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経営者と従業員の交わることのないベクトル

10年以上前から、同じ美容師さんに髪のカットを担当してもらっている。
たまにフラッと違う美容院に行っても、やっぱり同じ美容師さんが良くなる。
カットの技術が抜群にうまいのと、長年の付き合いで私の髪を知り尽くしているのと、何より性格や話題の相性が良い(と思っている)。


お互い独立をしている同士、カット中に経営の話で盛り上がることが多いのだけれど、付き合いが長くなってくるとたまに相談事なんかもしたりされたりの関係になってくる。

以前珍しく、担当の美容師さんがチラリと弱音を吐いていた。
なんでも、新しく入ってきた従業員に少し戸惑っているとのこと。
掘り下げて聞いてみると、仕事に対する熱量が違うというか。思いが違うというか。そんな感じだった。

どんな人なんだろうな?俄然興味が出てくる。
と思っていると、先日髪を切りに行ったときに、ちょうどその渦中の従業員さんとお話をする機会があった。


色々雑談をしている中で、こういう発言があった。

「えーっ。年末年始休みじゃないとか!ありえないですね!私そんな仕事嫌ですーむりむりー」(多分、驚きを表現したかったのだと思う。)

「やっぱりねー、雇われの身って甘えちゃうじゃないですかー。独立してたら自分がちゃんとしなきゃいけないですもんね」(多分、ほめてくれているのだと思う。)

「私なんていつも〇〇さん(担当の美容師さん)に怒られてますよー。仕事が好きって、ハッキリ言えるって素敵ですねー」(多分、「仕事が趣味みたいなものなんです」といった発言に対して自分を貶めてまでこちらを上げてくれているのだと思う。)

ほうほうなるほど。
何となくわかったぞ。

根はいい子なのだろうな。
馬鹿正直なくらいまっすぐかも。
でも何となく、仕事に対する姿勢は私や担当美容師さんと違うなと思った。


一番本心に近いんだろうなと思った発言は
「やっぱりねー、雇われの身って甘えちゃうじゃないですかー。独立してたら自分がちゃんとしなきゃいけないですもんね」
この発言。

従業員がこういう気持ちを持ってしまったら、この溝を埋めることは難しいんだよね。


経営者にとって、仕事があることはありがたい。
仕事の依頼数がそのまま利益に直結するから。
だけど、従業員は言われたことを言われた通りにやっていれば、基本的には毎月お給料が入ってくる。
だから、できれば仕事は少ない方が楽だし、残業もやりたくない。


分かる。分かりすぎるよ…。
私も会社員だったころ、この思考だったから。

暇だなーって感じる月は、上層部の人はやたらせかせかしていたけれど、私たち末端の従業員は呑気なものだった。

だって、会社が倒産さえしなければ、お給料はほぼ確実に毎月支給されるから。
忙しい月や忙しい店舗に配属された時は、損だなと思っていた。
残業もできればしたくなかったし、休日出勤を言い渡されると憂鬱で仕方なかった。

今や、喜々として毎日働いているのに。
立場が違うとこうも感覚が違う。


ま、当たり前だよね。
独立をして自ら経営者になろうって人は、仕事はやりがいの一つだから。
人生を賭けてやっている人も多い。
仕事とプライベートの境なんてないよ、って人もたくさんいる。

今の私もその状態。
だけど、ほとんどの雇われている人にとっては、仕事は食うための手段でしかない。

経営をしている人と、雇われている人。
求めているものや見ている未来が圧倒的に違い過ぎるから、なかなかベクトルは交わらない。
「なんでわかってくれないの!」とお互いフラストレーションを溜め合う関係なんだろうなあと思う。

そのベクトルを合わせるように教育をしたり、社内の雰囲気を作ったり、そういうことも経営者は見ていかなければいけない。

今後のカット中の美容師さんとの話は、もっぱらそれになりそうだな。
なんて思いながら、ちょっとだけ人間観察が楽しかったスギタなのでした。


***余談***
 
独立前に働いていた会社では、社長にかなりマイナス感情を抱き、自分勝手な不満を並べてしまっていた。
今の立場になって、初めて社長の苦労や行動が少しずつ理解できるようになってきた。
どこかでまた出会うことがあったら、土下座の勢いで謝って、感謝の言葉を述べようと思っている。

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