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人が自然のいちとして産み出すピッタリは、鍵と鍵穴のよう

ひでから教えてもらった私の口癖に、「ピッタリ」がある。

セレモニーをひらいたら、口癖どおりに何もかもがピッタリだった。そのことを書くんだけど、みんなのことじゃなくて、わたしのことを書く。

川の流れる音が風の音みたいに聞こえてくる、木々に囲まれた広場。そこに私たちと大地が共に過ごす場所としてのウィールを作って、真ん中に焚き火。焚き火を囲んで7人で、朝も夜も昼も、ひたすら自分の物語を語った。

物語を語る人々の声に、自然はとても丁寧に、瞬時に、応答してくれる。

何もかもがずっとピッタリだった。雨が降るタイミング、雷が空の上でいったりきたりするタイミング、木々がざわめくタイミング、人が動くタイミング。人の口から音が、言葉が、出るタイミング。全部、ピッタリだった。私たちは自然としていられれば、全てがピッタリ。そのぴったりの中では、かたく塞いだはずの扉もつるっと開いてしまう。鍵がピッタリ鍵穴にはまるみたいに。

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最後の最後のビーズの輪の時にひでが、「参加者も主催者もなく、がっぷりよつがいい。がっぷりよつでやりたい。」って言った。がっぷりよつ、がっぷりよつなんです、とひでは繰り返す。その時は、ふむふむいいなあ、そうだなあとただそう思っていた。

なのに、セレモニーが終わってみんなと別れた後から後から。ひえぇっていう悲鳴が自分の内側から聴こえてくる。がっぷりよつ、怖い。私はずっと「がっぷりよつ」に焦がれてきて、味わいたいと切望してる。その扉がひらいた。

「あなたといるかもしれないし、気が乗らなければいないかもしれません」は、ずっと私の得意技。そっちの方が自由な感じがしたし、真実味があった。たくさんの人がそんな私をそのまま受けとめてくれて、優しくしてくれて、自由にしてくれて、とても良くしてくれた。わたしはだいぶ甘やかしてもらった。それを思うとありがとうの気持ちが起きてくると同時に、グッとくるごめんなさいも湧いてくる。わたしを理解しようとしてくれてありがとう。やさしくしてくれてありがとう。なのにわたしは、本当はもっともっともっと一緒にいたい、濃く深く繋がりを感じたいっていう私の切望を感じようとしないままそこにいたこと、ごめんなさい。愛してるよを分かち合いたかった人たちに、寂しい思いをたくさんさせてきた。今これを感じること、ヒリヒリする。

人が自然のいちとして産み出すピッタリは、鍵と鍵穴のようだと思う。みんなと過ごしたピッタリは、わたしの深い深い切望の蓋をひらいてしまった。なにが鍵でどれが鍵穴だったんだろう?わからない。多分、あの時間、あの人たちの、あの場所の、全部がそうだった。

たまに何かの蓋がこうやって自然に開くと、わたしのいのちはおおよろこびで歓迎する。そして思考は猛烈抵抗する。今回も全力抵抗の結果、全身にブツブツができて頭が重く首がごりんごりんに痛くなってしまった。頭蓋骨がピッタリ閉まる大惨事。体調が良くないんだよね云々ってひでに話したら、考えるに考えるで対抗するのをやめましょう、と言われた。ほう!思考に思考をぶつけてることにも気がついてなかった。なるほど。そりゃこうなりますね。それが腑に落ちてから、体はだいぶ良くなってきた。

ひでと一緒に場をひらくたびに、人といっしょにいられること、人と自然とがひとつとして一緒にいることのピッタリさに蓋が緩んで開いて、ずっと望んでいたことに触れて触れて、結果わたしは大きく泣いたり笑ったりする。輪に、いっしょにやっていこうってところから一歩も動かないでいてくれるひでがいることが嬉しい。そこに一緒にいるみんなの声が歌のように鳴き声のように聞こえることが嬉しいし、その時わたしの声も同じように歌や鳴き声になっていることが嬉しい。感じたり感じられなかったり、考えちゃったり泣いちゃったり怒っちゃったり、その全部がただそのままに現れてみんながそれとただ共にいる時間が愛おしい。いのちが震える。涙が溢れる。顔が笑う。

あのセレモニーの空間を思い出す。自然の全部と人々で共にいた。どんなに雷が鳴っても、雨が降っても、泣いてても怒ってても、一番深いところがずっと安心で安全で、みんなでいっしょにいた。

自然と私たちはがっぷりよつだったね。じゃあ、人と人は?みんなの顔を思い出す。なんかもっといけそう。いけるね、いきたいね。

お互いのそのままの存在を感じあえて、嬉しかった。幸せだった。いっしょに地球に生きてるって感じがした。そして、また会って、もしかしたら違う輪でもまた一緒になって、みんなともっと深くまで一緒にいきたい。何かのチームメイトみたい。私たちの旅は続く。

セレモニーとは、ひでの大切な人、私の大切な人、2人で出会った大切な人、みんなでまあるい輪になって自然を生きるに集中する時間。その積み重ねが、大きい大きい輪をつくるね。地球、喜ぶと思う。そう思えることばっかりしよう。大切な人はそんなに多くなくていい、と思うと同時に、大切な人が増えることは、人生にきらめきが増えるみたい。

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ひで、みんな、一緒にいてくれてありがとう。
本当にありがとう。

心を込めて。

平田里菜


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