*fiction*パイナップル連合会
20180713に書き留めた、即興なお話。
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ペットボトルとは、合成樹脂の一種であるポリエチレンテレフタラートを材料として作られている容器。
ペットボトルの約9割は飲料用容器に利用される。
ほかに、調味料・化粧品にも用いられている。
それまでガラス瓶や缶などに入れられていた物の一部がペットボトルに置き換えられた。
ドドドドドド
???「…くーん。」
???「チャロ!!」
時計を見るとAM8:17。
早く学校へ行かないと今日も遅刻だ。
いや、もう遅刻は確定だ。
ペットボトルについて勉強する夢を見ていたらいきなりペットのチャロの声で飛び起きるとは、なんという目覚めだろう。
私は素早く制服に着替えて家を出た。
今日はオトモモチ学園恒例のイベント、エクストリームかくれんぼ大会当日だ。
エクストリームかくれんぼ大会は、毎年鬼を務める中学三年生が目をふさいでいる間に他の学年の生徒が校内の好きな場所に隠れ、後に鬼がそれを見つけだす、クラス対抗の一大イベントだ。
私は鬼である三年生なので隠れる必要はない。
…良かった。
今日遅刻したらすぐに捕まってしまう。
8時半から12時まで、13時から16時までの二部構成となっている。
朝から夕までの1日がかりのイベントだけあってクラスの熱の入りようも半端ではない。
学校に着くと既に8時半をまわっていたため鬼役の3年生以外の姿はなく、校内は静まり返っていた。
私は今日という日が楽しみで仕方なかった。
というのも1,2年生の頃は鬼である先輩に見つからないよう隠れるのに必死でとても嫌なイベントであったが今年は見つける立場だからだ。
なんという清々しさだろう。
教室に荷物を置きに行くと、クラスの友人であるみずほに会った。
「おはようみずほ!」
「あっ、おはようりそな。今日も遅刻?もう始まってるよ〜。」
私はみずほと後輩たちを探すことにした。
「ねぇりそな、りそなは去年どこに隠れていたの?」
薄暗い廊下を歩きながらみずほが聞いてきた。
「うーん…私はトイレの個室に隠れてたよ。でもね、去年私と同じ考えだった人が結構いたみたいでさ、今年からトイレに隠れるのは禁止になっちゃったみたい。」
「そ、そうなんだ…トイレに隠れるってそれもう出て来なきゃ見つからないの確定だもんね。でも凄い、私にその発想…というか勇気はなかったよ。」
みずほは私と違っておしとやかで華奢な女の子だ。
トイレに隠れるという発想が彼女の中になかったことに安心した。
「みずほは?」
「えっ、ぁ、実は私去年は体調崩しちゃって欠席したんだ。だから隠れたのは1年生の時だけで、その時はもみじちゃんと音楽室に隠れてた。すぐ見つかっちゃったんだけどね。」
「そっか。じゃあ今年は鬼だけど…鬼として頑張ろうね!」
みずほは笑顔でコクリと頷いた。
私は今回どうしても見つけたい後輩が3人いた。
まず1人目は今年のベネッセ模試で校内順位で4位だったというたかしくんだ。
たかしくんの居場所はどう考えても一択。
…そう、数学ホールだ。
数学ホールの中央には半径πメートルの円があり、周りにはπ/5メートル感覚でガウスの実物大の像が置かれている。
数学に関連のある書籍や雑誌、DVDにいたるまで幅広く取り扱われており、数学ファンにはたまらないホールとなっている。
私はこのホールに狙いを定めた。
「3.1415926535897932384626…」
私が円周率を唱え始めると、ホールの隅に置かれているグランドピアノの影からたかしくんが出てきたのだ。
「あっ、1人目みーつけた!」
みずほが嬉しそうに叫んだ。
円周率の誘惑に負けるとは流石たかしくん。
観念したのか私たちを見て軽く会釈をしてはにかんだ笑顔を見せたかと思うと、たかしくんはすかさずグランドピアノに座り、「円周率のうた」を弾き始めた。
たかしくんがピアノを弾き終わったところで確保し、捕まった生徒の収容所である2階の職員室の隣にある会議室Bに連れて行った。
連行している最中もたかしくんはボソボソと数学の定理について呟いていた。