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テクニック別、ミュージックビデオ紹介!(2)スローモーション/ストップモーション

このマガジンでは、「スローモーション」「コマ撮り」と技法を紹介してきました。この記事では、スローモーションやコマ撮り(ストップモーション)を使ったすばらしい作品たちをご紹介します!

スローモーション

次も、わりと身近な手法である「スローモーション」。今やスマホでも簡単に撮れちゃう撮影手法です。ただ、同じスロー具合にもいろいろあり、実際目に入ってくる実像より、どれくらいよりも遅く撮影できるか…というのは、「fps」という単位で表されます。初期のスマホで撮れるのは、120fps、240fps…など。通常スピードを30fpsとすると、240fpsというのは8倍遅いということなのです。1秒間撮影したら、8秒分のスローモーションが撮れるというわけです。

スローモーション撮影の効果をシンプルに体感できる作品。アートディレクションもまぁおしゃれですなぁ…。壁画や天井画をゆっくり端から端まで鑑賞しているような感覚にもなります。途中いくつか合成を入れているとは言えど、1発の撮影だけで3分間もたせてしまうのは、アイデアの勝利だなと思います。

撮影風景は本当に一瞬

なんと撮影時間はたった5秒…!5秒間のできごとを1000fps(1秒間に1000枚の画像!)で撮影し、3分半に引き伸ばしてます。ここまでくると、もはやスローモーションが単なる演出ではなく、企画アイデアそのものですな…!


通常速度からスローモーションへ…スピード変更のある作品。曲が盛り上がる直前にフワッと速度変化する瞬間がとても幻想的。驚きなのは、歌う口の動きが速度変化しても完全にシンクロしているところ。おそらく撮影時に、スローモーション部分の曲を数倍速にし、それに合わせて歌っているのかな…。前編スローモーションとは違って、途中で速度を変えることで盛り上がりをつくっています。映画やドラマでもそうですが、重要なシーンスローモーションにするのはとても効果的ですね。


自分の仕事でスミマセン。きらめく油や火花をスローモーションで撮影しています。液体や煙、火花はスローモーションで撮るだけで、だいぶ映えるモチーフなんですな。現場では、映像を撮っている…というよりも写真を撮っている、といった感覚。対象物をしっかりライティングし、あとは目の前で起きる現象を撮るだけ。撮影は、井上圭佑カメラマンにお願いしました。

「スローモーション」再生リスト

ストップモーション(コマ撮り)

別名「ストップモーション」。ビデオカメラや動画モードなどで撮影するのではなく、静止画をたくさん撮り、並べることで動いているように見せる手法。パラパラマンガの写真版と言ってもいい。クレイアニメもコマ撮りの一種で、粘土を変形させるたびに、1コマずつ撮影。そうすると粘度が生きているように動きます。人形を少しずつ動かす人形劇みたいなジャンルも。コマ撮り撮影そして編集はとかく死ぬ作業量になること必須。作品の裏にある労に思いをはせ、じっくり鑑賞しましょう。合掌。

日常的なモチーフを使ってここまでコマ撮りを極めたものは、後にも先にもないんじゃないでしょうか…!セットやライティングで特殊な世界観をつくらず、生活の中にあるものだけでここまでドラマチックに魅せられるのは本当にすごい。泣けるレベルです。YouTubeで一コマずつ送って見ていくと動きの作り方がわかって、とても参考になります。コマ撮りで、モノを浮遊させるにはテグス(細い糸のようなもの)を使いますが、よ〜く目を凝らして見ると、ところどころにテグスが見えて、これがまたアナログの感動を呼び起こします。テグスや台を消さなかった理由も、こちらで紹介されています。


コマ撮りの構造を空間的に図解してもらっているような感覚になる作品。モチーフもかわいくて、シンプルなセットなのに飽きさせない。こういう平面的なグラフィックを正面から見ることは慣れているのですが、斜めから見ることって、そんなにないですよね。作品のところどころで出てくる、切り出されたプラスチック板を斜めから撮影するシーンが新鮮。グラフィックデザインと映像作品の中間のような不思議な作品ですね。


撮影の仕組みとしては比較的想像つくよねー…って、こんなに大きなドラムセットやらアンプやら運んでコマ撮りって、めっちゃ大変じゃないですか…。街中使うだけで、ユニークになる、こちらもミシェル・ゴンドリー作品。やっぱり合成してドラムセットを増やしているんだろうか…。まさか同じドラムセットをめっちゃ買い揃えている…わけないか…。


「ストップモーション」再生リスト

時間伸縮

「時間伸縮(再生速度を早めたり、逆に再生したり…)」といったカテゴリをつくってみました。再生速度を3倍(300%)とか10倍(1000%)にするとチャカチャカとした早回しになり、遅くしていく(50%)とコマ送り状態になる。スローモーション撮影ではなく、通常撮影された映像を遅く加工するとコマ落ちしてカクカクとした動きになる。伸縮率がマイナスになると(-100%)逆再生。中でも、逆再生は単純におもしろい!それではいくつか紹介してみましょう。

シンプルな逆再生企画。こうやって見てみると、ヒップホップのプレイヤーの動きって、逆再生にすごく合いますよね。なんでだろう。ふつうの人間の動作って、逆再生するとなぜか滑稽に見えてしまうことが多いですが、この作品を見るとかっこいいのです。逆再生が映えるシーンばかりをこれみよがしにつなげたりしていないのも硬派でいい!


繰り返したり、逆再生したり、倍速したり…すべて、レンタルフィルムから入手してきた映像ネタでここまでやりきるのもなかなか…!飽きそうで飽きさせない気持ちよさがあります。それにしても、不自然なまでに統一されたクリーンなライティングが、レンタルフィルムらしさなんだな…と気づかされますなぁ…。


「時間伸縮」再生リスト

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