゃあ普通に考えても良い答えは出せないね」と立ち止まり、ADHDについて調べたり、本人に聞いたりして、「ここまでは仕方ないのか。でも、ここからは頑張ってほしいなぁ」「こういう時にこういう発想になっちゃうのか。であれば、私がこう言えば伝わりやすかったのかも」と考えを整理する。

言わば、ADHDは、困ったときにだけ登場する彼の取扱説明書だった。ADHDを調べれば、何かしらのヒントを得ることができた。


友人には話したくなかった


私は、数名の女友達に「わんこくん、ADHDなんだって~」とサラリと話したが、彼女たちの反応は私の期待するものではなかったので、複雑な気持ちになることが多かった。


■「気質だからねぇ…」

彼女たちは「発達障害」「ADHD」という言葉を避けたがった。レッテルを貼っているようで言いたくなかったみたい。替わりに「気質」というふわっとした言葉をよく使った。

「気質だからねぇ…。私も時間を守れないとかよくあるし…。難しい問題だよね💦💦💦」

「大小あれど全員に当てはまることだから、『障害』って言葉で括るのは差別。『気質』って言おうよ。障害として扱うべきかどうかは難しい問題だよ」と言いたいのだろうなー。

普通の人(あえてこの言葉を使う)が頑張ったら直せることでも、発達障害を持つ人はものすごーーく頑張り続けてもなぜか直せない。だから、医療的観点で名称(障害名)がつくのだと私は思う。「大小あれど、みんな同じ人間。わけちゃダメ」と考える人の方が、発達障害を強く意識している。私はそっちの方が差別意識を感じるけどなぁ。

わんこ ADHDは病気だよ。障害だよ。治せないんだよ。苦しいんだよ。「気質」なんて柔らかい言葉できれいにまとめようとする人がいるけど、そんなことをしたって誰の心も救われない。「普通の人たち」が悪者になりたくないだけだ。自己満足だ。


私は、どちらかと言うと彼の意見に賛成だった。
もしかしたら、「女友達の考えが合ってて、わんこくんとりんさんの考えは間違いだ」と言う人もいるかも知れない。でも、私はすべての発達障害の人を正しく理解したいわけじゃない。それに、間違っていてもいいじゃない。誰かの正解は、誰かにとっての不正解だ。
わんこくんの考えてることを知り、私なりの考えを持って、彼と日々を楽しく過ごす。大切なのはそれだけだもの。


■彼の言動をすぐにADHDに紐づけられた

友人に「昨日、わんこくんがこんな気の利かないことを言うから困った~!」と話したとする。私はADHDのせいだとは一言も言っていないのに、友人は「どこまでを『ADHDだから仕方ない』と許せるか、線引きが難しいね💦」とすぐにADHDに紐づけて話したがった。

ADHDのことなんて私の頭からはスッポーンと抜け落ちていて、ただの男女のモヤモヤを愚痴っているつもりだったので、「なんで、ADHDを大前提にして話すの??」と不思議な気持ちになった。発達障害を意識しすぎでは?
わんこくんが気の利かない発言をして、それに対して彼女の私がぬぬぬってなったってだけの話なのに。他の男性だって、時には気の利かないことを言ったりするでしょ?それと同じじゃん。

ADHDフィルターが邪魔をして、普通のことですら普通に話せていない感じがするなぁ。うちのわんこに失礼だぞ、ぷんすか!


そもそも、彼女たちにとっては、わんこくんのネタ自体があまり話したくないヘヴィーな話題なんだろう。きっと、どう反応していいか分からないだけで悪気はない。だから、私はそっと流し続けた。しばらくして、私は友人にわんこくんのことをほとんど話さなくなった。何を言ってもストレスにしかならないから。

今思うと、これは本当に良くなかったなぁ…。友人に恋人のことを話さなくなることで客観視する機会が減り、彼にモラハラ気質があることに気づくのが遅れてしまったのだ。

それからは、医療従事者やスポーツの現場で働く友人にだけ、彼のことを話すようになった。彼らは私情を挟まず、医療の観点からフラットに見解を示してくれるので気が楽だったし、ちゃんと知識がある人たちなので、すべてのアドバイスがとても参考になった。


―― 私のメンタル崩壊まで、あと135日 ――



りん